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分離不安症のエンプティチェア技法

目次

分離不安症にゲシュタルト療法のエンプティチェア技法を用いたセッションの解説

分離不安症は、本来は幼児期や児童期に見られることが多い不安障害ですが、幼少期の愛着の問題が影響し、成人になっても「見捨てられる不安」や「強い依存」が続く状態は大人の分離不安症です。愛着対象は、特にパートナーや親しい友人との関係において、分離への恐怖が強くなることが多く、離れることに強い恐怖や不安を感じ、日常生活に支障をきたす状態を指します。

分離不安症の症例:愛子さん(35歳)

愛子さん(35歳)は、一人っ子として母親と二人で育ちました。母親は仕事に忙しく、十分な時間を共に過ごすことは難しかったものの、厳しく接する一方で時折優しく抱きしめてくれることもありました。このため、愛子さんは母親に強く依存し、「見捨てられるのではないか」という不安を常に抱えながら成長しました。母親の愛情を求めるあまり、愛子さんは常に母親の機嫌を伺い、認められたいという気持ちが強まりました。

大人になった愛子さんは恋人を持つようになりましたが、彼は母親と似たような厳しく乱暴な性格でした。怒鳴られたり冷たくされたりすることもありましたが、それでも彼を手放すことができません。彼が離れてしまうことに耐えられないという恐怖から、たとえ辛い状況でも関係を続けています。

愛子さんは、自分の感情が鈍麻しているように感じることがあります。長年、母親や恋人に気を遣い続け、自分の本当の気持ちを抑えてきたためか、不安や寂しさを感じることはあっても、怒りや悲しみをはっきりと認識することができません。また、彼が離れてしまうのではないかと不安になり、頻繁に連絡を取ろうとしたり、相手の機嫌を取るために必要以上に尽くしてしまうこともあります。

仕事や友人関係においても、愛子さんは他者の評価を過剰に気にし、「嫌われたらどうしよう」「見放されたらどうしよう」という不安を抱えています。そのため、人と距離を縮めることができず、孤独感を感じながらも、自分から関係を築くことができません。

こうした愛子さんの状態は、分離不安症の特徴と一致しています。幼少期の不安定な愛着関係が影響し、大人になっても「見捨てられること」への強い恐怖が根深く残っています。その結果、不安を和らげるために依存的な対人関係を築き、感情の抑圧や過度な自己犠牲を続けることで、より生きづらさを感じるようになっているのです。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

エンプティチェアを用いた分離不安症のセッション

分離不安の背景には、幼少期の母親との関係が深く関わっているケースを外せません。特に、母親からの過保護・過干渉、拒絶、情緒的な不安定さなどが影響し、クライエントは大人になっても「母親がいないと不安」「見捨てられる恐怖」を抱え続けることがあります。

このような場合、ゲシュタルト療法の「エンプティチェア(空の椅子)」 を使うことで、未解決の感情を整理し、新しい視点を得る ことができます。

エンプティチェアとは?

エンプティチェア(空の椅子)は、目の前の空(から)の椅子に、対話したい相手をイメージして座らせる ことで、未解決の感情や葛藤を表現し、対話を通じて整理する 技法です。

  • 空の椅子に母親をイメージして座らせ、クライエントが母に向かって話す
  • 役割を交代し、母の視点でクライエント自身の言葉を受け止める
  • 感情を解放し、新たな気づきを得る

エンプティチェアを用いることで、クライエントが過去の母との関係を見直し、自分自身を受け入れるプロセス をサポートできます。このセッションを繰り返すことで、クライエントは徐々に「母がいなくても大丈夫」「私は私のままで価値がある」という安心感を持てるようになります。このことがパートナー間や友人関係に対しても新しい視点や気づきで接することができるようになります。

エンプティチェア・セッションの概要

期待される効果

  • 未解決の感情を整理できる
    • 母に言いたかったことを表現することで、抑圧していた感情が解放される。
  • 母親への新しい理解が生まれる
    • 「母も完璧ではなかった」と気づき、母との関係を少し客観的に見られるようになる。
  • 自己承認の感覚が育つ
    • 「母に認められなくても、自分で自分を認められる」感覚を強化できる。
  • 分離不安の軽減につながる
    • 「母がいないと不安」という感覚が、「私は私の人生を生きる」という方向へシフトする。

セラピストの注意点

  • 感情が強くなりすぎた場合はペースを調整する
    • クライエントが激しい怒りや悲しみに圧倒されないようにする。
  • 無理に「許す」方向に進めない
    • 「母親を理解すべき」と押しつけると、かえってクライエントの抵抗を生む。
  • 自己肯定の方向に導く
    • 最終的には「私は私でよい」という自己承認に繋げることが重要。
STEP
セッションの導入
  • セラピスト:「今日は、お母さんとの関係について話してみましょう。あなたの前の椅子に、お母さんが座っているとイメージしてください。どんな気持ちになりますか?」
  • クライエント:「緊張します…。母が私をじっと見ている気がして、責められそうです。」

この時点でクライエントの感情を言語化することが大切。

STEP
クライエントが母親に話しかける
  • セラピスト:「今の気持ちのまま、お母さんに話しかけてみてください。」
  • クライエント:「お母さん、私はずっとあなたに認めてもらいたかった…。でも、いつも『あなたはダメね』『もっとちゃんとしなさい』って怒られてばかりだった。」

クライエントが幼少期に抑えていた感情を言葉にできるようサポートする。
「母親の厳しさ」や「見捨てられ不安」に焦点を当てる。

STEP
役割交代(母親の立場に座る)
  • セラピスト:「今度は、あなたがお母さんの椅子に座って、お母さんの視点で話してみましょう。」
  • クライエント(母役):「私はあなたをちゃんと育てようと頑張っていたのよ。あなたが失敗しないように、厳しくしていたの。」

クライエントに母親の視点を体験させることで、新しい理解を促す。
ただし、「母親を正当化する」のではなく、クライエントが納得できる形で進める。

STEP
再びクライエント自身に戻る
  • セラピスト:「もう一度、あなた自身の椅子に戻ってください。お母さんの言葉を聞いて、どんな気持ちになりますか?」
  • クライエント:「母も必死だったのはわかるけど、私はただ、愛されていると感じたかった…。厳しさよりも、優しくしてほしかった…。」

クライエントが「自分の本当の感情」に気づくよう促す。
母を理解しつつ、「でも私は傷ついていた」という両面を認める。

STEP
新しい視点を得る
  • セラピスト:「今、あなたが母に伝えたいことは何ですか?」
  • クライエント:「お母さん…私はあなたに認めてもらえなくても、もう自分で自分を認めてあげたい。私は私で大丈夫だって、思いたい。」

クライエントが「自分自身の力で安心感を得る」ステップに進める。
「母からの承認」ではなく、「自分が自分を受け入れる」ことにフォーカスする。

STEP
セッションの統合
  • セラピスト:「今、どんな気持ちですか?」
  • クライエント:「少し、気持ちが楽になった気がします。母に責められている感覚が少し減りました。」

セッションを振り返り、気づきを言語化する。
クライエントが「母親との関係をどう捉え直すか」を考える。

詳しいエンプティチェアセッション

STEP
セッションの導入(エンプティチェアの準備)

このステップでは、クライエントが安心して感情を表現できるような環境を整え、エンプティチェアの目的や方法を説明し、母親との関係をイメージさせる ことを重視します。

  • エンプティチェアのセッション導入では、クライエントの感情に寄り添いながら、母親との対話の準備を整えることが大切です。
  • 「母をイメージする」→「感情を整理する」→「母に向かって話す準備をする」 という流れで進めると、クライエントは自然に心の内を表現しやすくなります。
  • セラピストは「無理をさせない」「安心感を与える」「クライエントのペースを尊重する」ことを意識しながら進めると、より深い気づきへとつながります。
セッション
セッションの目的を説明する
  • セラピスト:「今日は、お母さんとの関係について少し掘り下げてみたいと思いますが、よろしいですか?」
  • クライエント:「はい…。母との関係は、今もすごく影響している気がします。」
  • セラピスト:「そうですね。これまでのお話を聞いていても、お母さんとの関係が今の不安や生きづらさにつながっているように感じます。今日は、ゲシュタルト療法の「エンプティチェア」 という方法を使って、あなたの気持ちを整理していきましょう。」

クライエントに「エンプティチェア」の目的を簡単に説明し、安心して取り組めるようにする。
「強制ではなく、やってみたいかどうか」も確認する。

セッション
エンプティチェアの説明を行う
  • セラピスト:「目の前の椅子を見てください。ここに、あなたのお母さんが座っていると想像してください。」
  • クライエント:「……母がそこにいるように感じます。」
  • セラピスト:「とても良いですね。この椅子は、あなたが今まで伝えたかったことを伝えるための場所です。この椅子の母に向かって、普段言えないことを言ってみましょう。 どんな言葉でも構いません。」

クライエントに「母をイメージする」時間をしっかり取る。
抵抗がある場合は、「もし目の前にいたら…」と間接的に誘導する。
「母をイメージしづらい」と言う場合は、母の特徴や記憶を少し話してもらい、視覚化しやすくする。

セッション
クライエントの感情を探る
  • セラピスト:「今、どんな気持ちですか?」
  • クライエント:「なんだか、胸が苦しいです…。母がそこにいると想像すると、怒られそうな気がします。」
  • セラピスト:「なるほど。怒られそうな感じがするんですね。では、その気持ちを少し味わってみましょう。『お母さんがそこにいる』と感じると、どんな言葉が浮かんできますか?」
  • クライエント:「…『私を否定しないで』って言いたいです。」

クライエントの「今の感情」をしっかり言葉にしてもらう。
「どんな言葉が浮かぶ?」とやさしく誘導し、自然な形で感情表現を促す。
クライエントが強い不安を感じた場合、「そのままで大丈夫ですよ」「安心して、ゆっくり話しましょう」 などと心理的安全を確保する。

セッション
母との関係をイメージさせる
  • セラピスト:「お母さんとの関係を思い出すと、どんな場面が浮かびますか?」
  • クライエント:「子どもの頃、宿題をしていて、ちょっと間違えたらすぐに怒られました。『なんでこんな簡単なことができないの!』って…。私はすごく怖くて、泣きそうになったのを覚えています。」
  • セラピスト:「その時のあなたの気持ちは?」
  • クライエント:「『私のこと、嫌いなの?』って思っていました。でも、そんなこと言ったらもっと怒られそうで、黙っていました。」
  • セラピスト:「なるほど。では、今この椅子にいるお母さんに、その時のあなたの気持ちを伝えてみませんか?」

具体的なエピソードを思い出させることで、感情を明確にする。
「どんな気持ちだった?」と質問し、クライエントが自己理解を深められるよう促す。
「今、この椅子の母に伝えてみましょう」と次のステップにつなげる。

STEP
クライエントが母親に話しかける(エンプティチェア)

このステップでは、クライエントが空の椅子(エンプティチェア)にいる母親に話しかけることで、抑圧していた感情を表出し、自己理解を深める ことを目指します。感情表現を促しながらも、クライエントのペースを尊重し、安心感を保つことが重要です。

  • クライエントが母に向かって 本音を話すことで、抑圧されていた感情を解放 できる。
  • 「母親の反応を想像する」 ことで、クライエントの認知が広がり、新しい気づきを得られる。
  • セラピストは、安心感を提供しながら、クライエントが自然に感情を表現できるように導く

    このプロセスを経ることで、クライエントは母親への見方を少しずつ変え、「過去の自分を癒す」第一歩を踏み出せます。
セッション
クライエントが母親に向かって話し始める
  • セラピスト:「それでは、目の前の椅子にいるお母さんに向かって、心の中にあることを話してみましょう。どんな言葉でも大丈夫ですよ。」
  • クライエント:「……お母さん……私はずっと、お母さんに認めてもらいたかった……。」(少し間をおく)
  • セラピスト:「よく言えましたね。その気持ちを、もう少し続けてみましょうか。」

クライエントの話し始めをサポートするため、シンプルな質問や励ましの言葉を入れる
沈黙があっても焦らず待つ。クライエントが自然に感情を出せるようにする。
クライエントが話し始めたら、遮らずにしっかり聞く。

セッション
クライエントが母親に対する本音を話す
  • クライエント:「お母さんは、いつも私のことを否定していたよね…。宿題で間違えたときも、『どうしてこんな簡単なことができないの』って怒鳴った。」
  • セラピスト:「そのとき、あなたはどう感じましたか?」
  • クライエント:「怖かった。お母さんに嫌われたくなかったから、必死で頑張った。でも…どれだけ頑張っても、褒めてくれなかった…。」
  • セラピスト:「なるほど…『どれだけ頑張っても、褒めてもらえなかった』という気持ちが強く残っているんですね。」

クライエントが 母親への本音を話せるように、気持ちを整理するサポート をする。
「そのとき、どう感じましたか?」と質問し、感情を言語化できるようにする。
クライエントが言葉に詰まったら、「それをお母さんに伝えてみましょう」と促す。

セッション
クライエントの感情が高まる
  • クライエント:「私は…お母さんに愛されたかった!もっと『頑張ったね』って言ってほしかったのに…!」(涙ぐむ)
  • セラピスト:「その気持ちを、お母さんに直接伝えてみましょう。目の前のお母さんに向かって、『私はこう感じていた』と伝えてください。」
  • クライエント:「……お母さん、私はずっと、あなたに愛されたかった!認めてほしかった!でも、お母さんはいつも怒ってばかりで…私は怖かった……。」

感情が込み上げたら、「それをそのまま伝えてみましょう」 と促す。
クライエントが泣き出した場合、無理に止めず、「大丈夫ですよ、そのままで」 と見守る。
ただし、感情が極端に高まりすぎた場合は、深呼吸を促し、少し落ち着かせる。

セッション
セラピストがクライエントの気持ちを整理する
  • セラピスト:「あなたは、お母さんに怒られるたびに、『私のこと嫌いなの?』と感じていたんですね。」
  • クライエント:「……うん。私はお母さんに嫌われたくなかった。でも、どう頑張っても、愛されている感じがしなかった。」
  • セラピスト:「『愛されている感じがしなかった』……それは、とても悲しいことですよね。その悲しみを、お母さんに伝えてみませんか?」
  • クライエント:「……お母さん、私はずっと、お母さんの愛情が欲しかった……でも、どうしても感じられなかった……。」

クライエントが自分の感情をより深く理解できるように、「あなたは○○と感じていたんですね」と繰り返し、整理をサポートする
クライエントの言葉を少し言い換えて、「ああ、私はこう感じていたんだ」と気づけるようにする
必要に応じて、「それをお母さんに伝えてみて」と促す。

セッション
クライエントが母からの応答を想像する

セラピスト:「今、お母さんはあなたの言葉を聞きました。お母さんは、どんな表情をしていそうですか?」
クライエント:「……ちょっと困った顔をしている気がする。」
セラピスト:「なるほど。では、お母さんは今、どんな言葉を返してきそうですか?」
クライエント:「『そんなつもりじゃなかった』って言いそう…。」

クライエントに、母親の反応を 「想像」 させることで、新しい視点を得る手助けをする。
「お母さんはどんな顔をしていそう?」「どんな言葉を言いそう?」と質問し、クライエントの内面を深める。
クライエントが母の反応を受け入れられない場合は、「でも、あなたはこう感じていたんですね」と再確認する。

セッション
クライエントの気づきを確認する

セラピスト:「この対話を通して、何か気づいたことはありますか?」
クライエント:「私は…ずっと、母が怖いだけだと思っていたけど、本当はただ、愛されたかったんだなって…。」
セラピスト:「とても大切な気づきですね。」
クライエント:「それに、お母さんも、もしかしたら私を否定するつもりはなかったのかもしれない…。」

クライエントが 「本当の感情」 に気づくことが、このセッションの大きな目的。
気づきが深まったら、「それを大切にしてくださいね」と伝え、セッションを締めくくる準備をする。

STEP
役割交代(母親の立場に座る)

エンプティチェア・テクニックの役割交代のステップでは、クライエントが「母親の立場」に座り、母親の視点からクライエント(子どもの頃の自分)に対して言葉を発することで、母親の内面や動機に気づくプロセスを促します。

この段階は、クライエントの視野を広げ、母親との関係に新たな理解をもたらし、感情の整理や和解の手がかりを見つけることを目的としています。

  • クライエントが母親の視点を体験することで、新たな理解が生まれる
  • 母親の「意図」と、クライエントが「感じたこと」の違いに気づくことで、感情の整理が進む
  • クライエントが母親を「許す」ことが目的ではなく、関係性に対する認識を深めることが重要

    このプロセスを経ることで、クライエントは「母親との関係を再解釈する」ことができ、分離不安や過去の傷つきに対する新しい視点を得ることができます。
セッション
役割交代の説明と椅子の移動

セラピスト:「今度は、あなたが『お母さん』の立場になってみましょう。今の椅子から、向かいの椅子に座ってみてください。」
クライエント(少し戸惑いながら椅子を移動する):「……はい。」
セラピスト:「今、あなたはお母さんの椅子に座っています。この視点から、さっきのあなた(子どもの頃の自分)に対して、お母さんとして返事をしてみてください。」

クライエントが役割交代に心理的抵抗を感じる場合は、無理に進めず、安心感を与える
「どんな言葉でも大丈夫です」と伝え、自由に話すことを促す
クライエントが椅子を移動することで、実際に「役割が変わる」感覚を強める。

セッション
クライエントが母親の立場で話す

セラピスト:「では、お母さんとして、さっきのあなたの言葉を聞いたとき、どんな気持ちになりますか?」
クライエント(母親の立場で):「……そんなつもりじゃなかった……。」(少し考え込む)
セラピスト:「『そんなつもりじゃなかった』とは、どういう意味でしょうか?」
クライエント:「私はただ、あなたにもっとしっかりしてほしかっただけなの。あなたが困らないようにって思って、厳しくしたのよ。」

クライエントが母親の立場から発言しやすいように、「どんな気持ちですか?」と具体的に尋ねる
クライエントが「お母さんはどう思っていたんだろう?」と考え、母親の内面を理解するきっかけを作る。
クライエントが母親を強く批判する場合でも、無理に「理解」させようとせず、その感情を尊重する。

セッション
母親の視点を深める

セラピスト:「お母さんとして、子どもの頃のあなたに伝えたいことはありますか?」

クライエント(母親の立場で):「……私は、あなたのことをちゃんと愛していた。でも、どうやって愛情を伝えたらいいかわからなかったのよ。」

セラピスト:「なるほど。お母さんも、どう接すればいいかわからなかったんですね。」

クライエント:「そう…私も、母親として完璧じゃなかったの。」

母親の視点をより深められるように、質問を投げかける(例:「お母さんはどんな気持ちでしたか?」)。
クライエントが「母親も完璧ではなかった」と気づけることで、新しい理解や共感が生まれる可能性がある。
ただし、クライエントが「やっぱり母は許せない」と感じる場合、それも受け止める。

セッション
役割交代を通じた新たな気づき

セラピスト:「今、お母さんの立場からあなた(子どもの頃の自分)を見て、どんなことを感じますか?」

クライエント:「……私は、あなたのことをとても心配していたの。でも、それを素直に言えなくて、厳しくしちゃった……。」

セラピスト:「心配していたけれど、厳しさという形でしか伝えられなかったんですね。」

クライエント:「……うん。」

「お母さんは、実際にはどんな気持ちだったと思いますか?」と質問し、深い理解を促す
クライエントが母親の立場で発言することで、「母親の意図」と「自分が受け取った印象」の違いに気づくことができる。
母親の意図を理解することが「許し」や「感情の整理」につながることもあるが、無理に和解を促す必要はない。

セッション
もう一度クライエントの立場に戻る

セラピスト:「では、元の椅子に戻りましょう。今度は、子どもの頃のあなたの立場です。」

クライエント(椅子を移動する):「……はい。」

セラピスト:「今のやりとりを聞いて、どんなことを感じましたか?」

クライエト:「お母さんも、どうしたらいいのかわからなかったんだなって思いました……。」

セラピスト:「その気づきを、今のあなたにとってどんな意味があると思いますか?」

クライエント:「……私、お母さんに『愛されなかった』って思い込んでいたけど、お母さんなりに私を心配していたのかもしれない……。」

クライエントの気づきを大切にし、整理するサポートをする。
「その気づきは、今のあなたにどんな影響を与えそうですか?」と問いかけ、意味を深める。
クライエントが「母親も悩んでいた」と気づけた場合、感情の整理が進む可能性がある。

STEP
再びクライエント自身に戻る

このステップでは、クライエントが再び自分自身の立場に戻り、役割交代によって得た新しい理解をどのように感じたかを探ります。また、母親との関係に関する感情や思考を整理し、その後の心情にどのような変化があったのかを確認します。このセッションでは、感情を整理し、クライエントが母親との関係に対して新たに持つ視点を受け入れるプロセスが進行します。

  • クライエントが母親の視点を体験した後、自分の感情に変化が起こることが重要
  • 新たに得た理解や気づきを受け入れ、母親との関係を改善するための意欲を確認する
  • 次回のセッションに向けて、実際にどのような行動をとるかを計画し、クライエントの前向きな進展をサポートする

    このステップでは、クライエントが自分自身の感情を整理し、母親との関係についての新たな認識を持ち始めることを促します。クライエントは、母親の視点を理解することを通じて、過去の感情や思い込みを少しずつ解消し、前向きなアプローチを取る準備が整います。
セッション
再び自分自身に戻る

セラピスト:「今、再びあなた自身の立場に戻りました。まず、母親の椅子に座ったとき、どんな気持ちになったかをもう一度振り返ってみましょう。」

クライエント:「……お母さんが心配していたことに気づいて、少し驚いたけれど、少しホッとした気持ちもあります。」

セラピスト:「それは大きな気づきでしたね。それがあなたにとってどういう意味があると思いますか?」

クライエント:「私が思っていたよりも、お母さんも自分なりに悩んでいたのかもしれないって気づいて、少し心が軽くなった気がします。」

感情を整理するために、クライエントが気づいたことに焦点を当てる
クライエントが「心が軽くなった」と感じたことに対して、どのように心の変化を感じたかを問いかけ、気づきを深める。

セッション
母親の視点がもたらした変化を確認する

セラピスト:「母親の視点に立つことで、あなたの中でどんな変化がありましたか?」

クライエント:「お母さんの気持ちを理解しようとすることで、自分の気持ちが少し変わった気がします。お母さんが『私を愛していなかった』って思っていたけれど、実際は違ったかもしれない。」

セラピスト:「それは大きな変化ですね。『愛されなかった』という思いから、どのように気持ちが変わったのでしょうか?」

クライエント:「お母さんなりの愛情だったんだなって感じました。だから、自分が感じていた『愛されていない』という感情は、ちょっと違っていたかもしれないと思いました。」

クライエントがどのように母親との感情的な距離を取ることができたのかを確認する。
「愛されていなかった」という感情が変化し、「母親なりの愛」があったと認識する過程を丁寧に探る。

セッション
自分の感情の整理と新しい認識の構築

セラピスト:「今、あなたの中で『お母さんの愛』に対する認識が少し変わったようですね。あなた自身の感情がどう変わったかを、もう少し詳しく教えてください。」

クライエント:「私は、今までお母さんのことをすごく責めてきたけれど、実はお母さんなりにできる限りのことをしていたんだと感じます。だから、少しだけど、許せる気持ちが出てきました。」

セラピスト:「その気持ちを持つことは、とても重要です。それに対して、今のあなたがどんな行動をとりたいか、何か思い描いていますか?」

クライエント:「今はまだ、完全に許せるというわけではないけれど、お母さんともっと話をして、理解し合いたいと思っています。」

新たに感じた気持ちを認識し、その気持ちがどのように変化したのかを深める
クライエントが感じた「許せる気持ち」を大切にし、その後の行動につながる意欲を確認する。

セッション
クライエント自身の選択肢を確認する

セラピスト:「今、あなたが感じている気持ちを、どんな方法で日常生活に反映させることができると思いますか?」

クライエント:「お母さんとの関係について、もっと冷静に話をしたいです。でも、急いで結論を出さずに、少しずつお互いの気持ちを理解していけたらいいと思っています。」

セラピスト:「そのアプローチはとても健全ですね。少しずつお母さんとの関係を見直しながら、自分の気持ちを大切にしていくことができるでしょう。」

クライエントが今後どのように母親との関係を築いていきたいかを確認
感情を整理し、新たなアプローチを試みる準備ができたかを確認する。

セッション
終了に向けた総括と次回のセッションへの準備

セラピスト:「今日のセッションで得られた気づきや変化を、どう活かしたいと思いますか?」

クライエント:「お母さんとの関係を、少しずつでも前向きに改善していけたらと思います。そのために、今後もっと自分の気持ちを大切にしていきたいです。」

セラピスト:「素晴らしいですね。自分の気持ちを大切にしながら、お母さんとの関係を一歩一歩進めていけるようにサポートします。

STEP
新しい視点を得る

このステップでは、クライエントが母親との関係を新たな視点で捉え直し、その結果として自己理解を深め、今後の行動にどう反映させるかを見つけます。クライエントが持っていた古い感情や信念を再評価し、それをどのように解放し、前向きに生かしていけるかを考えます。最終的に、母親との関係や自分自身に対する新たなアプローチを得ることが目的です。

  • 新しい視点を得ることで、クライエントは自分と母親との関係をより客観的に捉え、前向きなアプローチを取ることができるようになる
  • 不安や恐れに対しても、小さなステップで進んでいく意欲を持つことが重要
  • クライエントが新たに得た理解と自己受容を実生活にどう活かしていくかを考え、行動に移す準備が整う

    このステップでは、クライエントが新しい視点を得て、母親との関係や自分自身に対するアプローチを見直し、行動に移すことができるようになります。
セッション
新しい視点の受け入れ

セラピスト:「今日は、これまでのセッションを振り返って、母親との関係に対する新たな視点をどのように感じているかを話してみましょう。どんな変化があったと感じますか?」

クライエント:「母親も私に対して愛情を持っていたということに気づいて、それがずっとわからなかった自分に驚いています。私が感じていた『愛されていない』という思い込みが強かったから、彼女の気持ちを正しく理解できていなかったのだと思います。」

セラピスト:「その気づきは非常に大きな一歩ですね。愛されていないと感じていたその思い込みを、どう受け止めていきますか?」

クライエント:「今は、少しずつその思い込みを解放していきたいと思っています。母親が私にとってどれだけ大切な存在なのかを再確認するようにしています。」

クライエントが新しい視点をどれほど受け入れられたかを確認
クライエントが自分の「古い信念」をどのように解放しているかを支持する。

セッション
自己認識の変化を探索する

セラピスト:「これまでの自分と今の自分とでは、どんな違いを感じますか? 自己認識にどのような変化があったかを考えてみましょう。」

クライエント:「私は、過去に母親の期待に応えられなかったことが自分をダメだと思っていたけれど、今はそれが必ずしも私の問題だけではないと気づきました。母親もまた、人間としての限界があったんだと理解するようになりました。」

セラピスト:「その認識は、自己受容にとって重要な一歩ですね。自分の過去の感情や反応を今どのように受け入れることができていますか?」

クライエント:「今は、自分を許す気持ちが少しずつ芽生えてきたと感じています。自分を責めることが減ってきたし、母親との関係も改善したいという気持ちが強くなりました。」

自己認識に関する変化を探り、クライエントが自己受容を始めていることをサポート
自分を責めず、過去の感情を解放し、前向きな気持ちを持つようになったプロセスを深掘りする。

セッション
新しい行動の選択肢を考える

セラピスト:「新しい視点を得たことで、今後母親との関係や他の人との関わり方にどう変化をもたらせると思いますか? どんな行動を選びたいですか?」

クライエント:「母親との関係については、今後は自分の気持ちをもっと素直に伝えようと思います。今まで言いたくても言えなかったことを話して、お互いに理解し合いたいです。」

セラピスト:「素晴らしいですね。自分の気持ちを伝えることが、関係の改善につながると信じています。そのために、どんな小さなステップを踏みたいですか?」

クライエント:「まずは、感謝の気持ちを伝えて、少しずつコミュニケーションを増やしていきたいです。」

クライエントが母親との関係を改善するために取るべき具体的な行動を考える。
小さなステップから始め、コミュニケーションを増やす意欲を促す。

セッション
恐れや不安に向き合う

セラピスト:「新しい視点を得て前向きな気持ちが芽生えていますが、それに伴って不安や恐れが出てくることもあります。何か心配なことや怖いことはありますか?」

クライエント:「正直、母親と本当に向き合った時に、過去の感情が再び浮かび上がってくることが怖いです。うまくいかないかもしれないという不安もあります。」

セラピスト:「その不安は自然な反応です。それにどう向き合うかが大切です。小さなステップで進むことで、その不安を少しずつ和らげることができると思います。」

クライエント:「少しずつやっていけば大丈夫だと思います。焦らずに、今できることから始めます。」

不安や恐れについて話すことで、クライエントがそれにどう向き合っていくかをサポート
小さなステップで進むことで不安を管理する方法をクライエントとともに考える。

セッション
セッションの振り返りと今後のフォローアップ

セラピスト:「今日のセッションを振り返ると、どんな変化を感じていますか?」

クライエント:「母親との関係に対する新しい理解が生まれ、自分が過去の感情に縛られすぎていたことに気づきました。少しずつ、自分を許し、前向きな行動を取る意欲が湧いてきました。」

セラピスト:「その気づきはとても大きなものです。今後も引き続き、自分の気持ちを大切にしながら、母親との関係を進めていくことができるようにサポートします。」

STEP
セッションの統合

このステップは、クライエントがエンプティチェアセッションを通じて得た洞察や気づきを生活の中でどのように活かしていくかを考え、それを実践する準備を整える段階です。セッションで得た新しい視点や行動の選択肢を統合し、具体的な行動計画を立て、今後の進歩を促進します。また、感情や認識の変化がどのように実際の生活に影響を与えるかを振り返り、今後のフォローアップを通じて継続的に成長していけるようサポートします。

  • セッションの統合では、クライエントが得た洞察を日常生活にどう活かすかを考え、行動計画を立てる
  • 感情を正直に伝える方法や自己理解を深める行動を促し、次のステップに向けて準備を整える
  • 今後の不安に対処するためのサポート計画を立て、クライエントが自分のペースで進んでいけるよう支援する

このステップでは、クライエントがセッションで得た知見を実生活で生かす準備を整え、次の一歩を踏み出すための自信と具体的な行動計画を作成することが重要です。

セッション
セッションの全体的な振り返り

セラピスト:「これまでのセッションを振り返って、どのような点が最も印象に残っていますか? どんな変化を感じましたか?」

クライエント:「母親との関係についての新しい視点を得て、自分の感情をより素直に表現できるようになったと感じています。過去のトラウマが少しずつ解放されて、今は自分を許せるようになったと思います。」

セラピスト:「その変化は大きな進歩ですね。自分を許すことができるようになったことで、母親との関係も少しずつ改善していく準備ができているのではないでしょうか?」

クライエント:「はい、今は自分を責めることが減ったので、母親との関係も前向きに考えることができるようになりました。」

クライエントがセッションを通じて得た気づきや成長を振り返り、その進捗を確認する
感情や認識の変化がどのように実生活に反映されているかを再確認する

セッション
得られた洞察の統合

セラピスト:「これまでのセッションで得られた洞察や気づきを、今後どのように日常生活に活かしていけると思いますか?」

クライエント:「今後、母親とコミュニケーションを取るときには、感情を正直に伝えるように意識していきます。また、自分の気持ちを大切にして、他人の期待に応えることばかりに集中せず、自分の感情にも耳を傾けるようにします。」

セラピスト:「素晴らしいですね。それに加えて、感情を表現する際に、どんな方法やタイミングが一番自分にとって自然で楽になると思いますか?」

クライエント:「感情を伝えるときは、無理に急いで言うのではなく、落ち着いて話すことが大事だと感じています。タイミングを見計らって、無理のない範囲で少しずつ話していこうと思います。」

クライエントが得た洞察をどのように日常生活に取り入れるかを具体的に考える
感情の表現方法や行動計画について、実行可能な手段を見つける

セッション
行動計画の策定

セラピスト:「新しい視点を得たことを基に、母親との関係や自己理解を深めるために、次にどのような具体的な行動を取っていきたいですか?」

クライエント:「まずは、母親と過去のことを少しずつ話し、理解し合える関係を作りたいです。感情を伝えることが重要だと感じたので、次回会ったときに、感謝の気持ちや気になることを素直に話してみたいです。」

セラピスト:「その計画は素晴らしいです。それに向けて、まずはどんな準備をしていきたいですか?」

クライエント:「まずは、自分がどんな感情を持っているのかを整理して、母親に伝えたいことを書き出してみます。そして、準備ができた段階で自然なタイミングで話してみるつもりです。」

クライエントが自分の行動計画を具体的に考え、行動に移す準備を整える
感情の整理と準備を通じて、行動を自信を持って実行できるようにサポート

セッション
振り返りと今後のサポート計画

セラピスト:「これからの過程で、もし不安や挫折を感じることがあった場合、どのように対処していきたいですか?」

クライエント:「不安を感じたときは、まず自分の感情を認めて、それを無理に抑え込まないようにしたいです。セラピーで学んだ方法を思い出し、少しずつ進んでいくことが大切だと思います。」

セラピスト:「その考え方はとても大切です。感情を抑えずに認め、無理なく進んでいくことができれば、安定して前に進めると思います。今後もサポートしていきますので、焦らずに一歩ずつ進んでいきましょう。」

クライエント:「はい、ありがとうございます。少しずつ自分のペースで進んでいきます。」

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