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「解離性同一症」物語-医学的知識編

目次

解離性同一症(DID)架空例のケースから症状の理解と知識を学ぶ精神医学的物語-3弾

解離性同一症(DID)物語

私は大学生で現在一人暮らしをしている女性ですが、解離性同一症に直面していたころの話をします。

1年前から、私が使っているパソコンを通じてもう一人の人物が存在するかのように思われることがありました。部屋には他人を招いたことがないので不思議でしたが、私が寝ている夜中の2時から朝方の間、「圭太」と言う男性の名前で月に2〜3回ぐらいの割合で多くの人と交流をしていることがわかっています。彼の言葉遣いは乱暴で相手を蔑むような文章も多く、怖さもある感じです。
そして、最近、もう一人の人物が現れたのです。その人物は「明美」という名前で、鬱的な症状や摂食障害、そして自殺企図もある生きづらさを持った女性です。
とにかく怖くなり、ネットで調べてみたところ解離性同一症ではないかまで突き止めました。原因の多くは小児期の虐待などのトラウマだということです。実際に私は、5歳の時に交通事故で母親を失い、その後、父親と二人暮らしでしたが、想像すると母親の保険金を使うことで父親は職に就くことがなく、ギャンブル三昧でアルコール依存症のようになっていました。そのうえ暴力的な傾向があり、私は父親から身体的や精神的虐待を受けていました。

ネットによると解離性同一症は、「2つ以上のはっきりと区分けできるパーソナリティの特徴づけられる同一性の混乱、崩壊、分裂が起きていて、多重人格のように交代意識が憑依するように現れている」と調べられました。
また、その病因や病態としては不明であるが、欧米においては本症の90%は小児期に虐待やネグレクトを受けているか、抵抗できないようなトラウマ的な出来事に関連するとも書かれていました。要するに、私は小児期のトラウマ的な出来事から自分自身を守るために生じていると理解しました。

私は小児期に起きた母親の死に対するトラウマの出来事と父親の虐待の状況から逃れるためや、自分を守るために別の人格として現れていたのかもしれません。
そこで、私は精神内科を受診し、後に大学病院を紹介されました。
大学病院では、今後の治療の前に合併症の確認をするということでした。合併症には、PTSD、抑うつ障害、その他の心的外傷およびストレス因関連症群の境界性パーソナリティ症、身体症状症、強迫症などがあると言って資料を渡されました。

治療は精神療法が中心となり、催眠療法などで詳細な病歴を聴取し、気づかれていない別人格を確認すること、最終的には解除することで分離されている人格を統合するのだそうです。
また、脳波に異常がある場合はカルバマゼピンのような抗てんかん薬、再発予防のためにSSRI、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、抗精神病薬が有効であるということでした。
生活には支障は出ていないのですが、治療を受けることにして通院し始めました。

精神療法の中で、私は自分が圭太や明美でもあることを認識しました。私たちはそれぞれ、私が抱えるトラウマから生まれた人格であり、自分を守るために現れた自分の分身なのです。
治療を受け始めてから、明美という人格の彼女の過去や現在の状況について深く考えることになりました。
明美は、鬱的で摂食障害があり、自殺企図もあるということでした。私が治療を受けている間にも、彼女は苦しみ続けていると思います。
そんなある日、明美と偽って私が書いたメールに、圭太として別人格の私が書いたと思われる返信がありました。圭太は、自分自身も同じように解離性同一症に苦しんでいるということを明かしてきました。そして、彼は私である明美に自分の幼少期に虐待を受けていた体験を話してきました。
不思議なことに、私は圭太とメールのやり取りすることで、自分と向き合うことができるようになってくるのがわかりました。そして、私は自分と向き合うことで、明美としての私が何をしたいのかを見つけることができたような気がしています。

これには治療の効果もあったのだと思います。治療は、催眠療法やEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)などの心理療法を中心に展開されました。私は医師の指示もあり、自分が持つ異なる人格の記憶を統合することで、過去のトラウマから解放されることを目指しています。

催眠療法によって分離された人格の性格など特定することができました。それぞれの人格は、自分自身が持つと思われる独自の思考や感情を持っていましたが、同じ過去の出来事に対して異なる見方をしていただけなのです。それぞれの人格の特徴を認識することで、過去のトラウマに対処する方法を学ぶことができたのかもしれません。

EMDRは、過去のトラウマが作り出す、余計なストレスや不安を軽減する効果があるとされている治療法です。私はEMDRによって過去のトラウマを抑圧し避けていたことに直面し、それを克服することで過去の出来事に対する感情的な反応を減らすことができたようです。

最終的に、私は自分自身を統合することができました。分離された人格を一つにまとめ、過去のトラウマから自由になることができ、自分が持つ強い意志力と、過去の出来事に対して受け入れることができるようになっていました。私は過去のトラウマから解放され、より良い未来を築くために新しい人生を始めることができました。
正直に言うと、今では圭太と明美は友達のように感じられていて、少し寂しさも残っています。

解離性同一症の概要

解離性同一症(DID)は、1人の人物が2つ以上の異なる人格状態を持つという精神障害です。以前は複数人格障害とも呼ばれていました。DID患者は、異なる人格状態が入れ替わったり、相互作用したりすることがあります。これは、DID患者が自分自身について持つ一貫性の欠如をもたらすことがあります。

DIDの原因は、通常、極端な身体的または性的虐待、または他の重大なストレス事象によって引き起こされると考えられています。虐待やストレスが重複する場合、DIDの発症リスクが高まります。

DID患者の人格状態は、互いに異なる特徴を持ちます。たとえば、1つの人格状態は冷静で理性的である一方、別の人格状態は攻撃的で感情的である場合があります。異なる人格状態は、特定の状況でトリガーが引かれたり、特定の出来事によって誘発されたりすることがあります。それぞれの人格状態は、その人格が管理する体験や記憶の一部を保持しており、他の人格状態が持つ情報や体験についてはほとんど知らないことがあります。

DIDの診断は、非常に複雑で時間のかかるプロセスであることがあります。治療法は、通常は認知行動療法、内的フォーカス・セラピー、または統合的な心理療法が用いられます。治療の主な目的は、異なる人格状態の統合を促進することです。DIDは、適切な治療を受けることで、大幅な改善が見られることがあります。

診断

解離性同一症(DID)は、以前は複数人格障害として知られていました。これは、個人が異なる人格状態になり、自己同一性を失う状態を指します。DIDは、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)とICD-11(国際疾病分類第11版)の両方で診断されることができます。

DSM-5での診断

2つ以上の個別で異なる人格状態またはアイデンティティが存在することであり、各人格状態が独自の感情、行動、認知、記憶のパターンを持つことがあります。また、自分自身が実際に存在していないかのように、現実感を失うことがあります。

DIDは「解離性症群」の一部として診断されます。診断の基準は以下の通りです。

  1. 複数の個性状態、または自己像が存在する。これらの個性状態の1つ以上は、ほかの個性状態の支配下にある、または他の個性状態によって置き換えられることがある。
  2. 2つ以上の個性状態が、自己または一般的な体験の整合的な認知、感情、行動に関する持続的な不一致を示す。
  3. 重大なストレスまたはトラウマ体験が存在する。
  4. 症状が臨床的に重要な苦痛または社会的、職業的な機能の低下を引き起こしている。
  5. 症状は、医学的な状態、薬物、または治療の副作用によって説明できない。
ICD-11での診断

2つ以上の異なるアイデンティティまたは人格状態が存在し、これらの状態が個人の振る舞いや思考の持続的な変化を引き起こすことが特徴であり、自己同一性の不連続性を示すことがあります。
「解離性障害スペクトラム」として診断されます。ICD-11は、個性状態に加えて、解離症状、解離性運動障害、解離性知覚障害など、さまざまな症状を含む幅広い解離性障害を包括しています。これは、DIDを包括する広いカテゴリーとして、より包括的であると考えられています。

解離性障害スペクトラムには、以下のようなサブタイプが含まれます。

  1. 解離性身体症状症
  2. 解離性運動症
  3. 解離性けいれん症
  4. 解離性失認
  5. 解離性知覚症
  6. 解離性同一症
  7. その他の解離性症

疫学・心理療法

疫学・病因

疫学については、正確な統計がないため、その頻度は正確には不明です。しかし、DIDは一般的に暴力がおよぶ児童期経験や虐待のような早期のトラウマ経験が存在することが、一般的であると示唆されています。

病因や病態については、いくつかの理論が提唱されています。一般的な理論は、DIDの発生には、トラウマや虐待などの強いストレス体験が関与しており、そのストレス体験が脳の発達に影響を与え、自己同一性が不安定になることが示唆されています。また、脳内の神経回路の不均衡に関連している可能性があるというものです。この理論によると、DIDは、脳内の神経回路が異常なまでに活発になり、個々の人格状態が活性化されると考えられています。

心理療法

治療の目標は、異なる人格状態の認識と統合、自己同一性の回復、およびトラウマ経験の処理です。具体的な治療法としては、統合的な心理療法(IPT)、認知行動療法(CBT)、および自己観察的心理療法が含まれます。

ただし、治療には特別な注意が必要です。DIDの人々は、自分自身の人格状態を意図的に切り替えることができる人もいるため、治療においては各人格状態を安定させることが重要です。治療は、慎重かつ専門的なアプローチを必要とするため、精神医学の専門家が関与することが望ましいとされています。

最近の研究では、DIDの診断と治療において、早期の介入が非常に重要であることが示唆されています。

DIDの診断には、慎重な評価と適切な専門知識を持った専門家による診断が必要です。精神医学的な評価には、患者の病歴の収集、身体的評価、心理テスト、および機能的な障害の評価が含まれます。また、DIDは他の精神障害や身体疾患、薬物使用障害など、他の状態と混同されることがあるため、診断は慎重に行われる必要があります。

解離性同一症の歴史

解離性同一症(DID)は、精神医学の歴史において長い間論争の的となってきました。以下に、DIDに関連する主要な出来事をいくつか紹介します。

歴史
19世紀初頭

19世紀初頭には、アメリカ合衆国の医師J.C.Coxが、2つの人格を持つ患者を報告しています。この時期は、DIDの症例報告が増えていく時期でした。

歴史
20世紀初頭

20世紀初頭には、フランスの精神科医Pierre Janetが、「分裂性精神病」という用語を提唱し、DIDを含めたさまざまな症状を研究しました。

歴史
20世紀中頃

20世紀中頃には、DIDが広く認められるようになりました。特に、アメリカ合衆国の精神科医Cornelius Wilburが、1950年代から1960年代にかけて、DIDの研究や治療を行い、多くの患者を報告しました。

歴史
1980年代

1980年代には、アメリカ精神医学会の診断・統計マニュアル第3版(DSM-III)で、DIDが公式に「分裂症」から「解離性同一症」という用語に変更され、診断基準が明確化されました。

歴史
1990年代以降

1990年代以降、DIDの存在が再び論争の的となりました。一部の研究者は、DIDは偽病であると主張し、診断の妥当性について議論が続いています。一方で、DIDの存在を支持する研究もあります。

現在では、DIDはまだ論争の的となっていますが、医学的に認められた疾患であり、適切な診断と治療が必要であるとされています。

歴史
2000年代以降

2000年代以降、解離性同一症(DID)の研究は進展し、新しい知見が得られています。

神経心理学的アプローチ

神経心理学的アプローチにより、DID患者が実際に異なる人格を持っていることが証明されました。
例えば、MRIなどの脳画像検査により、異なる人格に対応する異なる脳の活動パターンが観察されました。

トラウマとの関連性

DIDとトラウマの関連性について、新しい知見が得られました。DIDは、過去の身体的または性的虐待、精神的虐待、または他の重大なストレス事象によって引き起こされることがあります。

診断基準の変更

2013年に発行されたアメリカ精神医学会の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)では、DIDの診断基準が再度変更されました。これにより、過去の経験に基づく自己保護機構に起因する人格の分裂といった、より幅広い範囲の症例が診断できるようになりました。

治療法の進歩

DIDの治療法も進歩し、多くの患者にとって有効な治療法が見つかっています。特に、認知行動療法や、内的な自己理解を促すセラピー(内的フォーカス・セラピー、統合的な心理療法など)が有効であるとされています。

総じて、DIDに関する研究は進展していますが、依然としてDIDの存在が論争の的となることがあります。しかし、DID患者に対する適切な診断と治療が、精神医学において重要な課題となっています。

解離性同一症のセルフチェックリスト

解離性同一症(DID)の自己評価・セルフチェックリストです。このリストは、DIDの兆候や症状を評価するためのツールとして使用できます。各質問には、次のように回答してください。

1: 全く当てはまらない 2: あまり当てはまらない 3: 時々当てはまる 4: よく当てはまる 5: いつも当てはまる

このチェックリストは自己評価のためのものであり、正式な診断を行うものではありません。結果に関係なく、心配な症状がある場合は、必ず専門の精神科医やカウンセラーに相談してください。

解離性同一症の自己評価・セルフチェックリスト
1.自分がどこにいるのか、どうやってそこに来たのか分からないことがある。
2. 自分の行動や発言を思い出せないことが頻繁にある。
3.誰かが自分の体をコントロールしているように感じることがある。
4.自分の記憶にギャップがあることに気づいたことがある。
5.異なる人格が現れるときに、それが実際に自分であるかどうか疑うことがある。
6.他の人格が自分の生活に影響を与えていると感じることがある。
7.時折、自分が現実から切り離されているように感じる。
8.自分が何をしていたのか分からない時間がある。
9.他の人が自分の行動について話すとき、それが自分の記憶にないことがある。
10.頻繁に名前を変えたくなることがある。
11.他の人格の存在を感じることがある。
12.自分の意識が突然変わることがある。
13.人格が入れ替わるときに身体の感覚が変わることがある。
14.自分の声が突然変わることがある。
15.他の人格が自分の思考や感情を支配しているように感じることがある。
16.自分が見知らぬ場所で目覚めることがある。
17.自分が実際に存在していないように感じることがある。
18.他の人格が自分の生活に干渉していると感じることがある。
19.自分が何をしているのか分からなくなることがある。
20.他の人格の記憶が断片的に浮かび上がることがある。
21.自分の人生が一貫していないように感じることがある。
22.異なる人格が特定の時間に現れることがある。
23.人格が入れ替わるときに身体の動きが変わることがある。
24.自分がコントロールできない言動があると感じることがある。
25.他の人格が自分の意思に反して行動することがある。
26.自分の考えが突然変わることがある。
27.他の人格が自分の意識を奪うことがある。
28.自分が自分でないように感じることがある。
29.異なる人格が特定の出来事に対して反応することがある。
30.自分の名前やアイデンティティが混乱することがある。
31.自分の感情が突然変わることがある。
32.他の人格が自分の思考を支配することがある。
33.自分が現実から遠ざかっているように感じることがある。
34.他の人格が自分の体を使って行動することがある。
35.自分の行動が予測できないことがある。
36.他の人格が自分の意識を乗っ取ることがある。
37.自分の記憶が曖昧になることがある。
38.他の人格が自分の感情を支配することがある。
39.自分が現実から切り離されているように感じることがある。
40.他の人格が自分の体を使って言動することがある。
41.自分の意識が突然変わることがある。
42.他の人格が自分の行動をコントロールすることがある。
43.自分が存在していないように感じることがある。
44.他の人格が自分の思考を支配することがある。
45.自分が何をしているのか分からなくなることがある。
46.他の人格が自分の感情をコントロールすることがある。
47.自分が現実から遠ざかっているように感じることがある。
48.他の人格が自分の体を使って行動することがある。
49.自分の意識が突然変わることがある。
50.他の人格が自分の行動をコントロールすることがある。

解離性同一症の自己評価・セルフチェックリスト

評価基準

合計点DIDの評価
50-100点DIDの可能性は低いです。ただし、解離症状がある場合は専門家に相談することをお勧めします。
101-200点中程度のDIDの兆候が見られます。詳しい評価と診断のために専門家に相談することを強くお勧めします。
201-250点高度なDIDの兆候が見られます。専門家による緊急の評価と治療が必要です。
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