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母親のネグレクトをエンプティチェアでセッション

目次

母親のネグレクトに対するトラウマを抱えた女性をエンプティチェア技法のセッションで抑圧された内面的な対話を外在化させる

エンプティチェア技法は、ゲシュタルト療法における重要なツールであり、感情の外在化、対話を通じた洞察の促進、内面的葛藤の解決、自己理解の深化など、さまざまな特徴を持っています。この技法を用いることで、自己の内面と向き合い、感情の処理や解放を行い、内面的な問題や対人関係の課題を解決するために用いられます。

エンプティチェア技法は、空の椅子を「相手」として設定し、その椅子に向かってクライエントが対話を行う方法です。これにより、クライエントは内面的な対話を外在化し、具体的に扱うことができます。例えば、クライエントが過去のトラウマとなる人物や内面的な感情を空の椅子に投影し、直接対話することで、自分の感情や思考を明確に表現します。

この技法の特徴は、感情の可視化と表現を促進する点です。クライエントが空の椅子に対して感情を話すことで、感情が具体化され、可視化されます。これにより、抑圧された感情や未解決の問題が表面化し、処理しやすくなります。また、クライエントが空の椅子に対話することで、他者の立場や視点を理解し、自分の感情や考えに対する新たな洞察を得ることで、自己理解が深まり問題解決の糸口が見つかります。

クライエントは対立する感情や思考を外に出し調整することで、心の中の葛藤が軽減され、心理的な安定が得られ、自己の内面を外部の「相手」との対話を通じて探ることで、自己認識が高まり、自己理解が深まります。この過程で、自己成長を促進し、内面的な問題に対処する力を養います。
加え、感情を外在化し対話することで、未解決の感情を解放し心理的な負担を軽減します。これにより、感情の抑圧や蓄積が解消され、心理的状態が改善されます。

エンプティチェア技法は非常に実践的なアプローチで、シンプルな設定ながら深い感情的な作業を行うことができ、多くのクライエントにとって効果的で、自己の内面と向き合うための強力なツールとなります。エンプティチェア技法は、感情の可視化、洞察の促進、内面的葛藤の解決、自己理解の深化、感情の処理と解放を通じて、クライエントの心理的な成長と安定をサポートします。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

エンプティチェア技法のセッション

クライエントからの相談は、幼少の頃に義理の父親からの虐待と母親からのネグレクト受けていて、成人後の生きづらさとトラウマ、心の葛藤を抱えているということです。

クライエントからの相談内容

 私が物心ついたころを思い出すと、父親の存在はなく母親の愛情も感じたことがありませんでした。シングルマザーだと理解できるようになった小学生の低学年には、父親と名乗る男性が一緒に住むようになりましたが、私が身体への虐待を受けるようになったのは間もなくでした。それから中学卒業までネグレクトのような育て方をされてきました。そのような状態が災いして友達もできなく、いつも一人でいることが多く孤独を感じながら過ごしてきました。

 私は働きながら定時制高校を卒業しましたが、社会に出てからも他人との交流方法がわからないために人付き合いを避けることが多く、特に男性に対して恐怖感を持ってしまい過度の警戒や不信感を抱いています。そんなことから、私は愛着障害とPTSDをもっているのではないかと考えています。

 悩みは、義理の父親からの暴力の記憶が抜けなくトラウマに怯えています。夜寝ていても思い出され目が覚めることがあり、生活上で男性の大きい声を聞いただけでも恐怖感が現れ胸が苦しくなります。それと同時に、義理の父親には悔しい思いだけでなく、強い恨みが湧いてきて一人で動揺することがあります。

 先ずは、父親から仕打ちを受けた悪い記憶を和らげたいと思っています。しかし、一番のトラウマ的存在は母親です。私を生んだ実の母親でありながら、義理の父の暴力を止めることもなく、ネグレクトのような育て方をされたことがなぜだかわかりません。母親のことを考えると胸が苦しくて張り裂けそうです。どうか、母親の呪縛を解いて下さい。

ゲシュタルト療法のエンプティチェア技法は、既に別ページに掲載済みの父親の身体への虐待とは異なるセッションとなり、クライエントが自身の内面的な対立や未解決の感情を外在化し、解決に向かわせるための効果的な方法です。この技法では、クライエントが向かい合う椅子を「母親」と見立てて、その椅子に母親がいると想像しながら、自分の感情や思いを表現します。

エンプティチェアのセッション-簡潔編

クライエントが抱える悩みを元にした、エンプティチェアを使った具体的な簡潔バージョンのセッションのステップです。

STEP
セッションの導入と信頼関係の確認

セラピスト: 「今日は、お母様に対して抱いている思いについて話をしていきましょう。ここでは、安心して自分の気持ちを表現できるように進めていきますので、一緒に取り組んでいきましょう。」

クライエント: 「はい、お願いします。」

STEP
エンプティチェアの説明と準備

セラピスト: 「この空いている椅子を、お母様が座っていると想像してください。お母様に直接話しかけるつもりで、自分が感じていることや思っていることを話してみましょう。」

クライエント: 「母がそこにいると想像するんですね…。」

STEP
感情の外在化と表現

セラピスト: 「今、お母様がここにいると思って、まずどんなことを伝えたいですか?」

クライエント: (しばらく沈黙した後)「どうして私を守ってくれなかったのか、なぜあの人(義父)の暴力を止めてくれなかったのか、と聞きたいです。」

セラピスト: 「その気持ちを言葉にして、お母様に直接伝えてみましょう。」

クライエント: (涙をこらえながら)「お母さん、どうして私を見て見ぬふりをしたの?私はずっと怖かった…。助けて欲しかったのに、なぜ何もしなかったの?」

STEP
感情の深掘りと対話

セラピスト: 「今、お母様がどう答えていると思いますか?お母様の視点に立って、その椅子に座り、お母様として答えてみてください。」

クライエント: (椅子を移動して母親役に)「…私は何もできなかったの。あなたに辛い思いをさせてごめんなさい…。」

セラピスト: 「その言葉を聞いて、あなた自身はどう感じますか?」

クライエント: (自分の椅子に戻りながら)「謝ってもらっても、どうしようもないというか、納得できない気持ちがあります。」

STEP
感情の統合と整理

セラピスト: 「お母様が謝っているのに納得できないという気持ちは、とても自然なことです。次に、もう少し深く、その納得できない感情を掘り下げてみましょう。お母様に対して、他に何か言いたいことはありますか?」

クライエント: 「どうしてあんな人と一緒になったのか、私を置き去りにしてまで…。」

セラピスト: 「その疑問を、お母様に直接問いかけてみてください。」

クライエント: (母親役に移って)「私は自分のことばかり考えていたのかもしれない…。でも、あなたを愛していたんだ…。」

セラピスト: 「その答えに対して、あなたはどう反応しますか?」

クライエント: (涙を流しながら)「愛していたなら、もっと違う方法があったはず…。」

STEP
感情の解放と新たな認識の形成

セラピスト: 「とても大切な感情が出てきましたね。お母様にその気持ちを伝え続けて、そして、最後に、今のお母様に対してどんな言葉でこのセッションを終わりにしたいかを考えてみましょう。」

クライエント: 「…今はもう、恨みばかりじゃなく、少しは理解してみようと思います。でも、すぐには無理かもしれない。」

セラピト: 「それはとても良い第一歩です。ここまでの対話を通じて、どんな変化を感じましたか?」

クライエント: 「少しだけ、心が軽くなった気がします。でも、まだまだ道のりは長そうです。」

STEP
セッションの締めくくりと次回の予告

セラピスト: 「その感覚を大切にしながら、少しずつ進んでいきましょう。次回は、今日のセッションを振り返りつつ、もう少し深く掘り下げていきましょうね。」

クライエント: 「はい、お願いします。」

エンプティチェアのセッション-詳細編

エンプティチェア技法はクライエントが抱える複雑な感情や未解決の問題を表現し、それらを整理し、徐々に解放していくプロセスです。セラピストはクライエントが感情に正面から向き合い、理解と癒しを深める手助けを行います。

クライエントが抱える悩みを元にした、エンプティチェアを使った具体的な詳細バージョンのセッションのステップです。

STEP
セッションの導入と信頼関係の確認

ステップ1での「セッションの導入と信頼関係の確認」は、クライエントが安心して自分の感情や経験を表現できるようにするための重要なプロセスです。ここでは、セラピストがクライエントの話に耳を傾け、共感を示しながら、セッションの目的や進め方を説明します。

このステップでは、セラピストはクライエントの不安や心配を受け止め、安心してセッションに臨めるように配慮します。クライエントが自分のペースで話を進められるように、セラピストは柔軟に対応し、必要なサポートを提供することが重要です。信頼関係の構築は、セッションの効果を高めるための基盤となります。

ステップ1: セッションの導入と信頼関係の確認

セラピスト: 「今日は、お母様に対して感じている気持ちについてお話を伺いたいと思っています。これまで抱えてこられた思いを少しずつでも言葉にしていくことで、気持ちを整理したり、今後どうしていきたいかを考えるお手伝いができればと思います。まずは、今のお気持ちを教えていただけますか?」

クライエント: 「正直、すごく不安です。話しても何か変わるのか、分からないし…。母親のことを考えるだけで胸が苦しくなってしまうんです。」

セラピスト: 「そうですよね、非常に辛い気持ちを抱えているのが伝わってきます。ここでは、その気持ちを無理に変えようとするのではなく、まずはそのまま受け止めていくことが大切だと思っています。あなたが感じていることを尊重しながら、一緒に進めていきましょう。」

クライエント: 「はい、でも、どこから話せばいいのか…。」

セラピスト: 「何から話すべきか迷われるのも当然のことです。まずは、無理をせずに、頭に浮かんでいることや、ここで話したいと思ったことから始めてみましょう。ゆっくりで大丈夫ですよ。あなたが話したくないことは無理に話す必要はありませんし、少しでも話したくなったらいつでも声をかけてください。」

クライエント: 「分かりました。…母のこと、どうしてああなったのか、ずっと考えているんですけど、分からないんです。」

セラピスト: 「お母様との関係が、今でも大きな影響を与えているようですね。その気持ちを少しずつ紐解いていくことで、あなた自身が感じている疑問や感情を理解しやすくなるかもしれません。まずは、お母様との具体的なエピソードや、思い出していることについて話してみませんか?」

クライエント: 「はい、でも…思い出すのが辛いです。」

セラピスト: 「辛い記憶に触れることが、とても大変なことだと理解しています。ここでは、あなたのペースで進めていきましょう。必要であれば、いつでも休憩を取ったり、話題を変えることもできます。あなたが安心して話せるように、一緒にサポートしていきますね。」

クライエント: 「ありがとうございます。少しずつ、話してみようと思います。」

セラピスト: 「それで十分です。今日は、無理をせずに、できる範囲で進めていきましょう。ここは安全な場所ですので、どんな感情が出てきても、それを大切に扱っていきましょう。」

STEP
エンプティチェアの説明と準備

ステップ2の「エンプティチェアの説明と準備」では、セラピストがエンプティチェアの技法をクライエントに説明し、準備を行います。この段階では、クライエントがエンプティチェアの目的や手法を理解し、安心して取り組めるようにサポートします。

このステップでは、セラピストがエンプティチェアの手法をわかりやすく説明し、クライエントが安心して取り組めるように支援します。クライエントが不安を感じたり、戸惑うことがないように、丁寧に説明し、質問に答えながら進めることが大切です。また、クライエントが自由に感情を表現できるよう、セラピストは柔軟かつサポート的な態度を保つことが求められます。

ステップ2: エンプティチェアの説明と準備

セラピスト: 「先ほどお話ししたように、これからエンプティチェアという技法を使って、お母様に対する感情を探っていこうと思います。エンプティチェアについて少し説明させていただきますね。」

クライエント: 「エンプティチェアって何ですか?聞いたことがないです。」

セラピスト: 「そうですよね。エンプティチェアは、目の前に置いた空の椅子をお母様が座っているものと想定して、その椅子に向かって感じていることを話していただくという技法です。この方法を使うことで、心の中にある感情や思いを外に出して整理する手助けができます。少し不思議な感じがするかもしれませんが、多くの方がこの方法で新たな気づきを得ています。」

クライエント: 「椅子に向かって話すんですね…少し恥ずかしい気がしますけど、やってみます。」

セラピスト: 「恥ずかしく感じるのは自然なことです。普段とは違うことをするので、最初は少し違和感があるかもしれませんが、ここでは誰もあなたを評価したり、批判したりしませんので、自由に感じたことを表現してください。」

クライエント: 「それなら、やってみようかな…。でも、どう話せばいいか分からないかも。」

セラピスト: 「最初は難しいかもしれませんね。そこで、まずは私がいくつか質問をしてみます。その質問に答える形で、お母様に話しかけるようにしてみましょう。例えば、『お母さん、あなたに言いたいことがあります』とか、『どうしてあのとき、私にあんなことをしたのですか?』といった感じで話を始めてみると、少しずつ感情が出てくるかもしれません。」

クライエント: 「そうなんですね…うまくできるか分からないですけど、やってみます。」

セラピスト: 「大丈夫です。上手に話す必要は全くありません。言葉が出てこないときは、ただその椅子を見つめるだけでも構いません。あなたが感じたことをそのまま表現することが大切です。そして、もし感情があふれてきて辛くなったら、いつでも止めることができます。その時は教えてくださいね。」

クライエント: 「わかりました。安心しました。」

セラピスト: 「それでは、準備が整ったら、始めてみましょう。椅子に座って、お母様がその椅子に座っていると想像してみてください。どんな気持ちが湧いてくるか、自分の内側に意識を向けてみましょう。最初に思いつく言葉や感情を、そのまま口に出してみてください。」

クライエント: 「…(深呼吸しながら椅子を見つめる)…お母さん、なんで私を守ってくれなかったの…?」

セラピスト: 「その気持ち、とても大切ですね。どうして守ってくれなかったのか、もっと深く探ってみましょう。お母様に対して、今のその質問をもう一度伝えてみてください。ゆっくりで構いません。」

クライエント: 「うん…お母さん、本当にどうして?私は…。」

STEP
感情の外在化と表現

ステップ3の「感情の外在化と表現」では、クライエントがエンプティチェアを使って感情を外在化し、表現することに重点を置きます。この段階で、セラピストはクライエントが深層の感情にアクセスし、それを安全な環境で表現できるようサポートします。

このステップでは、クライエントが感情を外在化し、それを言葉で表現するプロセスが中心になります。セラピストは、クライエントが感じている感情を尊重し、それを安全に表現できるようにサポートします。また、感情を身体的な感覚として認識することも促し、その感覚を通じて感情の理解を深めることが重要です。セラピストは、クライエントがどのような感情を抱いているかを丁寧に引き出し、それを言葉にすることで、感情の解放と理解を促進します。

ステップ3: 感情の外在化と表現

セラピスト: 「それでは、少しずつお母様に対する気持ちを言葉にしていきましょう。先ほど、『どうして守ってくれなかったの?』とおっしゃいましたね。その感情にもう少し触れてみましょう。お母様に対して、何を感じていますか?」

クライエント: 「…私はずっと…ずっと、怖かったんです。でも、お母さんは何もしてくれなかった…。それが悔しくて、どうしてあんなふうに私を放っておいたのか、理解できないんです。」

セラピスト: 「その悔しさや理解できないという気持ちを、もう少し掘り下げてみましょう。お母様が目の前に座っていると感じて、その感情を直接お母様に伝えてみましょう。」

クライエント: (エンプティチェアに向かって)「お母さん…私、ずっとあなたに守ってほしかったんです。でも、あなたは何もしてくれなかった。どうして私を守らなかったの?私はただ、愛されたいって思っていただけなのに…。」

セラピスト: 「とても大切な感情ですね。お母様に守られたいという気持ち、それがどれほど強かったのかが伝わってきます。今、その気持ちを表現してみて、どんな感情が湧いてきますか?」

クライエント: 「…怒りと悲しみが混ざったような感じです。お母さんに対して、強い怒りを感じています。でも、それと同時に、まだ愛されたいという気持ちもどこかにあるんです。」

セラピスト: 「その両方の感情が大切です。怒りと悲しみ、そして愛されたいという気持ち。そのすべてがあなたの中にあることを認めましょう。お母様に対して、もう一度その感情を直接伝えてみましょう。」

クライエント: (涙ぐみながら)「お母さん、私はあなたに怒っています。どうして私をあんなに苦しめたの?でも…まだあなたに愛されたいと思ってしまう私がいるんです。お母さん、どうして…どうして私を愛してくれなかったの?」

セラピスト: 「その感情、素晴らしい表現ですね。今、あなたが心の中で何を感じているかを、お母様に伝えられたことはとても重要です。その感情がどこから来るのか、もう少し探ってみましょう。お母様にもう少し話しかけてみてください。」

クライエント: 「…私はただ、普通の子供のように愛されて育ちたかったんです。お母さん、あなたがどうして私に冷たくしたのか、わかりません。でも、それでもあなたを憎みたくないんです…。ただ、どうしても怒りが収まらなくて…。」

セラピスト: 「その気持ちを表現できたことは、とても大きな一歩です。今、その怒りや悲しみがどうなっているか、体の中で感じてみましょう。怒りはどこに感じますか?」

クライエント: 「胸が締め付けられるように苦しいです。怒りが胸の中で渦巻いている感じがします。」

セラピスト: 「その胸の苦しさに、少し意識を向けてみましょう。その感覚に寄り添って、ただそのまま感じてみてください。もし、その感情に色や形があるとしたら、どんな感じですか?」

クライエント: 「黒い塊が胸の中にあるように感じます…。重くて、押しつぶされそうです。」

セラピスト: 「その黒い塊が、あなたの怒りや悲しみを表現しているのかもしれませんね。今、その感情を外に出すことを恐れずに、もっと言葉にしてみましょう。その塊に対して、何か伝えたいことはありますか?」

クライエント: 「…その塊に、もう私を苦しめないでと言いたいです。私は自由になりたい…。お母さん、私をこれ以上苦しめないで…。」

STEP
感情の深掘りと対話

ステップ4の「感情の深掘りと対話」では、クライエントが感情の深層にさらにアクセスし、母親との対話を通じて未解決の感情を探ることに重点を置きます。この段階で、セラピストはクライエントが内面的な気づきを得ることをサポートし、感情のさらなる解放を促進します。

このステップでは、クライエントが感情を深く掘り下げ、未解決の感情や葛藤に向き合うことで、内面的な気づきを得るプロセスを重視します。セラピストはクライエントが自分の感情を安全に表現できる環境を提供し、その感情を探るためのガイド役を務めます。この過程を通じて、クライエントは自分の感情や経験をより深く理解し、癒しのプロセスを進めることができます。

ステップ4: 感情の深掘りと母親との対話

セラピスト: 「今、黒い塊があなたの胸にあるということが分かりましたね。これまで、その感情をずっと抱えてきたんですね。もう少し、その感情の奥にあるものを探ってみましょう。お母様にもう一度話しかけてみてください。今、あなたが心の中で何を感じているのか、素直な気持ちを伝えてみましょう。」

クライエント: (エンプティチェアに向かって)「お母さん、私は…ずっとあなたの愛が欲しかった。だけど、それを感じたことがない…。どうして私をそんなふうに無視したの?私はただ、普通に愛される子供でいたかったんです。」

セラピスト: 「その気持ちを伝えることができましたね。今、その言葉をお母様が聞いていると想像して、どんな反応が返ってくると思いますか?お母様の立場に立って、その言葉を受け止めてみましょう。」

エンプティチェアーの母親からの言葉

セラピスト:それでは正面の空いている席に移動してください。今度はあなたがお母さまの気持ちになりきってお話しください。

セラピスト:お母様はあなたに何と言って声をかけてくれますか?

セラピスト:お母様は本当にあなたを愛してくれていなかったのですか?

セラピスト:お母様があなたを包み込むことができなかったことの理由がありますか?例えば、もし次のような理由があったのではと推測しますが、いかがですか?

お母様:母親になったときに 子育ての難しさや、子どもへの感情的な距離がわからずに、自分自身が機能不全家族で育ったことの影響に気づきました。しかも、自分の自己中心的な特性やトラウマの影響があったことも感じられています。

  • 母親の過去のトラウマや未処理の心理的な問題が関与していて、自己中心的な性格や価値観ができあがっていたのか、自分の欲望やニーズを優先していたかもしれない。また、感情や行動に影響を受けていたのか、愛情を適切に表現できなくなっていたのでは?
  • 自分が親として、子どもに同じような苦しみを与えているのではないかという不安や罪悪感に悩んでいたのかも?
  • 子どもとの接し方がわからず、感情的に距離を置いてしまいがちだった。子どもが泣いたり不機嫌なとき、どうしていいかわからず、自分自身もイライラしてしまっていたのかも?
  • 感情的な距離感がうまく取れず、子どもを過剰に守ろうとしたり、逆に感情を抑えすぎて愛情表現ができなかったのかも?
  • 母親の個性や性格特性が子どもとの感情的な結びつきを築くのに支障をきたしていて、愛情を示す方法が他の形で表れていたのかも?
  • 母親自身が精神的な問題、例えば、うつ、感情調節障害、ASD、ADHD、知的障害などの発達障害を抱えていたり、幼児体験として虐待を受けていて、虐待をされた親の生き写しになっていた?
  • 自分が親として、子どもに同じような苦しみを与えているのではないかという不安や罪悪感に悩んでいたのかも?
  • 夫婦関係の不和や経済的な問題など、生活上のストレスを抱えていたのでは?
  • 母親自身の育ちの問題や、社会的に弱い立場に置かれているなど、母親自身も苦しんでいたり、孤独だったりしていたのでは?

このようにも、想像できますよね。

セラピスト:お母様はいま深い後悔をしていて、あなたのことを心配していると感じませんか?

セラピスト:お母様と親子関係を取り戻せると考えた時に、どのようなことができますか?

セラピスト:それでは、自分の席に戻りましょう。

クライエント: (少し間を置いて)「…お母さんは、私のことをどうしていいかわからなかったんだと思います。もしかしたら、お母さんも苦しんでいたのかもしれません…。」

セラピスト: 「そう感じるんですね。お母様も何か抱えていたのかもしれない、と。今、その気づきを持ったまま、お母様に何か言いたいことはありますか?」

クライエント: 「もし、お母さんが苦しんでいたのなら…私はそれを責めるべきではないのかもしれない。でも、私はどうしても…どうしても、その時の苦しさを忘れられない。お母さんに、もっと話を聞いてほしかったし、助けてほしかった…。今、そう言っても遅いけれど。」

セラピスト: 「その気持ちを今、伝えることができたのは大きな一歩です。過去の出来事に対して、あなたがどう感じていたのか、そしてその中で何を求めていたのかが、少しずつ見えてきましたね。お母様との対話を通じて、今感じていることをもう少し深く掘り下げてみましょう。お母様に、今でも何か伝えたいことがあれば、どうぞ。」

クライエント: 「…お母さん、私はまだあなたを許すことができない。だけど、あなたを憎むこともできないんです。私は、今でもお母さんを愛している部分があって、それが自分でも許せなくて…。どうして、あなたを愛してしまうのか、わからないんです。」

セラピスト: 「その複雑な感情、とてもよく表現できていますね。お母様に対する愛情と、それに対する葛藤があるのですね。その気持ちを抱えながら生きてきたこと、そして今それを表現できたことが、あなたの内面的な成長にとって大きなステップです。今、その葛藤をどう感じていますか?」

クライエント: 「…まだ混乱しています。でも、少しだけ楽になった気がします。自分の中にこんなにたくさんの感情があるなんて、驚いています。」

セラピスト: 「その感情に気づけたことはとても重要です。今、その感情を感じたまま、もう少しお母様と対話を続けてみましょう。あなたが本当に伝えたいこと、言葉にしきれなかったことがあれば、それをお母様に伝えてみてください。」

クライエント: (深呼吸して)「お母さん…私はあなたに感謝している部分もあるんです。たとえ苦しかったとしても、私を育ててくれたことは感謝しています。でも、どうしても、あの時のことが忘れられない。私はあの時、何を間違えたのか、ずっと自問してきました。お母さん、あなたはどう思っていたんですか?」

セラピスト: 「今、その問いをお母様に投げかけることができたのは、とても大切なプロセスです。お母様の気持ちを理解しようとすることで、あなた自身の感情も少しずつ整理されていくでしょう。今、心の中でどんな変化を感じていますか?」

クライエント: 「…まだ完全には整理できていませんが、少しだけ前に進めた気がします。自分の中で何が起きているのか、少しずつ分かってきた気がします。」

セラピスト: 「その変化を感じられることはとても大切です。今後もこのプロセスを続けることで、さらに感情の整理が進み、癒しが進んでいくでしょう。今日のセッションを通じて、あなたが得た気づきや感情について、しっかりと受け止めていきましょう。」

STEP
感情の統合と整理

ステップ5の「感情の統合と整理」では、クライエントがこれまでに表現した感情を統合し、整理するプロセスに焦点を当てます。セラピストはクライエントが感情を理解し、受け入れ、今後の方向性を見つける手助けをします。このステップでは、クライエントが感情の全体像を捉え、内面的な調和を図ることが目指されます。

ステップ5では、クライエントが表現した感情を統合し、整理することで、感情の全体像を理解し、内面的な調和を図ることが目的です。セラピストはクライエントが感情を否定せずに受け入れ、それぞれの感情の意味や役割を理解する手助けをします。これにより、クライエントは感情を健康的に扱い、心のバランスを取り戻すことができます。

このプロセスを通じて、クライエントは自分自身の感情に対する新たな理解を得るとともに、過去の経験をより良く統合し、前向きな変化を促進することが期待されます。

ステップ5: 感情の統合と整理

セラピスト: 「これまでにたくさんの感情を表現してくれてありがとうございます。今感じていることを少し整理してみましょう。あなたが感じている怒り、悲しみ、そして愛情について、もう一度振り返ってみましょう。」

クライエント: 「はい。怒りと悲しみが主な感情だと思います。お母さんに対して怒りを感じる一方で、愛情もまだ残っていることに戸惑っています。」

セラピスト: 「その複雑な感情の中で、怒り、悲しみ、愛情のどの部分が一番強く感じられますか?」

クライエント: 「怒りが一番強いと思います。お母さんが私を守ってくれなかったこと、無視したことが本当に許せないんです。でも、愛情もあるから完全に憎むこともできない。」

セラピスト: 「怒りと愛情が同時に存在しているんですね。これはとても自然なことです。感情は必ずしも一つだけではなく、複数の感情が同時に存在することがよくあります。この二つの感情をどのように調和させていけると思いますか?」

クライエント: 「正直、まだよく分かりません。でも、怒りを感じることで、自分自身が守られていなかったということを認識できているのは良いことかもしれません。」

セラピスト: 「そうですね。怒りは相手にぶつけるだけではなく自分を防衛するための感情でもあります。この感情を認識し、受け入れることは重要です。また、愛情もあなたの中に存在していることで、お母さんに対する複雑な気持ちが生まれているのですね。」

クライエント: 「はい。愛情もありますが、完全に怒りを手放すのは難しいです。でも、少しずつ整理していけたらいいなと思っています。」

セラピスト: 「それは素晴らしい目標ですね。では、これまでに出てきた感情を一つずつ整理してみましょう。まず、怒りについてもう少し掘り下げてみますか?その怒りがあなたにとってどんな意味を持つのか、一緒に考えてみましょう。」

クライエント: 「怒りは、自分が守られていなかったという証拠だと思います。それに対して、私自身がもっと強くなりたかったという気持ちもあります。」

セラピスト: 「怒りがあなたにとって、自分を守るためのシグナルだったんですね。それにより、自己防衛や強さを求める気持ちが生まれたということですね。」

クライエント: 「そうです。怒りを感じることで、自分を守ろうとしていたのかもしれません。」

セラピスト: 「その認識はとても大切です。では、愛情についても整理してみましょう。愛情があることで、どのような気持ちが湧いてきますか?」

クライエント: 「愛情があるからこそ、お母さんを完全に手放すことができないんです。でも、それが逆に自分を苦しめている気もします。」

セラピスト: 「愛情があることで、お母さんとのつながりを保ちたいという気持ちがあり、それがあなたにとって重要な部分なのですね。しかし、その愛情が逆に苦しみを生んでいることも理解しています。この二つの感情をどうバランスさせていけるかが課題ですね。」

クライエント: 「はい、そう感じます。」

セラピスト: 「ここまでで、怒りと愛情という二つの主要な感情が見えてきましたね。これらを統合して、あなた自身の心の中でどのように調和させていけるか、一緒に考えてみましょう。例えば、怒りを認めつつも、愛情も大切にする方法は何かありますか?」

クライエント: 「うーん…。怒りを感じても、それを自分の一部として受け入れて、同時にお母さんへの愛情も認めることかもしれません。」

セラピスト: 「素晴らしいですね。自分の中にある全ての感情を認め、受け入れることは、感情の統合に向けた大きな一歩です。では、具体的にその感情をどのように扱っていくか、考えてみましょう。例えば、怒りを感じたときにどのように対処するか、愛情を保ちながらも自分を守る方法などです。」

クライエント: 「怒りを感じたときは、それを否定せずに受け入れて、どう対処するか考えるようにします。愛情については、お母さんを完全に理解しようとはしないけど、自分の気持ちを大切にすることを心がけたいです。」

セラピスト: 「それはとても良いアプローチですね。感情を否定せずに受け入れることで、心の中でのバランスが取れやすくなります。また、自分の気持ちを大切にすることで、愛情と怒りの両方を健康的に保つことができます。このように感情を整理し、統合していくことで、心の中に調和が生まれてくることになります。」

クライエント: 「そうですね。少しずつ整理していくことができそうです。」

セラピスト: 「素晴らしいです。最後に、今日のセッションで感じたことや学んだことをまとめてみましょう。どんな気づきがありましたか?」

クライエント: 「怒りと愛情が同時に存在することを認めることができました。それぞれの感情を否定せずに受け入れることで、少し楽になった気がします。」

セラピスト: 「それはとても大きな気づきですね。これからもその気づきを大切にしながら、自分の感情と向き合っていきましょう。今日のセッションを通じて、あなたが感じた変化や気づきを次回もさらに深めていけるよう、一緒に進んでいきましょう。」

クライエント: 「はい、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。」

セラピスト: 「こちらこそ、よろしくお願いします。今日はお疲れさまでした。」

STEP
感情の解放と新たな認識の形成

ステップ6「感情の解放と新たな認識の形成」では、クライエントが統合した感情を解放し、新たな認識や見方を形成するプロセスに焦点を当てます。この段階で、セラピストはクライエントが感情を手放し、今までとは違った視点から自己や過去の経験を見つめ直すことを支援します。これにより、クライエントは前向きな変化を受け入れ、新しい自己理解や成長に向けて一歩を踏み出します。

ステップ6では、クライエントが感情を解放し、新たな認識を形成するプロセスを支援します。この過程で、クライエントは感情を手放すことで軽さを感じ、新たな視点を得ることができます。セラピストはクライエントが自己や過去の経験に対する新たな理解を深め、今後の成長や変化に向けた準備を整える手助けをします。

このステップを経て、クライエントは感情を健康的に処理し、新しい自己理解と成長を遂げるための基盤を築くことが期待されます。

ステップ6: 感情の解放と新たな認識の形成

セラピスト: 「これまでのセッションで、あなたが感じてきた怒りや愛情を整理し、統合することができましたね。今日は、これらの感情を解放し、少しずつ新しい視点を形成していくことを目指しましょう。」

クライエント: 「感情を解放するって、どういうことですか?」

セラピスト: 「感情の解放とは、これまで押し込めていた感情や執着を手放し、軽くなるような感覚を持つことです。感情を抑え込むのではなく、その感情を感じ切って、自然に解放することが大切です。その結果、新たな認識や見方が生まれ、自分自身についてより柔軟な理解ができるようになります。」

クライエント: 「なるほど。でも、私にはまだ怒りや悲しみが残っている気がします。これをどうやって解放すればいいのか、まだ分かりません。」

セラピスト: 「その感情がまだ残っていると感じるのは自然なことです。まずは、これらの感情を感じ切ることが大切です。そして、無理に解放しようとせずに、自然と解放されるプロセスに身を任せてみましょう。今、あなたが感じている怒りや悲しみについて、少し話してみましょうか?」

クライエント: 「はい。お母さんへの怒りは、やはり私が守られなかったことが原因です。でも、今思うと、その怒りに支えられてきた部分もあるのかもしれません。」

セラピスト: 「怒りがあなたにとって、ある意味で自己防衛の役割を果たしていたのですね。その怒りに感謝しつつも、今はそれを手放すタイミングが来ていると感じることはありますか?」

クライエント: 「少しずつですが、そう感じるようになってきました。怒りが私を守ってくれたけど、それにずっと囚われていると前に進めない気がします。」

セラピスト: 「そうですね。怒りが役立っていた時期があった一方で、今はその感情を解放することで、新しいステージに進む準備が整っているように思います。では、もう一度その怒りを思い出してみて、それを感謝の気持ちとともに手放すイメージをしてみましょう。」

クライエント: 「…はい、やってみます。」

(数分間の沈黙の後)

クライエント: 「今、怒りを思い出してみました。少しだけど、その怒りを手放せた気がします。まだ完全ではないかもしれないけど、少し軽くなった感じです。」

セラピスト: 「素晴らしいですね。少しずつでいいんです。このプロセスは時間がかかることもありますが、今感じた軽さを大切にしましょう。では次に、これまでの感情を手放すことで、どのような新たな認識や視点が生まれてきていますか?」

クライエント: 「お母さんに対して、もう少し理解しようという気持ちが芽生えてきたかもしれません。お母さんも自分のことで精一杯だったのかもしれないって、少し思えるようになりました。」

セラピスト: 「それはとても大きな変化ですね。お母さんを完全に理解する必要はありませんが、そのような柔軟な視点を持つことで、あなた自身がさらに楽になるかもしれません。新たな認識が生まれることで、どのように自分自身やお母さんとの関係を見直していけると思いますか?」

クライエント: 「これからは、少し距離を置いてお母さんを見ることができるかもしれません。怒りだけでなく、もう少し客観的に、そして自分の気持ちを大切にしながら関係を考えてみたいと思います。」

セラピスト: 「それはとても健全なアプローチですね。自分の感情を大切にしつつ、新たな視点を取り入れて、お母さんとの関係を見直していくことができると思います。その新たな視点を持つことで、あなたの今後の行動や考え方にどのような変化が現れるか、楽しみにしています。」

クライエント: 「そうですね。これから少しずつ変わっていけるような気がします。」

セラピスト: 「その意識の変化が、あなたの人生にポジティブな影響を与えることになります。今日のセッションを通じて、新たな視点が得られたことは本当に素晴らしいことです。これからもその気づきを大切にしながら、前に進んでいきましょう。」

クライエント: 「ありがとうございます。これからも頑張ってみます。」

セラピスト: 「はい、一歩一歩進んでいきましょう。今日もお疲れさまでした。次回のセッションで、またお話を聞かせてください。」

クライエント: 「はい、ありがとうございます。」

STEP
セッションの締めくくりと次回の予告

ステップ7「セッションの締めくくりと次回の予告」では、セッションを円滑に締めくくり、クライエントが安心して次回のセッションに臨めるように、今後の方向性を示します。この段階では、セラピストはクライエントがセッションで得た気づきや感情を整理し、次回のセッションで取り組むべき課題や目標を共有します。また、クライエントがセッションを終えた後も自己ケアを続けられるように、簡単な宿題やリフレクションの提案を行うこともあります。

ステップ7では、セッションを円滑に締めくくるために、クライエントが得た気づきや感情を振り返り、次回のセッションに向けての方向性を示します。このプロセスは、クライエントが安心して次回のセッションに臨めるようにするための重要な要素です。また、セッション後の自己ケアやリフレクションを促すことで、クライエントが日常生活においても成長や変化を感じられるよう支援します。

ステップ7: セッションの締めくくりと次回の予告

セラピスト: 「今日のセッションで扱ったことを少し振り返ってみましょう。感情の解放と、新たな視点の形成について、いろいろな気づきがあったかと思いますが、どの部分が一番印象に残っていますか?」

クライエント: 「そうですね…やっぱり、怒りを少し手放せたことが大きかったです。少し軽くなった感じがして、新しい視点からお母さんのことを見られるようになった気がします。」

セラピスト: 「それはとても重要な進展ですね。怒りを手放すことで、新しい視点を得ることができたのは大きな一歩です。この感覚をぜひ、これからも大切にしていきましょう。」

クライエント: 「はい、少しずつですが、前に進んでいける気がします。」

セラピスト: 「次回のセッションでは、今日得られた気づきや視点をさらに深めていきたいと思います。また、もし今後も残っている感情があれば、それらも一緒に扱っていきましょう。そして、新しい視点からどのように行動や関係性が変化するかを見ていくことができると良いですね。」

クライエント: 「そうですね。新しい視点で何が変わるのか、自分でも気になります。」

セラピスト: 「次回までの間、今日のセッションで感じたことを、日常の中で少し意識してみてください。たとえば、お母さんとのやりとりや、何か感情が湧いてきたときに、今日の視点を思い出してみることが役立つかもしれません。また、何か変化を感じたことがあれば、ぜひ次回お聞かせください。」

クライエント: 「わかりました。日常で意識してみます。」

セラピスト: 「それでは、今日はここまでにしましょうか。今日のセッションを通じて、たくさんのことを感じ、考えたと思いますので、ゆっくり休んでくださいね。」

クライエント: 「ありがとうございます。今日は少し疲れましたけど、前に進めた気がして、少しホッとしています。」

セラピスト: 「それは良かったです。自分のペースで進めていくことが大切ですので、無理をしないようにしてください。次回もあなたのペースに合わせて進めていきますので、安心してお越しください。」

クライエント: 「はい、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。」

セラピスト: 「こちらこそ、よろしくお願いします。それでは、次回のセッションでまたお会いしましょう。」

クライエント: 「はい、失礼します。」

セラピスト: 「お疲れさまでした。」

エンプティチェア技法が有効な理由のまとめ

エンプティチェア技法は、クライエントが過去のトラウマ的な体験や未解決の感情を処理し、新たな認識を形成するための強力なツールです。今回のようなケースでは、クライエントが義理の父親や母親との過去の体験を克服し、自己の心理的な健康を取り戻すために、この技法が非常に有効であるといえます。

感情の外在化と表現の促進

クライエントが義理の父親や母親との過去の経験を抱え込み、心の中で未解決の感情を蓄積している場合、これが心理的な負担やトラウマとなり、現在の生活に悪影響を及ぼすことがあります。エンプティチェア技法では、クライエントが空の椅子を「相手」として設定し、その相手(例えば義理の父親や母親)に対して直接感情を表現することができます。このプロセスは、クライエントが抱えている怒り、悲しみ、恨み、恐怖などの感情を外に出し、明確に認識しやすくする効果があります。

未完了な感情や体験の解消

エンプティチェア技法は、「未完了の感情や体験」(ゲシュタルト理論では「未完結のゲシュタルト」とも呼ばれる)に焦点を当て、クライエントがそれを解消するための手助けをします。例えば、義理の父親からの虐待や母親からのネグレクトの体験が、クライエントの心の中で未解決なまま残っている場合、その影響が現在の心理的な問題に反映されます。エンプティチェアを使うことで、クライエントはその未完了な感情を再体験し、それを適切に処理することで、心の負担を軽減できます。

クライエントの主体性の回復

トラウマ的な体験を持つクライエントは、自己の主体性やコントロール感を失ってしまいます。エンプティチェア技法では、クライエントが主体的に自分の感情や思考を表現し、対話を行うことが求められます。この過程で、クライエントは自分の感情や体験をコントロールし、自己の内面に対する理解とコントロール感を回復することができます。これにより、自己効力感の向上や心理的な回復が促進されます。

新たな認識や洞察の形成

エンプティチェア技法では、クライエントが過去の出来事を新しい視点から見つめ直し、自己と他者に対する認識を再構築することができます。クライエントが義理の父親や母親の立場に立って話すことで、これまで気づかなかった新たな視点や洞察を得ることが可能です。これにより、過去の体験に対する理解が深まり、過去を受け入れるための準備が整います。

感情の解放と心理的な軽減

トラウマを持つクライエントは、強い感情(怒り、悲しみ、恨み、恐怖など)を抑圧してしまいます。この抑圧された感情が心の中で蓄積されると、精神的なストレスや心理的な障害を引き起こす可能性があります。エンプティチェア技法を用いることで、クライエントはこれらの抑圧された感情を解放し、心理的な負担を軽減することができます。このプロセスは、トラウマを乗り越えるための重要なステップとなります。

関係性の再構築

エンプティチェア技法は、クライエントが過去の対人関係におけるトラウマや葛藤を再評価し、新たな関係性のあり方を模索する手助けをします。義理の父親や母親との関係を再考し、これまでの関係性のパターンを認識・理解することで、クライエントは今後の対人関係において健全な関係性を築くための新たなアプローチを見つけることができます。

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