3時間無料対面カウンセリングを行っています。無料カウンセリング予約フォームでお申し込みください。ボタン

EMDR療法-子供を失った母親とのセッション

目次

事故で子供を失った母親のPTSDの症状が、CBT(認知行動療法)では軽減されなかったケースにEMDR治療によって行われたセッションを公開

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)眼球運動脱感作再処理法は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やトラウマの心理的問題を治療するための認知行動療法の一種ですが、認知行動療法(CBT)では軽減されなかったPTSDの症状に対して効果を示す理由を紹介します。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の事例

「32歳の若い女性で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が診断されています。彼女は明るく、情熱的な性格で、子育てと自分のキャリアを築くことに情熱を燃やしていました。しかし、過去の出来事が日常生活に影響を与えることになりました。

「彼女は、数年前に交差点で子供と一緒に交通事故に巻き込まれ、重傷を負いました。子供は3時間後に息を引き取りました。彼女はこの事故によって、深刻な身体的な外傷を受けたばかりでなく、子供が亡くなった原因は外出した自分の責任だと思い込むようになり、精神的なダメージが心に深く刻まれることになりました。彼女はその瞬間の記憶、急激な痛み、恐怖だけではなく、子どもを守ってあげられなかった後悔に苛められています。」

「彼女の心的外傷は、子どもを守れなかった後悔、自責感などと恐怖や不安に満ちた悪夢、フラッシュバック、および過度の警戒心が強くなっています。彼女は車に対して強い恐怖を感じ、交通事故に関するトリガーとなるものを回避するようになり、外出するのにも苦痛を感じられるようになりました。さらに、睡眠障害に苦しんでおり、過去の出来事が彼女の日常生活における機能に甚大な影響を及ぼしています。」

「友人や家族は、彼女の状況を重んじて、専門家の評価を受けることをすすめた結果、PTSDの診断を受けた後、治療とサポートが開始されました。治療プランは、認知行動療法(CBT)セッション、薬物療法、および睡眠の改善をするものです。彼女は過去の出来事と向き合うためのセッションを受け、後悔や自責、恐怖と不安に対処するスキルを学び、薬物療法によって、睡眠障害はある程度軽減されていますが、フラッシュバックや後悔などの思考は改善されていません。」

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

CBTと比較したEMDRの効果

情報処理のプロセス

EMDRは、トラウマ体験を処理するための脳の情報処理システムを再活性化します。CBTが焦点を当てるのは主に認知の変容ですが、EMDRは脳の自然な処理メカニズムを利用して、トラウマの記憶を整理し、感情的な影響を軽減します。このプロセスにより、未処理のトラウマ記憶が統合され、症状の軽減が見られることがあります。

目の動きによる再処理

EMDRの目の動き(または光や振動、音の双方向刺激)は、トラウマ記憶に関連する感情や思考を処理するプロセスは、記憶が新しい方法で整理されるのを助け、トラウマ体験に対する過剰な感情的反応を減少させることができます。これにより、記憶の再評価や意味付けが進み、症状の軽減が見られるようになります。

感情の解放

EMDRセッション中に、クライアントはトラウマ体験を再体験し、感情を解放することで、クライアントは抑圧していた感情に対処し、トラウマ体験に対する新たな視点を得ることができます。これが症状の軽減につながります。

新しい認識の形成

EMDRでは、トラウマ体験に関連するネガティブな認識を変えることを目指します。セッション中に、クライアントが「私は無力だった」といったネガティブな認識から、「私はできるだけ最善を尽くした」というポジティブな認識へと変わることが期待できます。これにより、自己評価が改善され、PTSDの症状が軽減されます。

トラウマ記憶の再統合

EMDRは、トラウマ記憶を再統合するプロセスをサポートします。過去のトラウマ体験が、現在の生活に影響を与え続けることがありますが、EMDRにより記憶が再統合されることで、過去の体験が現在の生活に過剰な影響を及ぼさなくなり症状が軽減されます。

身体的感覚の処理

EMDRでは、トラウマ体験に伴う身体的な感覚も処理することができます。例えば、事故の瞬間に感じた体の緊張や痛みなども身体的な感覚を再処理することで、PTSDの症状が改善されることがあります。

安全なセラピー環境

EMDRセッションでは、安全な環境が提供され、クライアントが安心してトラウマ体験に向き合うことが、トラウマ処理を促進し、症状の軽減を助けることになります。

これらの要因が組み合わさることで、EMDRはPTSDの症状に対して効果を示しますが、認知行動療法とEMDRを組み合わせることで、さらに効果的な治療が可能になります。

EMDR(眼球運動脱感作再処理法)のステップ

EMDR(眼球運動脱感作再処理法)は、トラウマの処理に特化した治療法で、特に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を治療する際に効果的です。次に、提示された32歳の女性のケースを基に、セラピストとクライアントのEMDRセッションの具体的な進行例を紹介します。このケースでは、トラウマは交通事故であり、子供を失った自責感や後悔、フラッシュバックが主な症状です。

EMDRのステップを簡素化したセッションで再現

STEP
クライアントの評価

セラピスト:「今日は、あなたのトラウマについて少し詳しく話を伺いたいと思いますが、無理に話す必要はありません。できる範囲で大丈夫です。交通事故のことが大きな影響を与えていると確認させていただきましたが、今どんな感情が浮かんでいますか?」
クライアント: 「思い出すたびに、私のせいで子供が亡くなったと感じてしまいます。あの時、家にいれば良かった…。その時の記憶が鮮明に蘇ってきて、怖くて仕方ありません。」

STEP
トラウマ体験の特定

セラピスト:「あの日の事故について、どの記憶が一番鮮明に思い出されますか?特に強く影響を与えている瞬間やイメージがありますか?」
クライアント: 「子供を抱いて救急車を待っている時のことです。息をしていない子供を見て、私のせいだと思いました。」

STEP
治療目標の設定

セラピスト:「その記憶に関して、どんな信念を持っていますか?自分に対してどんなメッセージが浮かんできますか?」
クライアント:「私が悪い、私があの事故を引き起こしたという強い思いです。私は母親として失格だと感じます。」
セラピスト: 「ありがとうございます。その感覚を軽減し、今の状況をもっと現実的に捉えられるようにすることが治療の目標ですね。」

STEP
セットアップ

セラピスト: 「それでは、その記憶を再処理するための準備をしましょう。まず、事故の瞬間の映像を思い浮かべてください。それを見ながら、同時に左右に動く私の指を目で追ってください。気持ちが強くなる場合は、すぐに教えてくださいね。」

STEP
トラウマ体験の思い出し

セラピスト:「今、その場面を思い浮かべながら私の指を目で追ってください。」 (クライアントはセラピストの指を追う)
セラピスト:「どんな感情が湧いてきましたか?」
クライアント: 「子供の姿を見て、自分が何もできなかったことに対する恐怖と後悔が…。それがまた蘇ってきます。」

STEP
再処理

セラピスト:「その感情をしっかり感じていて大丈夫です。今度はもう一度、指を目で追いながらその感情に集中してください。」 (再び左右の眼球運動を行いながら、トラウマの再処理を行う)
セラピスト:「少し時間が経ちました。今、どんな気持ちですか?」
クライアント: 「前よりも、少し和らいできた気がします。でもまだ、あの場面が頭から離れません。」

STEP
セッションの終了

セラピスト:「今日はここまでにしましょう。これから少しずつ、この感覚を和らげていく作業を続けます。どんな感情や記憶が浮かんできても、それは正常な反応なので安心してくださいね。」
クライアント: 「分かりました。少しずつやっていきます。」

STEP
次回のセッションの準備

セラピスト: 「次回も同じように、この事故の記憶を続けていきますが、もしこのセッション後に強い感情が浮かんできた場合は、無理せずにお休みください。日常生活でできるリラクゼーションの方法もお伝えしますので、それを使ってくださいね。」

STEP
次回のセッション

次回のセッションでは、さらなる再処理を進め、クライアントがトラウマの記憶に対して新しい認識を持てるようにサポートしていきます。

EMDRのステップを詳しくセッションで再現

STEP
クライアントの評価

32歳の女性に対するEMDR治療において、クライアントの評価は非常に重要なステップです。この段階で、セラピストはクライアントの現在の心理状態、トラウマの影響範囲、過去の経験、治療に対する準備度などを総合的に把握します。これにより、適切な治療計画が立てられ、クライアントが安全で効果的な治療を受けられるようになります。

この評価セッションでは、セラピストはクライアントの症状、トリガー、現在の生活への影響、感情的な課題をしっかり把握しています。これに基づき、EMDR治療の進め方や目標を設定し、次のステップであるトラウマ体験の再処理に進む準備を整えます。

評価の段階では、セラピストはクライアントに安心感を与え、無理なく過去のトラウマに向き合わせ、彼女のペースに合わせた治療を進めることが重要です。

セラピストとクライアントの対話(評価ステップ)

セラピスト: 「今日は、あなたのトラウマについてもう少し詳しくお聞きし、治療の進め方を一緒に考えていきましょう。まず、日常生活でどんな症状が出ているか教えていただけますか?」

クライアント: 「そうですね…事故の後、子供を守れなかったという後悔が毎日頭から離れません。何をしていても、あの時の光景が突然頭に浮かんできて…。そのせいで、ほとんど外出できなくなりました。車を見ると震えてしまいます。」

セラピスト: 「フラッシュバックや、事故の記憶が突然蘇ってくることがあるんですね。頻度としてはどれくらいの頻度でそのようなフラッシュバックが起こりますか?」

クライアント: 「毎日のようにあります。特に夜、眠ろうとすると、事故の瞬間や子供が亡くなった時の記憶が急に浮かんできて、眠れなくなります。悪夢もよく見ます。」

セラピスト: 「悪夢も見ているんですね。睡眠障害が続いていることは日常生活にも大きな影響を与えていますよね。これまでの睡眠パターンに変化はありましたか?」

クライアント: 「事故の前は眠れないことなんてなかったんですが、今はほとんど毎晩眠れません。少し寝ても、すぐにフラッシュバックや悪夢で目が覚めてしまいます。」

セラピスト: 「その後、日中に感じることや避けているものについても教えてください。例えば、事故後に避けるようになった場所や状況はありますか?」

クライアント: 「事故が起きた交差点の近くは絶対に通りたくありません。車にも乗れないし、道路を渡るのも怖くて…。買い物に行くのも家族に頼むことが多いです。人が多い場所や、車がたくさん走っている場所も避けています。」

セラピスト: 「なるほど。車や交差点に対する強い恐怖心が日常生活に影響を与えているんですね。最近、他の人との関係性や家族とのやり取りに変化はありますか?」

クライアント: 「家族はサポートしてくれているんですが、私自身があまり話をする気分になれなくて…。友人とも以前より連絡を取らなくなりました。事故以来、誰にも会いたくない気分が続いています。」

セラピスト: 「社会的なつながりが減ってしまったことは、孤立感や無力感につながっているかもしれませんね。事故が起きた後、どんな感情が一番強く感じられていますか?」

クライアント: 「一番強いのはやっぱり、私のせいで子供が亡くなったという後悔です。事故が起きたのは、私が外に出たからだと思ってしまいます。私が家にいれば…あの時の決断が間違っていたんじゃないかって。」

セラピスト: 「その自責の念がとても強く残っているんですね。自分自身を責め続けていることで、生活にどんな影響が出ていますか?」

クライアント: 「すべてが私の責任だと思ってしまうので、何か新しいことをするのも怖いです。もしまた同じようなことが起きたらどうしようって…日常生活でも常に何か悪いことが起こるんじゃないかという恐怖と不安があります。」

セラピスト: 「その恐怖や不安は、あなたを常に緊張状態に置いているかもしれませんね。自分自身を責める思いと、何か悪いことが起こるのではないかという恐れが、あなたの気持ちや体調にどんな影響を与えていますか?」

クライアント: 「体もずっと緊張していて、リラックスすることができません。頭痛や肩こりがひどくて、体も休まっていない気がします。」

セラピスト: 「身体的な症状も出ているんですね。今までに治療やサポートを受けたことはありますか?もしあれば、その効果について教えてください。」

クライアント: 「診断されてから、カウンセリングと睡眠薬を処方してもらっています。睡眠は少し改善しましたが、フラッシュバックや恐怖感、自責の念はあまり変わっていません。」

セラピスト: 「薬物療法で睡眠が少し改善された一方で、まだ根本的なトラウマ体験に対する感情は強く残っているということですね。これから、EMDRを使って、その体験に向き合いながら感情の処理を進めていくことで、少しずつこの重い感情を軽減できるように一緒に取り組んでいきましょう。」

STEP
トラウマ体験の特定

トラウマ体験の特定は、EMDR治療の重要なステップであり、クライアントが治療の対象とする過去の出来事や、強く影響を与えている記憶を明確にしていく段階です。このステップでは、クライアントがトラウマとなっている体験を特定し、その体験に関連する感情、身体反応、思考を一緒に掘り下げます。

この対話では、クライアントのトラウマ体験が具体的に特定されました。特に、事故の瞬間、子供を守れなかった後悔、自責の念、そしてその出来事に伴う身体的な反応(緊張、息苦しさなど)が重要な要素として浮かび上がっています。

セラピストは、これらの記憶と関連する感情や身体反応を記録し、EMDRの再処理段階で扱うトラウマのターゲットとして設定します。このステップを経て、次のステージである「セットアップ(準備)」に進むことができます。

トラウマ体験の特定:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「これから、あなたが過去に経験した出来事の中で、最も強く影響を受けている記憶についてお話を聞いていきます。今、頭に浮かんでいる一番辛い出来事は何ですか?」

クライアント: 「やはり、子供と一緒に事故に遭ったあの瞬間です。あの日のことが今でも鮮明に浮かんできます。どうしても、あの時のことが頭から離れません。」

セラピスト: 「その瞬間のことをもう少し詳しく教えていただけますか?どんな場面が最も強く残っていますか?」

クライアント: 「交差点で車が急に突っ込んできたんです。その時、私が子供をしっかり守れなかったことが頭にこびりついています。あの瞬間、私がもっと注意していれば…そう思うと、自分を責め続けてしまいます。」

セラピスト: 「あの瞬間、守りきれなかったという感覚が強く残っているんですね。その時に感じた感情はどんなものでしたか?」

クライアント: 「恐怖、絶望、そしてその後にすぐに襲ってきたのが後悔です。私が外に出なければ…そう思わずにはいられません。」

セラピスト: 「恐怖と後悔が、その場面に強く結びついているんですね。事故が起きた瞬間に、体にどんな反応がありましたか?」

クライアント: 「体が硬直して、動けなくなったのを覚えています。心臓が激しくなって、息が詰まりそうでした。今でもその感覚が蘇ってきます。」

セラピスト: 「今でもその身体的な反応が蘇ってくるんですね。例えば、どんな状況でその感覚が強くなりますか?」

クライアント: 「車を見たり、道路を歩こうとすると、あの瞬間のことが急に頭に浮かんでしまいます。特に、子供がいた場所に近づくと体が震えて動けなくなります。」

セラピスト: 「事故の場面やそれに関連する状況が、あなたに強い反応を引き起こしているんですね。今、その記憶があなたにとってどれくらいの負担や痛みを感じさせますか?」

クライアント: 「10段階で言うと、9か10くらいです。思い出すだけで心が押しつぶされそうになります。」

セラピスト: 「とても辛い記憶ですね。その瞬間、事故が起きた後、どんな考えが一番強く心に残っていますか?」

クライアント: 「私のせいで子供が亡くなったという思いが強いです。私があの日外出を決めなければ、子供は今でも生きていたかもしれない…。自分を許せないんです。」

セラピスト: 「自分を責める思いがその場面に強く結びついているんですね。こういった思いがどれくらいの頻度で浮かんできますか?」

クライアント: 「ほぼ毎日です。何かをしていても突然あの瞬間が頭に蘇ってきて、止められません。どうしても、あの時の決断を悔やんでしまいます。」

セラピスト: 「その記憶が日常生活にも強く影響を与えているんですね。この場面について、今でも繰り返し思い出すことで、どんな感情や身体反応が起こっていますか?」

クライアント: 「恐怖と後悔です。体が緊張して、息苦しさや胸の痛みも感じます。思い出すたびに涙が出て、止まらなくなります。」

セラピスト: 「その感情や身体反応が、現在のあなたの生活に大きな影響を与えていることがわかります。この記憶に関連する感情や身体反応を、これから少しずつ整理し、処理していくためのプロセスを進めていきましょう。この記憶は、EMDRで取り組む主要なターゲットとなります。」

STEP
治療目標の設定

治療目標の設定は、EMDR治療においてクライアントが具体的にどのような変化を望んでいるか、そしてどのような結果を目指すかを明確にする重要なステップです。この段階では、トラウマ体験に対する現在の反応と、望ましい感情や考え方を基に治療のゴールを設定します。

治療目標の設定後の進行

この対話では、クライアントの目標が明確に設定されました。具体的には、次のような目標が立てられています。

  • 自責の念の軽減: 自分を責める気持ちを和らげる。
  • 車や外出に対する恐怖の克服: 車や道路を見るときの強い恐怖感を減らし、日常生活で外出ができるようにする。
  • フラッシュバックや悪夢の軽減: 特に夜間の不安を和らげ、質の良い睡眠を取り戻す。
  • 事故に対する感情的な反応の軽減: 事故を思い出しても過度に動揺しないようにし、感情的な平穏を取り戻す。
  • 前向きな生活の再構築: トラウマを乗り越え、より前向きに日常生活を送れるようになる。

この治療目標は、セッションを通じてクライアントとセラピストが進捗を確認しながら、必要に応じて調整されます。

治療目標の設定:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「先ほどお話ししてくださった事故の記憶について、少しずつ取り組んでいくために、これから治療目標を一緒に考えていきましょう。今、あなたが一番改善したいと思っている感情や反応は何ですか?」

クライアント: 「やはり、あの事故に対する後悔や自責の念を和らげたいです。どうしても『私のせいだ』という考えが消えないので、それを少しでも軽減できたらと思います。」

セラピスト: 「自責の念を和らげることが一つの大きな目標ですね。それに加えて、日常生活で影響を受けていることについても考えてみましょう。例えば、今の生活で何が特に困難だと感じていますか?」

クライアント: 「外に出ることが怖くて…。特に車を見ると、どうしても事故を思い出してしまいます。外出するたびに不安が襲ってくるので、もっと普通に外出できるようになりたいです。」

セラピスト: 「車に対する恐怖や外出への不安が大きな問題になっているんですね。つまり、今は外出がとても苦痛になってしまっているんですね。これも改善したい部分の一つですか?」

クライアント: 「そうですね。車や道路を見るとあの瞬間が頭に浮かんでしまうので、それをどうにかして克服したいです。」

セラピスト: 「それでは、車や外出に対する恐怖を軽減することも目標に加えましょう。次に、フラッシュバックや悪夢についてはどうですか?これも日常生活に大きな影響を与えていますか?」

クライアント: 「はい、特に夜になると事故の夢を見てしまい、寝るのが怖いです。夜になると不安が増して、なかなか眠れなくなります。」

セラピスト: 「睡眠障害や悪夢も改善したい部分ですね。これまでに話していただいた、自責の念、外出への恐怖、そしてフラッシュバックや悪夢に対処することを目標にしていきますが、これに加えて他に改善したい点はありますか?」

クライアント: 「そうですね、もう少し心が軽くなって、事故のことを思い出しても動揺しないようになりたいです。今は思い出すたびに胸が苦しくなるので、その感覚を和らげたいです。」

セラピスト: 「事故を思い出しても胸の苦しさや動揺を感じなくなることが、最終的な目標として考えられますね。つまり、事故に関する記憶に対してもっと平穏な気持ちで向き合えるようになりたいということですね?」

クライアント: 「そうです。過去の出来事を乗り越えて、もう少し前向きに生きられるようになりたいです。」

セラピスト: 「それは素晴らしい目標です。では、まとめると、まず自責の念を軽減し、車や外出への恐怖を克服する。そして、フラッシュバックや悪夢を和らげ、事故の記憶に対しても少しずつ動揺しないようになることを目指します。このゴールに向かってEMDRを進めていきますが、進行状況に応じて目標を調整していくことも可能です。どう感じますか?」

クライアント: 「それなら、少しずつでも前に進める気がします。少しずつ改善できるなら頑張ってみたいです。」

セラピスト: 「素晴らしいです。この目標を達成するために、これからEMDRのプロセスを進めていきましょう。一緒にこの道を進んでいきますので、無理せずゆっくり進んでいきましょう。」

STEP
セットアップ

セットアップの段階では、EMDR治療を始める準備を整えるために、クライアントがリソースを使って自分自身を落ち着ける方法や、安全な場所のイメージを導入することが行われます。ここで、セラピストはトラウマに対処するための準備をクライアントと共に進めます。

この段階で、クライアントは安全な場所のイメージや深呼吸を通じて、トラウマ処理に向けた精神的な準備を整えています。セットアップは、EMDRセッション中にクライアントが感情的に不安定になったときに自分自身を落ち着けるためのリソースを提供する重要なプロセスです。クライアントが安心感を得るための「安全な場所」と、リラックスするための呼吸法が取り入れられ、治療に向けた心構えが整いました。

次のセッションでは、このセットアップを活用しながら、実際にトラウマ記憶に取り組む準備が進みます。

セットアップ:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「前回のセッションで、治療目標を設定しましたね。今回は実際にEMDRを始めるための準備、つまりセットアップを行います。このプロセスでは、まずあなたが安心して治療を受けられるように、落ち着ける方法を一緒に見つけていきましょう。」

クライアント: 「はい、少し緊張していますが、やってみます。」

セラピスト: 「安心して進めていきましょう。まず、落ち着くためのイメージを一緒に考えてみたいと思います。どんな場所にいるときに、一番リラックスして安全だと感じますか?」

クライアント: 「うーん…私の実家の庭ですかね。子供の頃に遊んでいた場所で、木がたくさんあって、静かで落ち着きます。」

セラピスト: 「その庭のイメージはとてもいいですね。では、その庭にいるときの感覚をもう少し具体的に思い描いてみましょう。例えば、どんな風景が広がっていて、どんな音が聞こえてきますか?」

クライアント: 「大きな木があって、風が葉っぱを揺らす音がします。小鳥の鳴き声も聞こえますし、太陽がぽかぽかと暖かい感じです。」

セラピスト: 「素晴らしいです。太陽の暖かさや鳥のさえずりを感じながら、その庭にいる自分を想像してみてください。そして、その場所にいるとき、心や体はどんなふうに感じますか?」

クライアント: 「安心感があります。落ち着いた気持ちになって、少し肩の力が抜けるような感じがします。」

セラピスト: 「とてもいいですね。この庭が、あなたが落ち着ける『安全な場所』です。このイメージを使って、セッション中に不安や強い感情が出てきたときに、自分を落ち着かせる手助けにしましょう。セッションの間、もし辛くなったときは、この安全な場所に戻ることができます。どうですか?これならできそうですか?」

クライアント: 「はい、そうですね。思い浮かべると少し安心できます。」

セラピスト: 「素晴らしいです。では、次に少し軽いエクササイズをしてみましょう。何か緊張や不安が出てきたときに、その感情を少し和らげる方法です。あなたは呼吸を使ってリラックスする方法を試したことはありますか?」

クライアント: 「少しだけ試したことがありますが、まだあまり慣れていません。」

セラピスト: 「それでは、今一緒にゆっくりと深呼吸をしてみましょう。息をゆっくり鼻から吸い込んで、お腹が膨らむのを感じながら、その後にゆっくり口から吐き出します。この呼吸に集中してみましょう。」

クライアント: (深呼吸を数回行う)「少しリラックスした感じがします。」

セラピスト: 「よかったです。この呼吸法も、安全な場所のイメージと同じように、セッション中に不安を感じたときに役立てることができます。辛いと感じたときは、いつでも深呼吸をしながらその庭を思い浮かべて、落ち着けるようにしていきましょう。」

クライアント: 「分かりました。セッションの間に辛くなったときは、そのイメージや呼吸法を使ってみます。」

セラピスト: 「素晴らしいです。これで、トラウマに向き合う準備が整いました。次回からは、実際にトラウマの記憶を処理していきますが、何か不安な点や質問はありますか?」

クライアント: 「少し怖い気もしますが、今なら大丈夫な気がします。安全な場所のことも考えられるので、やってみようと思います。」

セラピスト: 「勇気を持って進んでくださるのは素晴らしいです。私もあなたをサポートしていきますので、無理をせず、自分のペースで進んでいきましょう。」

STEP
トラウマ体験の思い出し

トラウマ体験の思い出しの段階では、クライアントが安全な場所を確保した状態で、具体的なトラウマの記憶に向き合い、それを思い出す作業が行われます。この作業は非常に感情的であり、クライアントが安全に感情や記憶に取り組めるよう、セラピストが慎重にサポートします。

この段階では、クライアントが事故の瞬間の記憶や感情に触れることでトラウマに向き合い始めています。セラピストは、クライアントが感情的に圧倒されないように、常に安全な場所やリラクゼーションテクニックを使ってサポートします。トラウマ体験の思い出しは感情的に非常に強烈ですが、セラピストのガイドにより、クライアントは安全に記憶を処理し始めます。

トラウマ体験の思い出し:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「さて、今日は少しずつその事故の記憶を取り扱っていきます。前回のセッションで安全な場所をイメージし、落ち着くためのリソースを整えましたね。もし不安になったときは、いつでもそのイメージを思い浮かべて深呼吸をして、セッションを中断しても構いません。では、始めていきましょう。今、事故の瞬間を思い出してみてください。その出来事がどのように始まったのか、そして特に強く感じたことについて教えてもらえますか?」

クライアント: 「…ええ、覚えています。交差点で、信号が青だったので普通に渡ろうとしました。でも、右側から急に車が出てきて…」

セラピスト: 「その時、あなたはどんな感情を感じましたか?」

クライアント: 「恐怖です。体がすぐに反応できなくて…まるで時間が止まったようでした。私は子供の手を引いていて、守りたかったのに…」

セラピスト: 「その瞬間、何が起こっていたのかを思い出しながら、どんな映像が浮かんでいますか?目の前にどんな景色が広がっていましたか?」

クライアント: (目を閉じながら)「車が近づいてくるのが見えました。すごく速くて、止まることができないって分かりました。子供が私の手から離れて…私はただその瞬間に固まってしまったんです。」

セラピスト: 「その映像を思い浮かべたときに、体の中でどんな感覚が感じられますか?何か重たい感じや、痛みなど感じますか?」

クライアント: 「胸が苦しくて、息が詰まる感じです。心臓がドキドキして、手が冷たくなっています。あの時の恐怖が、また体に戻ってきた感じです。」

セラピスト: 「その感覚に気づいたら、少し深呼吸をしてみましょう。安全な場所を思い浮かべて、深呼吸を繰り返して、少しリラックスしていきましょう。」

クライアント: (ゆっくりと深呼吸する)「少し落ち着いてきました。でも、あの時の記憶がすごくリアルに戻ってきます。」

セラピスト: 「よく頑張っていますよ。その瞬間をもう少し見ていきましょう。その後、何が起こりましたか?」

クライアント: 「車がぶつかって…私たちは倒れました。痛みが走って、頭が混乱して…子供のことを見たくても、動けなくて…それが一番辛いです。私は子供を守れなかったんです。」

セラピスト: 「その時、どんな考えが頭に浮かんでいましたか?」

クライアント: 「『私のせいだ。私が外に出たせいで子供が死んだ。私は母親失格だ』という思いがずっと頭の中で繰り返されていました。」

セラピスト: 「その考えは今でも強く感じていますか?」

クライアント: 「はい…ずっとそう思ってきました。毎日その後悔が消えなくて、何をしてもそれが頭から離れません。」

セラピスト: 「その思いがとても深く刻まれているんですね。今その感情が強くなりすぎないように、再び安全な場所を思い浮かべてみましょう。実家の庭に戻って、太陽の暖かさを感じながら、もう一度深呼吸をしてみましょう。」

クライアント: (安全な場所をイメージしながら)「はい、少し落ち着いてきました。」

セラピスト: 「とてもよくできました。トラウマの記憶に触れるのは難しいことですが、あなたはとてもよく頑張っています。次回もこの記憶に取り組んでいきますが、今のペースで進んでいきましょう。何か質問や不安な点がありますか?」

クライアント: 「今は少し気持ちが軽くなった気がしますが、またあの瞬間を思い出すと怖くなるかもしれません。」

セラピスト: 「それは自然な反応です。このセッションの後も、もし不安な気持ちが出てきたら、先ほどの安全な場所を思い浮かべたり、呼吸法を使って自分を落ち着かせることができますよ。必要であれば次回も同じようにサポートしていきますので、焦らず自分のペースで進んでいきましょう。」

クライアント: 「ありがとうございます。次回もがんばってみます。」

STEP
再処理

再処理の段階では、クライアントがトラウマ体験に再度向き合い、それに関連する感情、思考、身体感覚を処理し、新しい視点や意味付けを得ることを目指します。EMDRでは、バイラテラル・スティミュレーション(両側性の刺激、例えば左右に動く指を目で追うなど)を用いて、記憶の処理を促進します。

再処理のプロセスでは、トラウマの記憶に対して新しい視点や意味を見出すことが重要です。クライアントは事故に対して「自分のせいではない」と認識し始め、感情的な負担が少しずつ軽くなっていきます。セラピストはこの進展を確認し、クライアントが適切に自分の感情と向き合えるようにサポートします。

今後のセッションでは、このプロセスを繰り返し、さらにトラウマが日常生活に与える影響を軽減していきます。

再処理:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「今日から再処理の段階に入ります。事故の記憶に触れながら、体の反応や感情を観察し、そこに新しい意味を見つけていきます。覚えていますが、必要に応じていつでもセッションを中断し、安全な場所に戻ることができます。準備はいいですか?」

クライアント: 「はい、少し不安もありますが、やってみたいです。」

セラピスト: 「とてもいいですね。それでは、事故の瞬間を再び思い出してみましょう。車が近づいてきた瞬間や、その後何が起こったかをもう一度心に描いてみてください。どんな映像や感覚が出てきますか?」

クライアント: 「…車が急に近づいてきて、避けられない感じです。息が詰まって、体が動かないんです。」

セラピスト: 「その映像に集中しながら、私の指を目で追ってください。左右に動かしていきます。深呼吸を続けながら、ただ映像を観察してください。」

(クライアントはセラピストの指を目で追い、バイラテラル・スティミュレーションが進む)

セラピスト: 「どんな変化がありますか?」

クライアント: 「今、車がぶつかる瞬間を見ています。心臓がバクバクしていますが…少し冷静に見られる気がします。子供が手を離れた瞬間も、前より少し距離を置いて見ている感じがします。」

セラピスト: 「よくできています。そのまま続けていきましょう。事故の後、どんなことが頭に浮かびますか?」

クライアント: 「私は動けなくて…子供が倒れているのに、何もできなかった。その罪悪感がずっと私を苦しめてきました。」

セラピスト: 「その罪悪感を感じている自分に、どんな言葉をかけてあげたいですか?もしその時の自分を助けられるとしたら、何を伝えたいですか?」

クライアント: 「…『あなたのせいじゃない』と言いたいです。事故は私のコントロールの範囲を超えていたし、あの状況で私は最善を尽くしていた。自分を責める必要はない、と言いたいです。」

セラピスト: 「その言葉を自分にしっかり伝えながら、もう一度私の指を追ってください。新しい意味付けがその瞬間に根付いていくのを感じてください。」

(再びバイラテラル・スティミュレーションを続ける)

セラピスト: 「どんな変化を感じますか?」

クライアント: 「少し心が軽くなった気がします。あの時、私は本当に子供を守ろうとしていたし、できることは全部やったと思います。それでも起こってしまったことは、私のせいではないと感じられるようになってきました。」

セラピスト: 「その気づきはとても大切です。事故の記憶が少し違う視点から見えるようになりましたね。もう一度、私の指を追いながらその感覚を深めていきましょう。」

(バイラテラル・スティミュレーションを続ける)

クライアント: 「今、事故の瞬間が少しぼんやりとしてきた気がします。以前ほどはっきりと思い出せなくなってきて…感情的にも少し遠ざかっている感じです。」

セラピスト: 「それは記憶が再処理されて、新しい形で整理されている証拠です。感情が穏やかになり、過去の出来事として少し距離を置けるようになってきていますね。」

クライアント: 「そうですね。まだ完全には整理できていないけれど、少し楽になった気がします。」

セラピスト: 「とても素晴らしい進展です。今日のセッションでは、トラウマに新しい意味付けができ、感情が少し軽くなったことが確認できました。このプロセスを何度か繰り返していくことで、もっと安定した感情の変化が得られます。」

STEP
セッションの終了

セッションの終了の段階では、クライアントが再処理を終えた後、そのセッションで得られた気づきや感情の変化をまとめ、次回のセッションに向けて安心感や安全感を強化します。クライアントが心の整理をつけるのを助け、セッション後の感情のケアを行うことが大切です。

セラピストはクライアントに、安全な場所やリラクゼーションの技術を確認し、不安が高まったときの対処法を一緒に話し合い、安心感を持ってセッションを終えるように導きます。また、クライアントがセッション後に不安定になる可能性に備え、連絡の手段やフォローアップの方法を明確にしておくことが重要です。

セッションの終了:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「今日のセッションでは、トラウマの記憶と向き合い、その中で新しい視点を得ることができました。どんな感覚を今、持っていますか?」

クライアント: 「少しほっとしています。まだ完全に楽になったわけではないですが、子どもの事故が私のせいじゃないという感覚が、心に少しずつ入ってきた気がします。」

セラピスト: 「素晴らしい進展ですね。自分を責める気持ちが少しずつ軽くなっていくのは大きなステップです。今日は再処理のプロセスを通して、あなたが自分自身に新しい意味付けをすることができたことを確認しました。」

クライアント: 「はい。以前はただあの瞬間の映像が頭から離れなくて、それを見るたびに胸が苦しくなっていたんです。でも今は、少し距離を置いて見ることができるようになった気がします。」

セラピスト: 「それはとても良い兆候です。次回のセッションでは、今日感じた変化が持続しているか確認し、さらに進んでいきます。それでは、今日のセッションを閉じる前に、いくつか安全を確保するための方法を確認しておきましょう。セッション後に不安や感情が高まることがあれば、どう対処しますか?」

クライアント: 「前に教えてもらった深呼吸や、安心できる場所を思い出すことをやってみます。それから、リラックスできる音楽を聞いたり、友達と話したりしてみるつもりです。」

セラピスト: 「それはとても良い対処法です。もし感情が強くなりすぎたり、コントロールできないと感じる場合は、すぐに私に連絡をしても大丈夫ですよ。無理に一人で抱え込む必要はありません。」

クライアント: 「ありがとうございます。少し安心しました。」

セラピスト: 「では、セッションを閉じる前にもう一度、安全な場所のイメージを確認してみましょう。リラックスできる場所を心に描いてみてください。」

クライアント: 「はい…今、家のソファに座って、毛布に包まれているイメージが湧いてきます。」

セラピスト: 「とても良いですね。その感覚をしっかりと心に留めてください。セッションの後、いつでもそのイメージに戻れることを覚えておいてくださいね。」

クライアント: 「はい、そうします。」

セラピスト: 「今日のセッションはここまでにしましょう。今日進んだ部分はしっかりと成果がありますし、次回はさらにその進展を深めていきましょう。来週もこの時間で大丈夫ですか?」

クライアント: 「はい、来週も同じ時間でお願いします。」

セラピスト: 「わかりました。それでは、今日はお疲れさまでした。どうか無理をせず、リラックスしてお過ごしくださいね。」

クライアント: 「ありがとうございます。少し気が楽になりました。また来週お願いします。」

STEP
次回のセッションの準備

次回のセッションの準備では、現在のセッションで得られた気づきや進展を確認し、クライアントが次回に向けてどのような課題や感情を持ち越しているかを整理します。また、次回のセッションの焦点をどこに置くか、次のステップに進むための準備を行います。

次回のセッションに向けた目標の整理

  • 車に対する恐怖の再処理: クライアントがまだ強く感じている車への恐怖をテーマに、次回のセッションでさらなる再処理を行う。
  • 自責感へのアプローチ: 自己批判の感情が残っているため、次回も引き続きその感情に取り組む。
  • 外出時の不安の対処法の練習: クライアントが日常で抱える不安に焦点を当て、具体的な対処法を練習する。

セラピストはクライアントの意向に沿って、次回のセッションでどの部分に焦点を当てるかを明確にし、セッション外での対処法や自己観察の方法を確認します。また、クライアントが安心してセッションを終えられるよう、サポート体制を確認することも重要です。

次回のセッションの準備:セラピストとクライアントの対話

セラピスト: 「今日のセッションでは、大きな進展がありましたね。特に、事故の記憶に対して距離を取ることができたのは、重要なステップだと思います。次回のセッションに向けて、どんなことを取り組みたいと感じていますか?」

クライアント: 「そうですね…。少しずつ、自分を責める気持ちが軽くなってきたけれど、まだ完全に消えたわけじゃないので、そこをもう少し掘り下げたいです。それに、車に対する恐怖もまだ強くて、それが日常生活に支障をきたしているので、その部分も改善したいと思います。」

セラピスト: 「とても具体的で良い目標です。次回は、車に対する恐怖や不安に焦点を当て、再処理を進めていきましょう。また、あなたがまだ感じている自責の念についても、さらに探っていけるようにします。」

クライアント: 「はい、お願いします。あとは、外出するときに強い不安感が出ることが多いので、そこも何とかしたいです。」

セラピスト: 「外出時の不安についても大事ですね。次回は、その部分も扱えるようにしましょう。次回のセッションまでに、どんなことに注意して過ごしたいと思いますか?」

クライアント: 「フラッシュバックが出たときにどう対処するか、もう少し練習したいです。それと、事故のことを思い出したときに、すぐに自分を責めないで、今日やったように『今の自分は安全だ』って思い出すようにします。」

セラピスト: 「それは素晴らしいですね。フラッシュバックへの対処法を日常で練習するのは、とても有効です。また、自己批判の代わりに、自分を守る方法を意識的に使うのも重要なスキルです。次回までに、どんな感覚や変化が起こるか、ぜひ観察してみてください。」

クライアント: 「わかりました。少しずつできることが増えていく感じがして、希望が持てる気がします。」

セラピスト: 「その感覚は大切です。進歩を感じながら取り組んでいくことが、治療の大きな支えになります。次回のセッションでは、さらにこの進展を広げていきますね。時間や日にちは今のままで大丈夫ですか?」

クライアント: 「はい、同じ時間で大丈夫です。」

セラピスト: 「わかりました。それでは、次回のセッションまでの間、無理せず自分をケアしながら過ごしてください。特に不安やストレスが強くなった場合は、いつでも連絡をしてくださいね。」

クライアント: 「はい、ありがとうございます。今日のセッションもとても助かりました。」

セラピスト: 「お疲れ様でした。次回も引き続きサポートしますので、一緒に進んでいきましょう。」

STEP
次回のセッション

次回のセッションは、前回の進展を踏まえた上で、クライアントの目標に焦点を合わせて進めていきます。32歳の女性のPTSDのケースにおける次回のEMDRセッションでは、再処理を進めながら、クライアントが抱えている「車に対する恐怖」「自責感」「外出時の不安」に対処することが中心となります。

次回のセッションでは、クライアントが前回のセッションで得た新しい認識や感情を強化しつつ、さらなる恐怖や自責の念に対処することを目的にします。セラピストはクライアントのペースに合わせて、無理のない範囲で再処理を進めながら、次のステップに向けた準備を行います。

次回のセッション: セラピストとクライアントの対話例

セラピスト: 「前回のセッションから少し時間が経ちましたが、その後、どのような変化や気づきがありましたか?」

クライアント: 「フラッシュバックが出たときに、少しずつ自分を落ち着かせることができるようになってきました。でも、やはり車の音を聞くとまだすごく怖くて、外に出るのが辛いです。あと、あの事故のことを考えると、どうしても自分を責めてしまいます。」

セラピスト: 「フラッシュバックへの対処法を練習してきたのはとても素晴らしいですね。今日は、車に対する恐怖や事故に関連する自責の念について、もう少し深く探っていきたいと思いますが、いかがでしょうか?」

クライアント: 「はい、お願いします。まだそこが一番辛い部分です。」

セラピスト: 「わかりました。では、前回のセットアップを踏まえて、今日もリラックスできる環境を作りながら進めていきますね。まずは、落ち着く準備をしていきましょう。深呼吸を何度か繰り返して、今ここにいる自分を意識してみてください。」

(クライアントが深呼吸を行い、リラックスした状態を整える)

トラウマ体験の再処理

セラピスト: 「では、今回も車に対する恐怖について、具体的な場面を思い出してみましょう。どんな瞬間が一番怖いと感じる場面ですか?」

クライアント: 「車の音が聞こえるときです。事故の瞬間がフラッシュバックして、あの衝撃と恐怖が戻ってきます。」

セラピスト: 「その瞬間を思い出してみてください。今、どのような感情や体の感覚が浮かんできますか?」

クライアント: 「恐怖と罪悪感です。私があの時、もっと慎重にしていれば、子供を守れたかもしれないって…。」

セラピスト: 「その感覚をしっかりと感じてみてください。今、その感覚をどこに感じていますか?」

クライアント: 「胸が締め付けられるような感じです。」

セラピスト: 「では、その感覚を持ちながら、目を動かす準備をしましょう。左右に目を動かしていきますね。ゆっくりと私の指を目で追ってください。」

(クライアントが指を追いながら、感情の再処理が進行)

感情の変化の確認

セラピスト: 「今、どんな感覚がありますか?」

クライアント: 「少し和らいできました。前ほど強い恐怖は感じない気がします。でも、まだ自分を責める気持ちは残っています。」

セラピスト: 「自責の念が残っているのですね。その気持ちをしっかりと感じつつ、再び目を動かしていきましょう。」

(再処理を続ける)

新しい認識の導入

セラピスト: 「自責の気持ちは、今どのように感じていますか?」

クライアント: 「前より軽くなってきました。あの事故は、私のせいだけじゃなかったんだという気持ちが少し湧いてきました。」

セラピスト: 「その新しい気づきをしっかりと感じてください。『あの事故は私のせいだけじゃなかった』という気持ちを体で感じ取れますか?」

クライアント: 「はい。少し安心できる気がします。」

セラピスト: 「とても良い気づきですね。今日はここでセッションを終えますが、この新しい感覚を大切に持って、日常の中でも意識してみてください。」

次回のセッションの準備

セラピスト: 「次回のセッションでは、今日感じた安心感や、新しい認識をさらに強化していくことが目標になります。また、外出に対する恐怖感についても扱い、外での不安に対処する方法を一緒に探していきましょう。何か心配なことがあれば、いつでも連絡をしてくださいね。」

クライアント: 「わかりました。今日もありがとうございました。少しずつ楽になってきている気がします。」

セラピスト: 「それは素晴らしいことです。次回も一緒にこの進展を続けていきましょう。」

目次