ヒプノセラピーは年齢退行や前世・悲嘆・分身・インナーファミリー・GIFT催眠療法で生きづらさの解消や心の充足を促す
ヒプノセラピーの概要は、催眠状態を誘発することで、患者の無意識にアプローチし悩みや問題の根本原因を明らかにすることです。深くリラックスしていて変性意識状態(意識はある程度保たれたまま)で外部刺激に敏感になり、内面の想像力や感覚が活性化します。ヒプノセラピーでは、この催眠状態を利用して、患者が自己暗示やイメージングを行い、心理的・身体的な問題を解決することを目指します。
歴史
ヒプノセラピーは、催眠状態を利用して患者の心理的・身体的な問題を解決する治療法です。ヒプノセラピーの歴史は古く、古代エジプトやギリシャでも催眠状態を利用した治療が行われていたとされています。しかし、現代のヒプノセラピーは、18世紀にドイツの医師であるフランツ・アントン・メスメルによって始められた「動物磁気療法」を起源として、その後19世紀には、英国のジェームズ・ブレイド、フランスのアンブロワーズ・リヴィエールらがヒプノセラピーの先駆者として活躍し、20世紀に入ると、アメリカのミルトン・エリクソンやデイヴィッド・エルマンなどの医師によって現代のヒプノセラピーが確立されました。
安全性と効果は
ヒプノセラピーの治療としての有効性は、疾患や抱える問題の種類によって異なります。例えば、喫煙や過食症などの習慣改善やうつ病、不安障害などの精神疾患においてもヒプノセラピーが効果的であるとされています。しかし、ヒプノセラピーが効果的な場合でも、治療の有効性には患者の協力や治療者の技術などが重要な要素となります。また、ヒプノセラピーにはいくつかのリスクが考えられます。例えば、催眠状態によって患者が現実感を失ったり、不適切な自己暗示を受けた場合、思わぬ結果を招くことがあります。また、催眠状態を誘発するために言葉などの誘導で患者にストレスや不快感を与えることがあるため、過去のトラウマや心的外傷のある方には注意が必要です。
一方でヒプノセラピーは、一般的には安全で非侵襲的な治療法であり、薬剤治療に比べて副作用や依存性のリスクが低いとされて、患者自身が問題の解決に向けた自己暗示を受けることができるため、自己効力感を高める効果が期待できます。
治療の確立度や有効性については、現在も研究が進められていますが、個人差や治療者のスキルなどによって結果が異なるため、一概に評価することは難しいですが、近年では、脳波や神経科学の観点から、ヒプノセラピーが脳の機能に影響を与えることが明らかにされ、その生理的な基盤が解明されつつあります。
総合すると、ヒプノセラピーは適切な環境下で正しく行われる場合、心理的・身体的な問題の解決に有効であることが示唆されています。しかし、治療を受ける前には適切な治療者を選ぶことや、治療のリスクや効果についての理解が重要となります。
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トラウマセラピーとしての催眠療法
トラウマセラピーの中でも、催眠療法を用いたアプローチが一般的に行われます。催眠療法を行うことで、トラウマ体験に対する心の防衛機制を緩和し、トラウマを取り巻く情報や感情にアクセスしやすくすることができます。催眠状態(変性意識状態:意識はある程度保たれたまま)に陥ることで意識的に制御することが難しくなり、潜在意識の深い層にアクセスしやすくなります。
催眠療法においてトラウマ体験を思い出すためには、トラウマ体験に関連する情景や感覚をイメージさせ、トラウマ体験につながる記憶や感情にアクセスするように誘導します。また、トラウマ体験によって引き起こされた強い感情を取り払うために、誘導下での感情解放や自己再構築を促します。
催眠療法を用いたトラウマセラピーによって、トラウマ体験による心の傷を癒すことができるとされていて、トラウマ体験によって引き起こされる不安や恐怖、怒りなどの感情を取り払い、心の安定を取り戻すことで、日常生活でのストレス耐性が向上することが期待されます。ただし、トラウマ体験は深刻な精神疾患につながる可能性があるため、専門家による適切なケアが必要とされます。
年齢退行療法(Age Regression Therapy)
年齢退行療法は、過去のトラウマや心的外傷を取り除くために患者を催眠状態に誘導して、過去の記憶や体験に戻り、それらを再び経験で新たな考えや体験の終了などで解決しようとする心理療法です。
一般的には、治療者は患者にリラックスした状態を作り出すために、ゆっくりとした言葉や映像、音楽などを使用し、深い呼吸を促します。そして、患者が催眠状態に入ったら、治療者は過去のトラウマや心的外傷が発生した時期や場面、感情、感覚を尋ね、その時代に戻しそれらを再び経験させます。
年齢退行療法は、過去のトラウマや心的外傷を取り除くための効果に期待が持て、治療後は過去の出来事を理解し、解決することで精神的な回復を促進することができます。
ただし、年齢退行療法にはいくつかのリスクがあります。例えば、患者が過去の出来事に強い感情的反応を示し、再びトラウマや心的外傷にさらされる可能性があることや、患者が治療者に依存する傾向があるため、治療の中断や終了後に反応が強くなる可能性もあります。
そのため、年齢退行療法を行う場合は、経験豊富な治療者を選び慎重かつ安全な治療計画を立てることが重要です。また、治療の前に治療のリスクと利益について十分に話し合い、患者が理解し同意したうえで治療に入ります。
年齢退行療法は、幼少期の出来事に焦点を当て、その出来事が引き起こしたトラウマや生きづらさを克服することを目的としています。次に、年齢退行療法の一般的な誘導法の手順を紹介します。
- ● 概要
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年齢退行療法は、催眠状態においてクライエントの意識を過去の記憶や年齢レベルに戻すことを目的とした技法です。これは、過去の感情的な出来事やトラウマに「再アクセス」し、理解・再解釈・癒しを促すために用いられます。
- ● 方法
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- クライエントを催眠誘導によってリラックス状態に導く。
- 「今、何歳に感じる?」「どこにいる?」などの問いかけを使い、記憶の場面に意識をフォーカスさせる。
- 幼少期や特定の体験(例:いじめ、喪失、親からの否定)に戻ることで、当時の未処理の感情を再体験・再統合する。
- エリクソンは「暗示を通しての間接的な退行」を使い、デイヴィッド・エルマンは「迅速かつ直接的な退行」を重視したと言われます。
- ● 臨床的留意点
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- PTSDや解離傾向のあるクライエントには慎重な取り扱いが必要です。
- 記憶は変容しうるため、虚偽記憶(false memory)のリスクにも注意。
治療者は患者にリラックスした状態を作り出すために、リラックスした音楽を流すことや、深呼吸法を行います。
治療者は患者が幼児期の記憶を思い出すように指示します。患者はできる限り詳細に、自分が幼児だった頃の出来事を思い出します。
患者が思い出した出来事を詳細に説明するように指示します。場合によっては物語を書いたり、絵を描いたりするように思い出すことを促したりします。
治療者は、患者が再生した出来事に基づいて治療を進めるために、患者が再生した出来事を細かく追体験させ、その時感じた感情や思考を再現させます。治療者は、その時の感情や思考が患者の生きづらさやトラウマの原因となっている可能性があることを説明します。
治療者は、患者が再生した出来事に基づいた感情とは違った見解を指示します。その見解の方法は、現在の患者自身が成長した大人の感覚として傍観することで、感じとれる感情や本当の真実が語る見解です。
例えば、その状況下で言えなかった事や理解して欲しかったことなどを記憶の中で再現します。
そして、その状況を大人の自分から傍観することで、幼少期の頃の悪い出来事と捉え続けた勘違いに気づくこともあります。
それは、幼少期には即していた防衛本能的認知が、現在にはそぐわないために生きづらさを感じていることが感じ取れたりするということになります。
傍観したことで、現在の自分のルーツとも言える心の核と向き合えることで、心の苦しさの原因がわかり問題解決に繋がることもあります。治療者は、それを解決するたに患者が過去のトラウマを乗り越え、現在の生活において健康的な行動をとれるように支援します。

インナーファミリーとインナーチャイルド
「インナーファミリー」と「インナーチャイルド」は、心理療法において使われる概念であり、人格を複数の部分に分け、それらの部分が対話することで問題解決を行うアプローチです。
催眠療法においては、これらの概念を用いて患者が自分自身の内面の部分と対話し、問題の原因を解明し癒しを促すことを目的としています。
具体的には、患者を催眠状態に誘導し、イメージングを通じて自分の内面の部分である「インナーファミリー」や「インナーチャイルド」と対話することを促します。インナーファミリーとは、自分自身の内面にある、親、子供、成人のような複数の人格部分を指し、それぞれが特定の役割や特性を持っているとされます。
また、インナーチャイルドとは、自分の内面にある子供時代の自分自身を指し、幼児期や子供時代のトラウマや悲しみなどが現在の問題や不安の原因となっていることがあります。
催眠療法においては、患者が自分自身の内面の部分と対話することで、トラウマや心の傷を癒すことを目指しています。また、内面の対話を通じて自己認識を深め、自分の心理状態を理解することができます。このように、インナーファミリーやインナーチャイルドとの対話を通じて、クライアントが自己理解を深め、心の傷を癒すことができるとされています。
インナーファミリー(Inner Family Therapy)
- ● 概要
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「インナーファミリー」とは、心の中に複数の内的な“人格”や“役割”が存在しているという仮説に基づくアプローチです。これは「内的家族システム(IFS: Internal Family Systems)」とも関連があり、自己の中のさまざまな「部分(parts)」が相互に影響し合っていると見なします。
- ● 例:
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- 「批判する親の声(内なる親)」
- 「甘えたい子どもの部分(内なる子ども)」
- 「世話好きで無理をする自分(内なる世話人)」など。
- ● 方法
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- 催眠状態で、それぞれの“声”や“部分”に意識を向け、対話や調停を行う。
- それぞれのパーツの役割や動機を探り、対立していた部分の統合や再調整を促す。
- ● 臨床的利点
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- 自己理解が深まり、自己批判や内的葛藤の緩和が期待される。
- トラウマ的記憶にアプローチせずとも、安全に内面を調整できるケースが多い。
インナーチャイルド療法(Inner Child Therapy)
- ● 概要
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「インナーチャイルド」は、過去の経験(特に傷ついた幼少期)から形成された“内なる子ども”の感情的な側面を指します。催眠療法では、この“子ども”と対話し、癒しや再養育を行うことが目的です。
- ● 方法
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- 催眠状態で、「幼い自分の姿」「感情」「声」を想起する。
- クライエント自身(あるいは現在の“自我”)が、その子どもに話しかけ、理解し、抱きしめたりするイメージを通して、癒しと安心感を提供する。
- ときに、“理想的な養育者”や“未来の自分”が登場し、再体験の場に関与することもある。
- ● 臨床的意義
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- 未処理の感情(怒り、悲しみ、孤独など)へのアクセスがしやすくなる。
- 自己受容や自尊感情の回復に大きな効果が期待される。
年齢退行とインナーチャイルドの違い
インナーチャイルドと年齢退行の催眠療法は似たようなアプローチを持っていますが、微妙な違いがあります。
インナーチャイルドは、過去の幼少期や子供時代に体験した出来事が現在の問題や行動に影響を与えているという考え方に基づいています。そのため、インナーチャイルド療法では、患者が自分自身の内部にある幼い自己像(インナーチャイルド)と対話し、幼い自己像が抱える感情や問題を理解し、癒しを促すことを目的としています。
一方、年齢退行の催眠療法は、トラウマなどの深刻な問題が過去の幼少期の出来事から現れていると仮定し、クライアントを催眠状態に誘導し、幼い自己像に戻りその時の感情や体験を再現することで、トラウマを解消しようとするものです。
つまり、両方のアプローチは幼い自己像に対するアクセスを通じて問題やトラウマを解決することを目的としていますが、インナーチャイルド療法はより広い範囲の問題に対して適用できる一方、年齢退行療法は、主に深刻なトラウマに対して用いられることが多くなります。
アプローチ | 対象 | 方法 | 主な目的 |
年齢退行療法 | 特定の年齢・記憶 | 回想と再体験 | トラウマの再処理・再解釈 |
インナーファミリー | 内的“役割”や“声” | パーツとの対話 | 内的葛藤の調整・統合 |
インナーチャイルド | 幼少期の自己 | 癒しと再養育 | 自己受容・感情の癒し |
前世療法(Past Life Regression Therapy)
前世療法は、人が今抱えている悩みや問題が前世での出来事に起因する可能性があるという考えに基づいた療法です。この療法では、催眠状態に導かれた患者が前世に関する体験を思い出し、その経験から洞察を得ることで現在の悩みや問題を解決することを目的としています。
前世療法の具体的な手順は、まず患者を催眠状態に誘導します。その後、患者が前世の体験を思い出すように導きます。この時、治療者が患者に質問をし、その回答に基づいて物語を構成します。物語の中で、患者は前世の出来事を再現することで、前世での体験を思い出します。その後、治療者が患者に洞察を促し、現在の悩みや問題に対する新たな視点を得るように導きます。
前世療法の効果については科学的には証明されていません。しかし、患者にとっては前世での体験を思い出すことが、現在の悩みや問題に対して新たな視点を得るきっかけになることがあります。また、前世療法を通じて、人生に対する新たな意味を見出すことができるという報告もあります。ただし、前世療法は個人差が大きく、患者によっては思い出せない場合や、想像や妄想が入り込むことがあるため注意が必要です。
- ● 概要
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前世療法とは、催眠状態を用いてクライエントを「前世(過去世)に退行させる」ことを目的としたアプローチです。これは伝統的な心理学というよりスピリチュアル・トランスパーソナル心理学に位置づけられる領域で、米国精神科医ブライアン・L・ワイス(『前世療法』著者)などが代表的実践者です。
- ● 方法
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- 催眠誘導によって深いリラクゼーション状態に導いた後、「今の人生よりもっと前の時間へ…」という暗示で、クライエントの意識を“前世”へと向ける。
- クライエントが見たヴィジョンや感じたイメージをもとに、「何が起きているか」「誰が関係しているか」などを探る。
- 前世での出来事が「現在の生きづらさ」「不安」「人間関係パターン」などとつながっている、という理解を得ていく。
- ● 臨床的効果(とされるもの)
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- 現在の苦しみに「魂のレベルで意味づけ」がなされ、深い納得感を得られる。
- 不明瞭だった感情の起源が理解され、癒しや安心が得られる。
- 喪失や死、恐れの意味が再解釈されることで、死生観の変容が起こることもある。
- ● 留意点
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- クライエントにスピリチュアル的信念がある場合に限定して使用すべき。
- 「前世の記憶」=「事実」ではなく、「象徴的表現」として扱うのが臨床的には安全。
- 統合失調症や解離性障害など精神病圏では禁忌とされる。

悲嘆療法(Grief Therapy in Hypnosis)
- ● 概要
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悲嘆療法とは、喪失(死別・離別・流産・老化・機能喪失など)によって生じた**深い悲しみ(grief)**に対して、催眠を用いて感情の処理と癒しを行う療法です。
- ● 対象となる喪失
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- 死別(家族・ペット・恋人など)
- 離婚・破局
- 流産・死産
- 老化・機能障害による自己喪失
- 理想や夢の喪失
- ● 方法
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- 催眠下で「失った相手との再会」のイメージを誘導。
- 実際に「会話」「謝罪」「感謝」「抱擁」などをイメージ上で行う。
- 相手からのメッセージ(内的投影)を受け取り、感情の完了と癒しを促進。
- 「記憶を守る」「新しい意味づけをする」「これからの一歩を踏み出す」などの統合ワークへ。
- ● 臨床的意義
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- 抑圧されていた悲嘆を安全な場で解放できる。
- 「言えなかったこと」「聞けなかったこと」を補完することで、感情の“未完了”を終わらせる。
- 「あの人がいない人生にどう意味を持たせるか?」という実存的課題に触れることができる。
- ● 注意点
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- 強いトラウマ反応がある場合は段階的アプローチが必要。
- 精神的な準備が整っていないと、再体験が逆効果になる可能性あり。
前世療法と悲嘆療法
悲嘆療法は、愛する人をなくした喪失感などから立ち直れないような場合、催眠下で故人との魂のコミュニケーションを行うことで、悲しみや喪失感を癒す療法です。一方、前世療法は過去の人生での体験を思い出すことによって、現在の問題を解決することを目的とした療法です。
前世療法では、患者が深い催眠状態に入った状態で自分の前世の記憶を思い出し、その体験から学びや気づきを得ることを目指します。この療法の根拠となる仮説は、人間の魂は肉体の死後も存在し転生を繰り返すことで魂が成長していくというものです。
前世療法は、現在の問題に対して深い洞察力を与えることができるため、自己認識や自己啓発、人生の目的や意味を見つけるための手段として利用されることがあります。また、現在の問題が過去世での出来事に関連している場合、その出来事を思い出すことでトラウマや不安を解消することができるとされています。
比較まとめ
アプローチ | 対象 | 目的 | 催眠内での体験 | 特徴 |
前世療法 | 前世の記憶(象徴的) | 現在の苦しみの根源理解 | 前世の出来事に没入し体験 | スピリチュアルな意味づけを重視 |
悲嘆療法 | 喪失した存在 | 悲しみの処理・感情の統合 | 亡き人との対話や再会 | 実存的・感情的統合を目指す |
GIFT療法(Guilt, Identity, Forgiveness Therapy)
GIFTとは、「Guided Imagery and Focusary Technic」という言葉の頭文字を取ったもので、イメージ力を使って特定の課題に対処するための催眠療法です。恐れや不安、強迫行動に対処するために用いられます。
GIFT療法では、患者さんに催眠状態になってもらい、イメージやイメージ的な言葉を使って課題に対処するイメージングを行います。イメージングとは、具体的なシチュエーションを思い浮かべ、感覚を想像することで心理的な変化を促す技法のことです。
具体的な手順としては、催眠状態に誘導した後、患者さんが感じる不安や恐れ、強迫行動などの問題について具体的なシーンを想像させます。そして、その問題に対して解決策をイメージし、それを具体的なイメージやイメージ的な言葉で表現させます。
GIFT療法の効果としては、自己免疫機能の向上、不安やストレスの軽減、睡眠の改善、血圧の低下などが報告されています。ただし、効果には個人差があり結果が得られないこともあるとされています。また、正しく実施しない場合、逆効果となる可能性があるため専門家の指導の下で行うことが推奨されています。
- ● 概要
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GIFT療法とは、主に「罪悪感」「自己否定」「許し」といったテーマを扱う心理療法のひとつで、名前は以下の頭文字に由来します。
- Guilt(罪悪感)
- Identity(アイデンティティ)
- Forgiveness(許し)
- Therapy(療法)
これは正式に確立された標準技法ではなく、実務家が名づけて用いている「統合的セラピースタイル」の一種であり、特に罪悪感や自己責めを長期に抱えているクライエントに向いています。
- ● 臨床的意図
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- 罪悪感を見つめ、責任の範囲を明確にし直す。
- 自己の価値やアイデンティティを再構築する。
- 「自分を許す」「他者を許す」プロセスを通して、心理的統合を目指す。
- ● 催眠的技法としての応用
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催眠下で次のような技法を行います。
- 罪悪感を象徴化:罪悪感を形や色、重さなどで表現。
- 対話的な許しのワーク:加害者/被害者の立場を交互に体験し、理解と統合を促進。
- アイデンティティの再定義:自分の価値や新しい自己像を形成。
- ● 使用されやすい場面
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- 虐待の加害者になった経験(親として、パートナーとして)
- 流産、中絶などの自己責任感を伴う喪失
- 親やきょうだいを「救えなかった」後悔
- 信念と現実の間での自己否定
分身催眠療法(パーツセラピー/分身ワーク)
分身催眠療法は、潜在意識の中で自分自身をいくつかの分身に分け、それぞれが問題を抱えた状態で登場させ、解決のための対話を行う催眠療法です。例えば、問題を引き起こしている分身、問題を解決しようとしている分身、話し合いのうえ解決させようとする調停する分身などを登場させて調和を図る方法です。
この療法の目的は、問題を引き起こしている内的な衝突や対立を解決することにあります。分身として自己の一部をイメージすることで、内面の複雑な問題や感情を視覚化し認識することができます。その上で、自分自身が持っている潜在能力を引き出し、解決策を見出すことができるようになります。
分身催眠療法は、トラウマや恐怖症、強迫症、不安症など、さまざまな心理的問題に適用されます。この療法によって、自己の内面にある問題に向き合い自己成長や問題解決につながるとされています。ただし、分身催眠療法は催眠療法の中でも比較的高度な技術を必要とするため、専門的な知識と経験が必要とされます。
- ● 概要
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分身催眠療法(Parts Hypnotherapy)は、「自己の中に異なる“部分(パーツ)”が存在する」というモデルに基づき、催眠状態でそれらの“内的登場人物”と対話する技法です。
- ● パーツセラピーの基盤
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- 「一部は休みたいと思っているが、もう一部は努力を強いている」など、矛盾する内的欲求があるときに、それぞれのパーツを可視化・言語化する。
- それぞれのパーツが果たしている“役割”を認め、相互理解と再統合を促す。
- ● 技法の例:ダブルイメージ法(Double Image Technique)
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- 自分の中にいる2つの部分(例:怒っている自分と優しくありたい自分)を、椅子やイメージ上でそれぞれ「分身」として視覚化。
- 一人称視点で入れ替わりながら、内的対話を行う。
- 目的は「葛藤の解消」または「新しい統合された自己」の発見。
- ● 使用例
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- 禁煙や過食などの意志と衝動の対立
- 親からの支配に反抗する一方で、親に愛されたい自分がいる
- 「本当は泣きたい」のに「強くいなければ」と抑える自分
- ● インナーチャイルドやIFSとの違い
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- インナーチャイルドは特定の“幼少期の自分”に焦点を当てるのに対し、
- 分身催眠は年齢や人格を問わず多様な内的パーツすべてが対象。
GIFT療法と分身催眠療法
比較まとめ
アプローチ | 中心テーマ | 技法の特徴 | 主な効果 |
GIFT療法 | 罪悪感・許し・自己否定 | 象徴化、対話、再定義 | 自己受容、許し、癒し |
分身催眠療法 | 内的葛藤と統合 | 複数の内的パーツとの対話 | 意志統合・行動変容 |
催眠療法の評価は
催眠療法は、症状の改善や治癒に役立つことが示されているため、多くの専門家や患者によって有用な治療法と見なされています。ただし、催眠療法には個人差があり、全ての人に同じように効果的であるわけではありません。また、催眠療法は他の治療法と併用されることが多いため、その効果は個別の症例によって異なる場合があります。
催眠療法は、虚偽の思い出が作り出される可能性があることなど倫理的な問題や安全上の懸念が存在する場合があります。そのため、催眠療法を行う前には、専門家による正確な評価や適切なカウンセリングが必要です。
総合的に見て催眠療法は有用な治療法の一つであると言えますが、その効果や安全性については慎重に評価する必要があります。専門家の指導のもとで、個々の症状や状況に合わせて適切な治療法を選択することが重要です。