3時間無料対面カウンセリングを行っています。無料カウンセリング予約フォームでお申し込みください。ボタン

醜形恐怖症・身体醜形症害-実際の無料心理相談例を徹底検証➃

目次

醜形恐怖症・身体醜形症害・代理醜形恐怖症の脅迫症群の臨床症状と醜貌恐怖や対人恐怖、妄想不安などとの鑑別

政府が新型コロナウィルス対策のマスク着用ルールを令和5年3月13日に緩和すると発表しました。マスクの着用は3年近く経過しましたが、実際には入学から卒業まで素顔を見せることなく過ごしてきた学生もいるほどの期間でした。
心理相談例のクライエントさんは、もともと中学生位から顔のつくり、肌に対して異常なまでに欠陥や欠点観に捉われていたようでした。今までは帽子や髪型で隠すように過ごしてきていたのが、コロナの影響でこの3年間のマスク着用は好都合だったようです。
美容整形で口と鼻はプチ整形したようですが、新たな顔の欠点も現れたようです。今後のマスク緩和後に対し、自分の「醜い顔」の露出に恐怖を覚えて悩んでいます。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

醜形恐怖症/身体醜形症害とは

醜形恐怖症は、従来は身体表現性障害の一種としていましたが、2013年にDSM-5(アメリカ精神医学会)は、新たに改訂され強迫症や身体醜形障害などの「強迫症および関連症群」に分類されました。また、2021年のICD-11(国際疾病分類第11版)における「醜形恐怖症」および「身体醜形症(身体醜形障害)」の診断基準は、「身体醜形症(Body Dysmorphic Disorder, BDD)」という名称で統一されています。ICD-11では「身体醜形症害」と表記され、これはICD-10の「醜形恐怖(Dysmorphophobia)」の後継となる診断です。

醜形恐怖症は、自分の外見に対する強い不安や恐怖を引き起こす障害です。多いのは、顔の輪郭や歪み、額、耳、ニキビやしわ、瘢痕、唇、歯並び、鼻や目の形、顔の筋肉、肌の状態、頭の形状、髪の毛の薄さや質、手や腕など、さまざまな特徴があります。それ以外にも乳房や性器、ペニス、殿部、腹部、脚、首、肩といった部位も対象になります。また、筋肉に対する捉われは、身体の作りが小さいや貧層であるなどが原因となり、筋肉醜形恐怖の場合もあります。多くの人は複数の部分について悩んでいます。
醜形恐怖症の臨床的特徴は、自分が外見について認識された欠陥や欠点への捉われといえます。他人から見てその欠陥や欠点は観察されないか、観察されてもわずかなものであるにかかわらず、「醜い」「異常である」「魅力的ではない」「歪んでいる」などと表現し認識しています。

【症例紹介:30代女性・仮名Aさん】

Aさんは30代前半の未婚女性。小学生の頃から「自分の顔が他の子と違って変だ」という意識を持ち始め、思春期以降、鏡で自分の顔を繰り返し確認するようになった。特に「鼻の形が大きくて醜い」との思い込みが強く、自撮り写真を何十枚も撮影しては削除し、鏡の前で長時間過ごすことが日常的であった。

社会人になってからは、外出や対人場面に強い不安を抱くようになり、「職場で同僚に顔を見られて笑われているのでは」と感じるようになった。そのため、会議ではマスクを外せず、人前で話すことを極度に避け、リモート勤務への希望を繰り返すようになった。SNSに投稿される自分の写真には耐えられず、タグ付けを嫌がり、友人との関係も徐々に疎遠となった。

Aさんはこれまで美容外科を複数受診し、「鼻を小さくしたい」と整形手術を繰り返し検討してきたが、医師から「問題ない」と説明されても納得できず、強いフラストレーションを抱いていた。また、鏡を見る回数を一日20回以上に数えることがあり、気づけば1時間以上身だしなみに費やすこともあった。

精神科受診のきっかけは、母親の勧めによるもので、「この顔では一生誰にも愛されない」という絶望的な思いに支配され、抑うつ的症状も併発していた。面接では、自身の外見に対する評価が現実から大きくかけ離れており、客観的な意見も受け入れがたい状態であった。

認知行動療法では、まず心理教育を通じて身体醜形症のメカニズムを理解してもらい、自動思考への気づきや、鏡チェックの制限、他者の視線への曝露課題に取り組んだ。徐々に、外見へのこだわりが過剰であることに本人も気づき始め、現在は社会参加を段階的に再開している。

ICD-11の診断基準

身体醜形症(Body Dysmorphic Disorder, 6B21)の診断基準では、以下の特徴を満たす必要があります:

  1. 身体的外見に関する強迫的な思考
    • 醜形恐怖症の主要症状は、自己外観に対する極度の恐怖や不安である。
    • 実際には存在しない、または他人には軽微にしか見えない身体的欠陥や欠点について、持続的に過度な懸念を抱く。
  2. その懸念が強い苦痛や生活の機能障害を引き起こす
    • 醜形恐怖症によって、社会的、学業的、職業的、またはその他の重要な領域において、明らかな機能上の障害が生じている。
  3. 反復的な行動または精神的行為
    外見への懸念に関連して、鏡を見る、皮膚をいじる、他人に確認を求める、過剰な整容行為、隠そうとするなどの繰り返される行動を伴う。
  4. 醜形恐怖症の症状は、心理的なものであり、身体的な疾患、外傷、または先天的欠損によって説明できない。
  5. その懸念は摂食障害など他の精神疾患ではうまく説明されない
    たとえば体重や体型に関する懸念が摂食障害(例:神経性無食欲症)によるものではないこと。
  6. 醜形恐怖症の症状は、その他の精神障害、物質使用障害、または一般的医学的状態によって引き起こされていない。

醜形恐怖症が強迫症の一種として認識されるようになった背景には、強迫症の症状として現れる「自己評価の過剰な重要性」という要素があり、自分の外見に対して非常に厳しい自己評価を行っています。そのうえで、「身体的な外見に関する欠陥または欠点への過剰なとらわれ」とその反応として「繰り返し行為」を特徴としています。

症状の不合理性に関する認識の程度により、「病識が十分またはおおむね十分」「病識が不十分」「病識が欠如した・妄想的な信念を伴う」の3部類としますが、病識が不十分なことが多く、1/3以上では妄想的な信念を認めます。

 ICD-11での分類

  • コード:6B21 – 身体醜形症(Body Dysmorphic Disorder)
  • 分類群:強迫スペクトラム障害(Obsessive-Compulsive or Related Disorders)

これは、強迫性障害(OCD)抜毛症(Trichotillomania)などと同じ群に分類されており、次の点で共通点があります。

  • 外見に関する強迫的思考(obsessions)
  • それに伴う繰り返し行動(compulsions)
    • 例:鏡を何度も見る、皮膚を触る、他人に確認を求める、過剰な整容など

対人恐怖症(社交不安症)との関連性

身体醜形症と対人恐怖症(特に醜貌恐怖タイプ)には重なりがありますが、異なる診断です。次に関連性を説明します。

  • 身体醜形症は強迫症群に分類される明確な精神疾患です。
  • 対人恐怖症とは症状に重なりがあるものの、診断基準や治療アプローチが異なります。
  • 臨床では両者の併存も多く見られます。

醜貌恐怖(じゅうぼうきょうふ)関連の深い症状

  • 対人恐怖症の一種とされることもあり、見た目が悪いことで「人に嫌われる」と強く信じる症状です。
  • 精神分析的背景をもとに語られることもあるが、現代の診断では多くが「身体醜形症」または「社交不安症」に分類されます。

共通点

  • 他人からの評価や視線への過剰な恐怖
  • 社会的な場面の回避
  • 自己の身体的特徴に強くこだわる

主な違い

特徴身体醜形症(BDD)対人恐怖症(社交不安症)
焦点特定の身体的欠陥への過度なこだわり他人に悪く思われることへの強い恐怖
恐れている内容「見た目が醜い・変だと思われる」「恥をかく、嫌われる、評価されるのが怖い」
社会的状況の回避外見に自信がないために人を避ける人前で話す、注目されるなどの状況を避ける
幻想や思い込みの強さ身体的欠陥に対する妄想的な確信もあり得る比較的現実的な不安が多い

臨床症状・妄想的不安

臨床的症状は次のようなものがあります。

自分の外見に対する強い不安や懸念

自分が外見的に不十分であると感じ、病識が欠如していて外見に対する強い不安や懸念を抱いています。

自己評価の低下

自分の外見に対する不安や懸念が強いため自己評価が低下しています。
・妄想的な信念を持っています。

外見に対する回避行動

外見に対する不安や懸念を和らげるために、外出を避けたり鏡を見なかったり、人前で話すことを避けたりする回避行動をとっています。

精神的苦痛や機能の低下

外見に対する強い不安や懸念が原因で、精神的苦痛を感じたり日常生活の機能が低下しています。

強迫的な行動

外見に対する強い不安や懸念を和らげるために、鏡を見続ける、洗浄や化粧などの強迫的な行動をとっています。
・1日に何時間も悩みにとらわれ相当な時間を費やしています。

身体表現性障害の症状

身体表現性障害の症状を示すことがあります。具体的には、身体のある部分が歪んで見える、大きくなって見える、または小さくなって見えるなど、身体の形や大きさに関する歪んだ知覚を抱くことがあります。

妄想的不安は次のようなものがあります。

  • 多くは自分が醜いという妄想を抱いていて、整形手術などの治療を受ける必要があると感じています。実際には33〜76%の人は美容整形手術を受けていますが、満足することはほとんどなく修正した部分も含め、それ以外の部分に欠陥や欠点をとらえ始めます。
  • 他人が自分を醜いと思っているという妄想を抱くことが多く、その妄想が人々から嫌われていると感じさせ、社交的な状況を避けるようになります。
  • 他者の外見に対して異常な注意を払うようにもなり、他者の醜いと感じられるような外見的特徴に対して異常に敏感に反応するようになります。

これらの症状や妄想が、社会的、学業的、職業的、またはその他の重要な領域において、明らかな機能上の障害を引き起こす場合に、醜形恐怖症の診断が考えられます。

過剰なとらわれ・繰り返し行為・認識や信念

過剰なとらわれには次のようなものがあります。

  • 他人の外見への異常な注意
    自分の外見に加えて、他人の外見にも異常な注意を払います。特に、外見上の欠点や特徴に集中し、それが過剰に気になります。
  • 過剰な自己分析
    自分の外見に過剰に注意を払い、自己分析を行い自分の外見について悩みます。
  • 社交不安
    他人に自分の外見を見られることを避けるために、社交的な場面から遠ざかる傾向があります。

繰り返し行為には次のようなものがあります。

  • 鏡の前での過剰なチェック
    鏡の前で自分の外見を繰り返しチェックし、見た目に問題がないか時間をかけて確認します。
  • 化粧やファッションの過剰な気遣い
    自分の外見に対して過剰な気遣いで化粧やファッションに時間をかけます。
  • パーフェクショニズム
    自分の外見に対する不安を緩和するために、不安部分を隠すなどで完璧主義的な行動を取ります。

認識・信念は次のようなものがあります。

  • 自分の外見に対する過剰な自己評価
    自分の外見に対して過剰な自己評価を行い自分を否定的に見ています。
  • 外見に対する異常な認知
    自分や他人の外見に対して、異常な認知をしてしまいます。例えば、小さな外見の欠点を誇張してしまったり、正常な外見を異常に見えると判断してしまったりします。
  • 過剰な妄想
    自分や他人の外見について、過剰な妄想を持つことがあります。例えば、自分が他人から嫌われている、拒絶されてしまうと信じ込んだり、他人が自分を見下していると感じ取ります。

醜形恐怖症の疫学(有病率など)

醜形恐怖症の正確な有病率は明確には分かっていませんが、一般的には人口の1〜2%程度であると推定されています。ただし、症状の軽度な恐怖症は多く存在する可能性があります。
2008年米国の成人有病率は2.4%(男性2.2%、女性2.5%)とされています。
醜形恐怖症は外見の欠陥や欠点の捉われを認識できずに、直接的な外見の症状を修正するために皮膚科9〜15%、形成外科7〜8%、矯正歯科8%などと精神科以外の受診が多くなります。この意味が示すように自分の外見にこだわるだけではなく、他者からどう見られているかの意識を過剰に気にしているために精神科の受診に至るケースが少なくなるということです。

平均発症年齢は12〜13歳をピークに16〜17歳位まで続きます。醜形恐怖症の2/3 は18歳までに発症します。この早期の年齢で発症しているということは、思春期だけでは説明がつきにくいため、養育問題の関連があるといわれています。

醜形恐怖症の病因

醜形恐怖症の病因はまだ完全には解明されていませんが、脳の機能や神経伝達物質、または脳の構造の異常が関与していることが示唆されていて、脳の前頭前野や扁桃体、海馬などの領域に異常があることが示されています。また、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスの異常が関与している可能性もあるとされています。まとめると、次のような要因が関連している可能性があることが示されています。

  • 遺伝的要因
    遺伝的要因が関与している可能性があります。遺伝的な要因は、脳の機能や化学物質のバランスなどに影響を与えることがあります。
  • 生物学的要因
    脳の機能、神経伝達物質、または脳の構造に関する生物学的な異常が発症に関与すると考えられています。
  • 養育や経験的要因
    過去の養育に関連する虐待、養育者の代理醜形恐怖症などのトラウマ体験、いじめ、または外見に関するネガティブな認識をしてしまう経験が発症に関与する可能性があります。
  • 社会文化的要因
    外見に対する社会的な圧力や理想化された美的観念が発症に関与する可能性があります。

代理醜形恐怖症

代理醜形恐怖症(proxy body dysmorphic disorder / proxy BDD)」は、一般的な精神科診断マニュアル(ICD-11やDSM-5)には公式な診断名としていませんが、身体醜形症(BDD)の派生的・拡張的な概念として臨床的・研究的に注目されています。

代理醜形恐怖症とは、醜形恐怖症の一種とも考えられており、他人の外見上の欠点や異常な特徴に過剰に反応する傾向を指します。この症状は、自己の外見に関する問題ではなく、他人の外見についてのこだわりが中心で、例えば、他人の顔にあるシミ、傷跡、鼻の形など、一般的には受け入れられる外見の観点からでも欠陥や欠点と見なして異常な注意を向けます。
もし、親権者が養育の際に過剰な反応を見せて我が子に注意を向けていたとしたら、幼児期からトラウマ体験をすることになり、醜形恐怖の捉われとなります。

代理醜形恐怖症の定義

代理醜形恐怖症とは、自分自身ではなく「他人の身体的欠点」や「外見的特徴」に対して、過剰な関心や嫌悪、恥、恐怖を抱く状態です。とくに、親・パートナー・子どもなど近しい人の外見的特徴に強いこだわりを持ち、それが苦痛や機能障害を引き起こす場合にみられます。

【臨床例(簡略)】:ある母親が、娘の耳の形を異常に気にしており、写真に写るたびにそれを指摘。整形を強く勧め、外出を制限し始めたことで、親子関係が悪化。母親の内面には「人にどう思われるか」「外見によって人生が決まる」という深い信念があった。

【典型的な特徴】

特徴内容
対象自分ではなく「他人の顔・体・外見」
思考様式「この人の鼻が異常に見える」「彼のアゴが歪んでいて恥ずかしい」
行動他人に整形を勧める、外見の指摘を繰り返す、社会的場面を避ける
感情恥・嫌悪・不安・怒り(相手に対する)
関係性への影響対象者との関係に緊張・衝突・支配行動が生じやすい

【背景にある心理的メカニズム】

  • 投影同一化(projective identification):自分自身の外見への恥や否定感が、他者に投影される
  • 過剰な美的理想主義:完璧主義的な美的価値観を他者に強く求める
  • 親子関係や過去のトラウマ:外見に過敏な育てられ方、他者評価への過剰適応など

【他の障害との鑑別】

類似疾患違い
身体醜形症(通常型)対象が「自己の外見」
社交不安症他人の視線が怖いが、「他人の見た目」に関心があるわけではない
強迫性障害(OCD)他人の体のことにこだわる場合でも、「外見」に限定されない
家族性強迫(Family Accommodation)他人の症状に巻き込まれるのではなく、他人の外見に自分が苦しんでいる

【臨床での対応とアプローチ】

  • 心理教育:自他境界の理解、身体イメージの問題として捉える
  • 認知行動療法(CBT):外見へのこだわりに関する自動思考を認識し再構成
  • 関係療法的アプローチ:対象となる他者との関係性の構造を再評価・再構築
  • ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー):美的価値の手放しと本来の価値指向行動への移行

醜形恐怖症の薬剤治療と心理療法

薬剤治療には、抗うつ薬の他、抗不安薬、抗精神病薬などが使用されることがあります
セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンなどの効果と三環系うつ薬のクロミプラミンの有効性が確認されています。また、抗不安薬や比較的症状が重い場合は向精神薬が処方される場合もあります。

心理療法は次のようなことが考えられます。

認知行動療法
認知行動療法の目標の1つは、負の信念を取り除き、健康的でバランスのとれた自己評価を促進することです。治療者は、患者の負の信念について探求し、それがどのように形成されどのように維持されるかを分析します。次に、それらの負の信念を払拭し、健全な自己評価を促進するための新しい思考パターンを開発するために患者と協力して作業します。具体的には、次のようなアプローチが用いられます。

  • 認知の変容
    自分の外見に対して過剰に悪い評価をしていることが多いため、まずは自分の認知パターンを変えることが大切です。具体的には、自分が外見に対して過剰に注意を払っていることや、外見以外の自分の良い点や能力にフォーカスすることを学びます。
  • 暴露療法
    自分の外見に対して過剰に嫌悪感を持っているため、自分の外見を直視することができません。そこで、徐々に自分の外見に対する恐怖心に直面することで、徐々に恐怖心を克服する暴露療法が用いられます。
  • スキルトレーニング
    自己肯定感を高めるスキルトレーニングが行われます。具体的には、自己肯定感を高める自己暗示を繰り返す、自分の強みや成功体験を振り返るなどの方法があります。
  • 身体感覚の訓練
    治療者は、患者に自分の体に対する過剰な関心や不快感に対処するための訓練を提供します。具体的には、リラクゼーションや深呼吸などの技術を使用し、自分の身体感覚に慣れ親しむように指導します。
行動療法

行動療法は、醜形恐怖症患者が避けている行動を徐々に再開し、症状の軽減を図ることを目的としています。

応用行動分析

醜形恐怖を感じることを避けたり、不安を回避する行動をとることに対し、応用行動分析では、そのような行動を分析し、代替行動を学習することを目指します。

具体的には次のような手法が用いられます。

  • 活動増加
    外出や人前に出ることを避けがちになります。そこで、活動増加の行動療法を行い、日常生活での活動を増やすことで自信や自己効力感を高めることができます。
  • 肯定的な体験の増加
    肯定的な体験を増やすことで自己肯定感を高めることが重要視されます。例えば、自分の好きなことや得意なことに時間を費やすように自分にとって楽しいイベントや活動に参加するなどがあります。
  • 目標設定
    自分にとって達成しやすい目標を設定し、それを達成することで自己効力感を高めることが重要です。また、自分にとっての外見に関する問題に焦点を当てた目標設定も行われます。例えば、自分の髪型や服装を変えるなど、自分の外見に関する取り組みを行うことができます。

暴露療法は有効的ですので詳しく解説します。自分自身が過剰に嫌悪する自分の外見に直面することで、その恐怖感や不安感を克服するための治療法です。

  • 恐怖階層の作成
    まず、醜形恐怖症の人がどのような状況で外見に関する不安や恐怖を感じるか、その状況をリストアップします。その後、リストにある状況を、どの程度不安や恐怖を感じるかを1から10までの数字で評価し恐怖階層を作成します。
  • 徐々に暴露する
    次に、リストにある状況から自分の外見に直面する最も恐怖心が低いものから順に取り組みます。徐々に外見に関する不安や恐怖の強い階層に直面して行きますが、大切な所はその状況を繰り返し経験することで、不安や恐怖を軽減させることです。
  • 終了時のフィードバック
    露療法の最後に治療を振り返り、何が上手くいったか、どのような変化があったかを話し合います。このフィードバックによって、患者は自分自身の成長を確認し、治療の効果を実感することができます。

CBTに基づいたセラピーステップと具体的なワーク

醜形恐怖症に対するCBTの基本的セラピーと補助的アプローチのステップ

  • マインドフルネス:思考との距離をとるスキル
  • スキーマ療法要素:外見完璧主義や恥スキーマの修正
  • ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー):価値指向の行動強化
STEP
アセスメントとケースフォーミュレーション
  • 症状の全体像を把握(外見へのこだわり、回避行動、強迫行為、思考歪曲)
  • セルフモニタリングを開始(鏡チェック、整容行動、他者確認などの頻度)
  • 身体的苦悩の主観的強度(例:0–10スケール)を把握

ワーク例:

  • 「1日の外見に関する思考と行動日誌」
  • 「鏡チェックログ」
STEP
心理教育(Psychoeducation)
  • 身体醜形症のメカニズム(認知・行動モデル)を説明
  • 強迫的行動(例:鏡チェック)は一時的安心をもたらすが、症状を維持させることを説明

ワーク例:

  • 「安心感の一時性を記録するワーク」
  • 「思考・感情・行動のABCモデル図」
STEP
認知再構成(Cognitive Restructuring)
  • 外見に関する自動思考や信念の特定と挑戦
    • 例:「鼻が大きいから皆に嫌われる」「外見がすべて」
  • 証拠の検討・バランスのとれた思考を促進

ワーク例:

  • 「自動思考記録表(コラム法)」
  • 「自分の外見に関する証拠リスト作成(支持/反証)」
STEP
曝露と反応妨害(ERP)
  • 回避行動(人前に出る、写真を撮られるなど)への段階的曝露
  • 鏡チェックや他人に見た目を確認する行動の制限(反応妨害)

ワーク例:

  • 「曝露階層表(SUDSつき)」
  • 「1週間鏡チェックを1日1回に制限チャレンジ」
STEP
自己概念と価値再建
  • 自己評価の基盤を「外見」から「価値・人間性・スキル」へシフト
  • 自己同一性の広がりを支援(アイデンティティワーク)

ワーク例:

  • 「自分の価値カード(見た目以外の長所)」
  • 「大切にしたい価値リストと日常実践計画」
STEP
再発予防
  • 誘因(ストレス・SNS・美容イベント)と警戒サインの把握
  • 再発時の対応計画書の作成

ワーク例:

  • 「ストレス×症状増悪マップ」
  • 「セルフケアリストと予防計画」

醜形恐怖症/身体醜形症害 のセルフチェックリスト

醜形恐怖症(身体醜形症、Body Dysmorphic Disorder, BDD)の自己評価のためのセルフチェックリストを次に示します。各質問に対して「はい」または「いいえ」で答えてください。

醜形恐怖症/身体醜形症害 のセルフチェックリスト30問
1.あなたは自分の外見に強い不満を感じますか?
2. あなたは鏡を頻繁にチェックして自分の外見に不安を感じますか?
3.あなたは他人が自分の外見をどう思っているか過度に気にしますか?
4.あなたは自分の外見の欠点を隠すためにメイクや服装に多大な時間を費やしますか?
5. あなたは自分の外見に関する不安が原因で社会的な活動を避けることがありますか?
6.あなたは他人が自分の外見に否定的な意見を持っていると感じますか?
7.あなたは自分の外見を改善するために整形手術や美容治療を考えたことがありますか?
8.あなたは自分の外見の欠点が実際よりも大きく見えると感じますか?
9. あなたは自分の外見に対する不満が日常生活に支障をきたしていると感じますか?
10.あなたは自分の外見に関する不安が原因で自信を持てないことがありますか?
11. あなたは他人の外見と自分の外見を頻繁に比較しますか?
12.あなたは自分の外見に関する否定的な考えが頭から離れないことがありますか?
13.あなたは自分の外見に関する不安が原因で仕事や学業に集中できないことがありますか?
14.あなたは自分の外見に関する欠点を他人に尋ねることがありますか?
15.あなたは自分の外見を改善するために過度に運動したり食事制限をしたりしますか?
16.あなたは自分の外見に関する不安が原因で対人関係に問題が生じたことがありますか?
17.あなたは自分の外見に関する欠点が他人には理解されないと感じますか?
18.あなたは自分の外見に関する不安が原因でストレスを感じることがありますか?
19.あなたは自分の外見に関する欠点を隠すために特殊な方法を使用しますか?
20.あなたは自分の外見に関する不安が原因で写真を撮られるのを避けますか?
21.あなたは自分の外見に関する欠点を確認するために他人の意見を過度に求めますか?
22.あなたは自分の外見に関する不安が原因で公共の場所に行くのを避けることがありますか?
23.あなたは自分の外見に関する欠点を他人に説明しようとすることがありますか?
24.あなたは自分の外見に関する不安が原因で楽しみを感じられないことがありますか?
25.あなたは自分の外見に関する欠点を改善するために過度な努力をしますか?
26.あなたは自分の外見に関する不安が原因で睡眠障害を感じることがありますか?
27.あなたは自分の外見に関する欠点を他人から指摘されたと感じることがありますか?
28.あなたは自分の外見に関する不安が原因で他人と目を合わせるのを避けることがありますか?
29.あなたは自分の外見に関する不安が原因で社交的な場面で緊張することがありますか?
30.あなたは自分の外見に関する不安が原因で自分を孤立させることがありますか?
醜形恐怖症/身体醜形症害 のセルフチェックリスト30問

このセルフチェックリストは、あくまで自己評価の一助として提供されています。多くの質問に「はい」と答えた場合、身体醜形症の可能性があるため、専門家の助けを求めることをお勧めします。

Phillips, K. A. (2005). The Broken Mirror: Understanding and Treating Body Dysmorphic Disorder. Oxford University Press.

Veale, D. (2004). Body dysmorphic disorder. Postgraduate Medical Journal, 80(940), 67-71.

Wilhelm, S., Phillips, K. A., Didie, E. R., Buhlmann, U., Greenberg, J. L., Fama, J. M., & Steketee, G. (2014). Modular cognitive-behavioral therapy for body dysmorphic disorder: A randomized controlled trial. Behavior Therapy, 45(3), 314-327.

Greenberg, J. L., Weingarden, H., & Wilhelm, S. (2016). The misunderstood role of disgust in body dysmorphic disorder. Clinical Psychology Review, 49, 74-86.

Grant, J. E., & Phillips, K. A. (2005). Is an obsessive-compulsive spectrum synonymous with obsessive-compulsive disorder? A review of the evidence. CNS Spectrums, 10(12), 982-989.

Buhlmann, U., Wilhelm, S., Glaesmer, H., & Rief, W. (2010). Independent validation of the Body Dysmorphic Disorder Severity Scale. Psychological Assessment, 22(2), 235-242.

McKay, D., Todaro, J., Neziroglu, F., Campisi, T., Moritz, E., & Yaryura-Tobias, J. A. (1997). Body dysmorphic disorder: A preliminary evaluation of treatment and maintenance using exposure with response prevention. Behaviour Research and Therapy, 35(1), 67-70.

Rosen, J. C., & Ramirez, E. (1998). A comparison of eating disorders and body dysmorphic disorder on body image and psychological adjustment. Journal of Psychosomatic Research, 44(4), 441-449.

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎・大野裕監修/2021医学書院標準精神 尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院

目次