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依存症に対するACT療法の実践セッション

目次

アルコール依存症とギャンブル依存症のクライエントに対するACT療法の実践セッションをセラピストとクライエントの具体的会話例から紹介

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、うつ病や不安障害、パニック障害、強迫性障害、摂食障害など幅広く適応可能だと言われています。従来の心理療法は、不快な思考や感情を再構築して思考の選択肢を増やすことや、直接的に暴露する方法、また、セラピストととの会話を通じて症状を緩和することが中心でした。しかし、ACTでは苦痛や不快な感情、思考、感覚を避けるのではなく、それらを受け入れることが重要だとされていて、同時に人生における価値観や目標を明確にし、それに基づいて行動することを強調しています。

このページでは、依存症の中でも多くの症例があるアルコール依存症とギャンブル依存症に対して焦点を当てていきます。アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は依存症に対して非常に効果的なアプローチとなる理由として、依存症の根底にある感情や思考に向き合い、それを避けるのではなく受け入れることで、クライエントが依存的な行動に囚われることなく、自分の価値に沿った行動を選択できるように導いていくことにあります。

ACTが依存症に効果的な理由

ACTは、依存症の治療において、不快な感情や衝動と向き合いながらも、自分の価値に基づいた生き方を促進するための効果的なアプローチです。依存症には、アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症(病的賭博)、インターネットゲーミング・スマートフォン依存症などがあり、過食症なども依存症の側面があるとされていますが、 このように行動や習慣に関連する行動嗜癖の背後にある回避行動や固定観念に取り組み、依存がなくなる道筋を示します。このため、ACTは依存症の治療に適しているとされています。

  • 回避行動への対処
    依存症の多くは、感情的な不快感やストレスを避けるための回避行動として発展します。ACTでは、感情や思考を避けるのではなく、それらを受け入れることを強調します。この受容のプロセスにより、依存症の人は感情や思考に囚われることなく、それらを受け入れながらも、自分にとって重要な価値に基づいた行動を選択できるようになります。
  • 価値観に基づく行動
    ACTでは、自分の価値観を明確にし、それに基づいて行動することを重視します。依存症の人は、自分の行動が自分の価値観と矛盾していることに気づかずにいます。ACTは、価値観に基づいた生活を再建するためのツールを提供し、その結果、依存行動から離れる動機を強化することです。
  • マインドフルネスの活用
    ACTではマインドフルネスの実践を重要視していて、現在の瞬間に意識を集中させることで、衝動的な依存行動が抑制され、依存行動に至る前に自分の感情や思考に気づき、それに対処することが可能になります。
  • 認知的柔軟性の促進
    ACTでは、自分の思考や信念に囚われることなく、それらを柔軟に扱う療法でもあります。特に依存症の人は「自分は変わらない」や「これがないと生きていけない」といった固執した考えを持っています。ACTでは、これらの固定観念から距離を置き、新しい行動パターンを受け入れる柔軟性を養います。
  • 長期的な行動変容
    ACTは、症状の抑制や一時的な改善に留まらず、持続可能な行動変容を遂げることを目指します。依存症の治療において、ACTは自己理解を深め、依存行動に代わる健康的な行動を長期にわたって維持するための支援を提供することです。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

クライエントの依存症の背景

クライエントのアルコール依存とギャンブル依存の背景

私は会社員ですが、上司からのパワハラや同僚からの嫌がらせを感じてしまい、深酒をするようになりました。会社のことを言い訳にして、休日にはパチンコや競馬に通うようになり、ストレスを発散していました。そのことを繰り返すうちにパワハラや嫌がらせが頭から離れなくなり、会社も休みがちでお酒やギャンブルをする機会も増えてきて、最終的には会社に行きづらいことがたびたび出てきています。そこで、一切のギャンブルのことは告げずに精神科を受診した結果、適応障害という診断名がついたので、会社には適応障害で長期休暇を申請しています。私は自分が適応障害だと思っていませんので、医師処方の不安薬や睡眠導入剤も飲んでいません。
私は、会社の事象が起こる前から、アルコールもギャンブルもハマりがちでしたが、現在は働くことから逃げるようにアルコールとギャンブルに生きがいを感じていて、借金をしてまでも止められなく依存的に続けることに幸せさえ感じています。 ただ、先行きが不安でアルコールとギャンブルを止めたいとは思っています。実際には適応障害もあるかもしれませんが、長い間続けている依存症が一番の悩みです。

依存症に対するACT療法-簡潔編

依存症におけるACTの具体的アプローチでは、クライエントが不快な感情や思考を避けるのではなく、それを受け入れ、価値観に基づいた行動を選択することを重視します。依存症の場合、このアプローチはクライエントが自分の依存行動にどのように対処し、新しい行動を選び続けるかをサポートする上で非常に有効です。

次のようなステップを通じて、セラピストとクライエントは、依存症の克服に向けた新たな行動を選び、その行動がクライエントの価値観に沿ったものであることを確認しながら進めていきます。

ACTの8つのステップの具体的なセラピストとクライエントのアプローチと会話例を紹介します。

STEP
導入とラポール形成 (Introduction and Rapport Building)

最初のセッションでは、セラピストはクライエントとの信頼関係を築くことを重視します。この段階で、セラピストはクライエントが話しやすい環境を作り、依存症に関するストーリーを聞き出します。

セラピスト: 「今日はお越しいただきましてありがとうございます。まずは、あなたがどのような状況にあるのか、どのような思いでここに来られたのかをお聞かせいただけますか?」

クライエント: 「私は最近、アルコールとギャンブルの問題で悩んでいます。特に仕事のストレスから逃げるために酷くなり、今ではそれが止められなくなってしまいました。」

STEP
アクセプタンス (Acceptance)

このステップでは、クライエントが避けてきた不快な感情や思考を受け入れることを学びます。セラピストは、クライエントにこれらの感情を認識し、回避するのではなく受け入れることの重要性を説明します。

セラピスト: 「アルコールやギャンブルは、今まで感じてきた不安やストレスから逃れるための方法として使われてきたのですね。しかし、それらの感情を感じることは、実は自然なことなんです。それを無理に避けようとするのではなく、まずはその感情が存在していることを受け入れてみましょう。」

クライエント: 「そうかもしれません。でも、あの嫌な感情を再び感じるのは怖いです。」

セラピスト: 「その気持ちもよくわかります。でも、怖さを感じながらも、その感情に少しずつ向き合っていくことで、アルコールやギャンブル以外の方法で対処できるようになりますよ。」

STEP
認知デフュージョン (Cognitive Defusion)

ここでは、クライエントが自分の思考と距離を置く方法を学びます。セラピストは、思考を文字通りに受け取るのではなく、それを単なる思考として認識する練習をします。

セラピスト: 「例えば、私はダメな人間だ』という考えが浮かんできたとき、それはただの考えに過ぎないということを理解する練習をしてみましょう。この考えに引きずられるのではなく、『今、自分はこう考えている』と、そのままの形で観察してみてください。」

クライエント: 「なるほど。たしかに『ダメな人間』と思うと、そのままアルコールに逃げたくなります。」

セラピスト: 「その思考が浮かんだとき、深呼吸をしてそのまま流れるように観察してみましょう。そうすることで、思考に支配されることなく、自分の行動を選べるようになります。」

STEP
現在の瞬間に焦点を当てる (Present Moment Awareness)

このステップでは、クライエントが現在の瞬間に集中し、過去の出来事や未来の不安に囚われることなく、今ここで何が起きているかを認識する練習をします。

セラピスト: 「今この瞬間に焦点を当ててみましょう。今、あなたがどんな気持ちを感じているか、どんなことを考えているかを観察してみてください。」

クライエント: 「今は少し緊張しています。でも、過去のことを考えるよりも、この場にいることに集中すると、少し落ち着いてきます。」

セラピスト: 「その通りです。過去や未来にとらわれず、今この瞬間を感じることができると、あなたの行動に新しい選択肢が生まれます。」

STEP
自己観察 (Self-as-Context)

クライエントは自分を思考や感情の背後にある存在として認識し、自己を観察者として位置づけます。これにより、クライエントは自分自身を一歩引いて見ることができ、行動を選択する自由を持つことができます。

セラピスト: 「あなたの感情や思考は、あなた自身ではなく、あなたが感じたり考えたりするものだということを理解するのが重要です。あなたはそれらを観察する存在であり、その観察者としての自分を意識してみましょう。」

クライエント: 「確かに、私はその感情に振り回されていた気がします。」

セラピスト: 「その観察者としての自己を強化することで、あなたが選びたい行動を選択しやすくなります。」

STEP
価値観の明示 (Values Clarification)

クライエントが自分の価値観を明確にし、その価値観に基づいて行動することができるようにします。このステップでは、クライエントが自分の人生で何を大切にしているのかを再確認します。

セラピト: 「あなたが大切にしている価値観は何ですか?例えば、どんなことを重視していますか?」

クライエント: 「やはり、自分の努力が認められることや、他の人と協力して何かを達成することが大切だと思います。」

セラピスト: 「素晴らしい価値観ですね。これからの行動は、その価値観に基づいて選んでいくことが大切です。」

STEP
コミットメント行動 (Committed Action)

ここでは、クライエントが自分の価値観に基づいた具体的な行動を選択し、それを実行していくことをサポートします。このステップでは、クライエントが小さな行動から始めて、それを積み重ねていくことが強調されます。

セラピスト: 「今週、何か小さな一歩として、どのような行動を取ることができますか?」

クライエント: 「今週は、ギャンブルをやめて、友人と外でのんびり過ごす時間を作ってみたいと思います。」

セラピスト: 「とても良い選択です。それを実行した後の気持ちや結果を次回のセッションで振り返りましょう。」

STEP
評価と調整 (Assessment and Adaptation)

クライエントが実行した行動の結果を振り返り、その行動が価値観と一致しているか、必要に応じて調整します。

セラピスト: 「先週の行動を振り返って、どんな気持ちでしたか?何がうまくいき、何が課題として残りましたか?」

クライエント: 「友人と過ごす時間は楽しかったですが、やはりギャンブルをしたいという気持ちが強く出てしまいました。」

セラピスト: 「それでも友人と時間を過ごしたのは、大きな一歩ですね。次回は、ギャンブルへの衝動に対処する新しい方法を一緒に考えてみましょう。そして、その方法が自分の価値観とどう関連しているかを見てみましょう。」

依存症に対するACT療法-詳細編

ACT6ステップのための一人でできるトレーニング「マインドフルネス・エクササイズ・フレームワーク」をご覧ください。

STEP
依存症のケースの導入とラポール形成

依存症のケースにおける導入とラポール形成は、セラピーの成功にとって非常に重要なステップです。ここでは、セラピストとクライエントの関係を築き、クライエントが安心して自分の問題を話せる環境を整えることが目的です。

導入とラポール形成の重要性

この初期段階でのラポール形成は、クライエントが今後のセラピーセッションに積極的に参加できるかどうかを左右する重要なプロセスです。クライエントが安心して自分の感情や問題について話せるようになることで、セラピーの効果が高まります。

セラピストは、クライエントが抱えている問題の背景にある感情や思考を理解し、評価するための基盤を築きます。また、セラピストの共感的な態度や理解がクライエントの信頼を得ることで、セラピーがより深く、効果的なものとなります。

STEP
セッションの開始

セラピーが初めてのクライエントは緊張していることが多いので、セラピストはリラックスした雰囲気を作り、クライエントが安心して話せるように心がけます。

セラピスト: 「こんにちは。今日はお越しいただいてありがとうございます。ここでは、あなたがどんなことでも安心してお話しできる場所です。まずは、今日来てくださった理由や、最近感じていることについて少しお聞かせいただけますか?」

クライエント: 「こんにちは…。正直、どこから話せばいいのか分からないんですが、最近は仕事のストレスでアルコールやギャンブルに頼ることが多くなってしまっていて…。自分でもそれが良くないってわかっているんですが、どうしてもやめられなくて。」

セラピスト: 「それはとても辛いですね。ストレスから逃げたいという気持ち、とてもよく理解できます。あなたが今どのような状況にあるのか、少しずつ一緒に探っていけたらと思っています。」

STEP
クライエントの不安を和らげる

ここでセラピストは、クライエントが感じている不安や緊張を和らげるために、セッションの進め方や目的について説明します。

セラピスト: 「このセッションでは、まずあなたが何を感じているのか、どのようなことが問題となっているのかをお伺いします。すぐに解決策を見つけることが目的ではなく、まずはあなたの感じていることを理解することが大切だと思っています。焦らず、一緒に考えていきましょう。」

クライエント: 「そう言ってもらえると少しホッとします。どうしても、自分が弱いからこうなってしまったんじゃないかと、自分を責めてしまうことが多くて。」

セラピスト: 「自分を責める気持ちはよくわかります。でも、ここではその責める気持ちのことも含めて、どんな感情でも自由に話していいんです。あなたが今どんな風に感じているのか、何が一番辛いのか、少しずつ話していきましょう。」

STEP
問題に対する理解を深める

この段階で、セラピストはクライエントが抱えている問題について、さらに詳しく理解しようとします。

セラピスト: 「アルコールやギャンブルに頼ってしまうことが増えたとおっしゃいましたが、それが始まったのはいつ頃からでしょうか?どんな時に特にそう感じますか?」

クライエント: 「依存はずっと前からだったんですが、強く現れてきたのは半年くらい前からです。仕事がすごく忙しくなって、特に上司との関係がうまくいかなくなってからです。家に帰っても何もしたくなくて、つい飲んだり、ギャンブルに行ってしまうんです。」

セラピスト: 「その時のあなたの気持ちを教えてもらえますか?例えば、飲んでいる時やギャンブルをしている時に、どんな感情を感じていますか?」

クライエント: 「そうですね…。飲んでいるときは、少しだけ現実から逃れられた気がして楽になるんです。でも、その後は罪悪感がすごくて。ギャンブルも同じで、一時的には興奮して楽しいけど、終わった後は自己嫌悪でいっぱいになります。」

STEP
ラポールの確立

クライエントが自分の感情や思考を安心して話せるようになることで、ラポールが確立されます。この信頼関係を基盤に、クライエントはより深いレベルで自分の問題を探求することが可能になります。

セラピスト: 「あなたが感じていることを正直に話してくださることに感謝しています。ここでお話した内容は、守秘義務によってすべて守られますので、どんなことでも自由に話してくださいね。あなたが少しでも楽になれるように、これから一緒に考えていきましょう。」

クライエント: 「ありがとうございます…。少し話して楽になった気がします。」

セラピスト: 「それは良かったです。これから、あなたがどのように感じているか、そしてどうしていきたいかを一緒に探っていけたらと思います。まずはゆっくりと、自分のペースで進めていきましょう。」

STEP
アクセプタンス(Acceptance)

アクセプタンス(Acceptance)は、ACTの基本的な要素の一つであり、クライエントが自分の内面の体験(感情や感覚)を避けたり抑圧するのではなく、それらをそのまま受け入れることを目指します。このプロセスでは、クライエントが自身の苦痛や不快感を受け入れることを学び、それに対して柔軟な態度をとることで、苦痛が生活に与える影響を減らしていきます。

ここでは、クライエントがアルコール依存とギャンブル依存を抱えているケースにおいて、アクセプタンスをどのように導入し、クライエントがそれを受け入れるプロセスを支援するかを具体的な会話形式で紹介します。

アクセプタンスのプロセス

アクセプタンスはクライエントが自分の感情や体の感覚をそのまま受け入れることを促進するプロセスです。セラピストは、クライエントが自分の感覚に対して評価や判断を加えず、そのままの状態で存在させることを支援します。これにより、クライエントは苦痛から逃げるのではなく、それに向き合う力を養い、その後の行動に影響を与えないようにすることができます。

STEP
セッションの開始

セラピスト: 「今日は、あなたが感じているストレスや苦痛についてもう少し詳しくお話ししていただけますか?それらがあなたにどのような影響を与えているのか、そしてそれに対してどのように対処してきたのかを教えてください。」

クライエント: 「ええ、やっぱり仕事でのプレッシャーが大きいです。上司の厳しい言葉や同僚からの無視が続いていて…。それで、つい飲み過ぎたり、ギャンブルに走ってしまうんです。」

STEP
苦痛のアクセプタンスの導入

セラピスト: 「それは本当に辛い状況ですね。ストレスや不安、孤独感を感じるのは当然のことですし、誰でもそのような状況に置かれれば、何かでその痛みを和らげたくなるものです。ただ、ここで少し違った視点を持ってみませんか?この痛みや不安感は、あなたの人生にとって避けられないものであり、それらを完全に取り除くことは難しいのかもしれません。だったら、それらをそのまま受け入れてみることができたらどうでしょうか?」

クライエント: 「受け入れる、ですか?それは難しいですね…。これまでずっとそれから逃げることしか考えていませんでした。」

セラピスト: 「そうですよね。多くの人が痛みや不安から逃れようとします。でも、その逃避行動がかえって問題を深刻にしてしまうこともあります。そこで、少しの間だけ、その痛みや不安と一緒にいることを試してみるのはどうでしょうか?例えば、今この瞬間にどんな感情や体の感覚があるかをただ観察してみるんです。それを良い悪いと判断せずに、そのままの形で存在させるんです。」

STEP
アクセプタンスの実践

クライエント: 「そんなことができるのでしょうか…。今、胸の中がざわざわして、すごく落ち着かない気持ちがします。」

セラピスト: 「そのざわざわとした感じを感じることに少し集中してみましょう。どんな感覚がそこにありますか?例えば、心臓の鼓動が速くなっているとか、胸のあたりに緊張感があるとか。」

クライエント: 「確かに、胸が締め付けられるような感じです。息苦しさも感じます。」

セラピスト: 「その感覚をただ観察してみましょう。何かを変えようとせず、ただそのままの状態でそこにあることを許してみてください。その感覚がどんな形であれ、そこに存在することを受け入れることができるか試してみましょう。」

クライエント: (深呼吸をして)「少しずつ、その感覚が変わっていくような気がします。でも、まだ完全に受け入れられているかは分かりません。」

セラピスト: 「それでも大丈夫です。アクセプタンスは練習が必要なものです。今日はその第一歩を踏み出せたことが重要なんです。これからも少しずつ、その感覚や感情を受け入れる練習を続けていきましょう。無理に変えようとしなくていいんです。ただ、その感覚があることを認め、その存在を許すということがポイントです。」

STEP
アクセプタンスの重要性の理解

セラピスト: 「痛みや不安感を完全に取り除くことはできなくても、それらを受け入れることで、それがあなたの意思や行動の選択を支配しなくなるんです。受け入れることは、それに支配されることとは違います。それに気づくことで、少しずつあなたの人生を取り戻すための第一歩を踏み出すことができるんです。」

クライエント: 「なるほど…。少しずつやってみます。これができるようになれば、アルコールやギャンブルに頼ることも少しは減らせるかもしれませんね。」

セラピスト: 「そうですね。自分自身を責めることなく、その感情をただ受け入れることで、他の選択肢も見えてくるかもしれません。今後もその感覚を持ちながら、一緒に進んでいきましょう。」

STEP
認知デフュージョン(Cognitive Defusion)

認知デフュージョン(Cognitive Defusion)は、ACTの重要な要素の一つで、クライエントが自分の思考に囚われすぎるのを防ぐための技法です。これにより、思考に対する距離を取り、それらがクライエントの行動や感情状態を過度に支配しないようにすることが目的です。認知デフュージョンのプロセスでは、クライエントが自分の思考を客観的に捉え、思考と現実を混同して影響されているだけの「ただの言葉」として認識できるようにすることが重視されます。

アルコール依存症とギャンブル依存症を抱えるクライエントに対して、セラピストが認知デフュージョンを導入し、クライエントが思考に対する距離を取り、柔軟に対処できるようになるまでのプロセスを具体的な会話形式で紹介します。

認知デフュージョンのプロセス

認知デフュージョンはクライエントが思考に対して距離を置くことで、それらに過度に影響されないようにする技法です。言語行動が作り出す思考の世界では、様々な刺激同士が容易に結び付き、思考と現実を混同して影響を受けることで、いつまででも考えることが可能になります。セラピストは、クライエントが自分の思考を「ただの言葉」として認識し、それに囚われることなく行動できるようサポートします。これにより、クライエントは思考の影響から解放され、自分の価値観に基づいた行動をより自由に選べるようになります。

STEP
セッションの開始

セラピスト: 「前回のセッションでは、あなたが感じているストレスや不安について話しましたね。今日は、思考に対する新しいアプローチを試してみましょう。まず、最近強く感じた思考について、どんなものがありましたか?」

クライエント: 「そうですね、例えば、『自分はダメな人間だ』とか『もうどうせ変われない』という思いが頭の中をぐるぐる回ってしまいます。それを考えると、ついお酒を飲んだり、ギャンブルをしてしまうんです。」

STEP
認知デフュージョンの導入

セラピスト: 「その思考が出てきたとき、どのように感じますか?」

クライエント: 「もうどうしようもないって気持ちになります。何もかもが無意味に思えて、つい逃げたくなるんです。」

セラピスト: 「その思考が強くなると、まるでその思考が現実のように感じられますよね。でも、実際にはそれは「ただの言葉」であり、あなた自身がその思考に意味を与えているんです。今日は、その思考を少し違った視点から見てみましょう。例えば、今あなたが『自分はダメな人間だ』という思考を持っているとしましょう。その思考をそのまま言葉にして、頭の中で繰り返してみてください。」

クライエント: 「『自分はダメな人間だ』…うん、そうですね。」

STEP
認知デフュージョンの実践

セラピスト: 「今度は、その思考に対して少し距離を置いてみます。『自分はダメな人間だ』という言葉の前に『私は今、だと考えている』とという言葉を付け加えて、『私は今、自分はダメな人間だと考えている』と言ってみてください。」

クライエント: 「『私は今、自分はダメな人間だと考えている』…なんだか、少し違って聞こえますね。」

セラピスト: 「そうですよね。その違いは何でしょうか?」

クライエト: 「まるで、私がその思考をただ見ている感じです。前ほど強く感じなくなりました。」

セラピスト: 「それが認知デフュージョンの効果です。私たちの思考は、時にはとてもリアルに感じられますが、実際にはそれはただの言葉の集まりに過ぎません。今のように、『考えている』ということを意識するだけで、その思考から距離を置くことができるんです。」

クライエント: 「なるほど…。これを練習すれば、思考に振り回されることが少なくなるかもしれませんね。」

STEP
思考に対する新しい視点

セラピスト: 「その通りです。さらに試してみましょう。今度はその思考『自分はダメな人間だ』を言葉として捉え、その言葉『自分はダメな人間だ』を心の中で何度も繰り返してみてください。例えば、20秒ほど繰り返すと、どんな感じがしますか?」

クライエント: (繰り返しを行った後)「不思議です…だんだん『自分はダメな人間だ』の言葉が意味を失ってきた感じがします。最初は重く感じたのに、今はただの言葉みたいです。」

セラピスト: 「それがまさに認知デフュージョンです。思考をただの言葉として捉えることで、その影響力を弱めることができます。これを続けることで、あなたがその思考に支配されず、自分の価値観に基づいた行動を選択する力がついてきます。」

STEP
日常生活での応用

クライエント: 「これを日常で使えたら、もっと冷静になれるかもしれませんね。特に、お酒を飲みたくなるときや、ギャンブルに行きたくなるときに。」

セラピスト: 「そうですね。次回のセッションまで、この方法を試してみてください。何か強い思考が浮かんだとき、それに対して『私は今○○だと考えている』と付け加えてみる。そして、その思考がただの言葉であることを認識してみてください。その結果どう感じたか、次回一緒に振り返りましょう。」

クライエント: 「分かりました。試してみます。」

STEP
現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)

現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)は、ACTの中核的な要素の一つであり、クライエントが過去の後悔や未来への不安に囚われるのではなく、今ここに存在する瞬間に意識を向けることを学ぶプロセスです。このアプローチは、マインドフルネスの技法に基づいており、クライエントが現在の瞬間に完全に意識を集中させることで、思考や感情から距離を置き、現実の状況により適応的に対応できるようにすることを目指します。

アルコール依存症とギャンブル依存症を抱えるクライエントに対して、セラピストが「現在の瞬間に焦点を当てる」ことを導入し、クライエントが過去や未来にとらわれず、今この瞬間に注意を向けるようになるまでのプロセスを具体的な会話形式で紹介します。

現在の瞬間に焦点を当てるプロセス

現在の瞬間に焦点を当てる練習は、クライエントが過去の後悔や未来への不安にとらわれることなく、今ここに集中できるようにするためのものです。セラピストは、クライエントがマインドフルネスの技法を日常生活に応用し、ストレスや衝動に対処できるようサポートします。これにより、クライエントは現在の瞬間における自分の感情や思考に対してより柔軟に対応できるようになります。

STEP
セッションの開始

セラピスト: 「前回は、あなたの思考に距離を置くための方法として、認知デフュージョンを練習しましたね。今日は、さらにその次のステップとして、現在の瞬間に意識を向ける方法について取り組んでみたいと思います。これまで、今この瞬間に集中することはありましたか?」

クライエント: 「あまり意識していなかったかもしれません。いつも過去のことを考えたり、未来のことを不安に思ったりしていて、今何をしているかに集中できていない気がします。」

STEP
現在の瞬間に焦点を当てることの導入

セラピスト: 「そうですね、過去や未来に意識が行ってしまうことは自然なことですが、今この瞬間に意識を向けることで、あなたが今すべきことに集中できるようになります。では、少し練習してみましょう。目を閉じて、あなたの呼吸に意識を向けてみてください。息を吸って、吐く…そのリズムに集中してみましょう。」

クライエント: 「…(しばらくの間、呼吸に集中する)」

セラピスト: 「呼吸のリズムを感じながら、体の中でどの部分が動いているかを意識してみてください。呼吸のたびに、体のどこが膨らんで、どこが収縮しているかを感じてください。」

クライエント: 「胸が膨らんで、肩が少し動いています。」

セラピスト: 「いいですね。今度は、周りの音に意識を向けてみましょう。どんな音が聞こえてきますか?」

クライエト: 「車の音が遠くから聞こえてきます。それから、風が窓を揺らしている音もします。」

STEP
現在の瞬間に集中する練習

セラピスト: 「その音に耳を澄ませながら、その音がどこから来ているか、どのくらいの距離にあるかを感じてみてください。その音だけに意識を集中させることで、他の思考や感情から少し距離を取ることができます。」

クライエント: 「そうですね、音に集中していると、他のことをあまり考えなくなります。」

セラピスト: 「その感覚を覚えておいてください。今この瞬間に集中することで、過去のことや未来のことから少し離れることができ、心が軽くなることがあるんです。これが、現在の瞬間に意識を向けることの効果です。」

STEP
日常生活での応用

セラピスト: 「この練習は、日常生活の中でも使えます。例えば、お酒を飲みたくなったり、ギャンブルをしたくなったりするときに、その衝動がどこから来ているかを感じながら、その瞬間に何が起こっているかに意識を集中してみてください。今感じている感情や体の反応に集中し、それをただ観察することで、その衝動に対処しやすくなります。」

クライエント: 「確かに、衝動が起こるときは、何かに捉われている気がします。それを観察することで、もう少し冷静に対処できるかもしれませんね。」

セラピスト: 「その通りです。次回のセッションまで、この練習を続けてみてください。特に、衝動が強くなったときに、自分が今何を感じ、何を考えているかを観察し、その瞬間に意識を集中することを試してみてください。そして、どのように感じたか、次回一緒に振り返りましょう。」

クライエント: 「分かりました。やってみます。」

STEP
自己観察(Self-as-Context)

自己観察(Self-as-Context)は、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)の中心的な概念の一つであり、クライエントが自己を「物語る自己」(自己概念や役割に基づく自己)ではなく、より広い視点から「観察する自己」として捉えることを促すものです。このプロセスにより、クライエントは自分の感情、思考、記憶などを一時的な出来事として捉え、それらに囚われることなく柔軟に対処できるようになります。

自己観察をクライエントに導入し、実際のセラピーセッションでセラピストとクライエントがどのように対話を進めるかの具体例を示します。

自己観察のプロセス

自己観察(Self-as-Context)は、クライエントが自分の思考や感情から距離を置き、より広い視点で自己を捉えることを促します。これにより、クライエントは自分のネガティブなラベルや自己評価に囚われることなく、自己を観察する立場として自分を理解し、柔軟に対処できるようになります。

STEP
セッションの開始

セラピスト: 「今日は、あなた自身を新しい視点から捉えることについてお話ししたいと思います。これまで、自分のことをどのように見てきましたか?たとえば、仕事や家庭での役割や、自分に対するレッテルを貼るようなラベルがあると思いますが。」

クライエント: 「そうですね、私は自分を『ダメな会社員』とか、『失敗した人間』とか、そういうふうに思うことが多いです。最近は特に、自分が価値のない人間だと感じることが多いです。」

STEP
自己観察の導入

セラピスト: 「それは辛いですね。そういったラベルや自己評価は、私たちが自分をどう見ているかに強く影響します。でも、今日お話ししたいのは、こうしたラベルや評価から少し距離を置いて、自分を別の角度から見る方法です。それが『観察する自己』という概念です。」

クライエント: 「観察する自己…?それはどういう意味ですか?」

セラピスト: 「簡単に言うと、私たちは自分の思考や感情、記憶を観察することができる存在であるということです。例えば『失敗した人間』だと感じているとき、その思考を観察することができますよね?自分の中で『失敗した』と感じる部分と、それを観察している部分があるんです。」

クライエント: 「なるほど…自分の考えを外から見ているような感じですか?」

STEP
観察する自己の練習

セラピスト: 「そうです。では、少し練習してみましょう。今、この瞬間に浮かんでいる考えや感情に意識を向けてみてください。そして、その考えや感情を、まるで自分が映画を観ているかのように、少し距離を置いて観察してみましょう。」

クライエント: 「今感じているのは、不安と、自分に対する批判的な思いです。」

セラピスト: 「その不安や批判的な思いを、まるで空に浮かぶ雲のように、少し離れた場所から見ているイメージで観察してみてください。それらはただの思考や感情であり、あなた自身とは別の存在です。あなたは、それを見つめる存在としてそこにいます。」

クライエント: 「少し不思議な感じがしますが、確かに、そういう視点で見ると、自分がその感情や思考に縛られているわけではないような気がします。」

セラピスト: 「そうです、それが『観察する自己』の視点です。私たちは、自分の思考や感情、記憶に気づくことができますが、それらに囚われる必要はありません。あなた自身は、その思考や感情を観察できる広い空のような存在であり、どんな雲(思考や感情)が現れても、その空は変わりません。」

STEP
自己観察を日常生活に取り入れる

セラピスト: 「この視点は、日常生活でも非常に役立ちます。たとえば、アルコールやギャンブルへの衝動が強くなったときに、その衝動を観察することができます。『私は今、飲みたいという強い衝動を感じている』と、自分で気づくことができれば、その衝動に対して一歩引いた視点を持つことができます。」

クライエント: 「それができるようになれば、もっと冷静に対応できるかもしれませんね。」

セラピスト: 「その通りです。この視点を持つことで、あなたは自分の衝動や感情に支配されることなく、自分が本当に大切にしていることに基づいて行動することができます。次回のセッションまで、この『観察する自己』の視点を意識して、日常の中で使ってみてください。そして、どのように感じたか、次回一緒に振り返りましょう。」

クライエント: 「分かりました。試してみます。」

自己観察の具体的ケース

「自己観察(Self-as-Context)」の力を借りて、自分の行動や感情を冷静に観察し、客観的に捉えることで、ストレスや依存に対する反応をより健全に管理できるようになります。このプロセスを通じて、より意識的で選択的な行動を取ることができるようになるはずです。

パワハラや嫌がらせが頭から離れなくなり、会社も休みがちでお酒やギャンブルをする機会が増え、最終的には会社に行きづらくなっている

STEP
気づきのステップ

パワハラや嫌がらせのことが頭を離れず、苦しさやストレスを感じている瞬間に、「今、自分がこの問題についてどのように感じているか」に気づきます。「私は今、上司や同僚の行動を思い出してストレスを感じている」と認識します。

STEP
ラベリングのステップ

このストレスを「ストレス反応」としてラベル付けします。「これは、私が仕事上のストレスに反応している感情だ」と理解し、その感情を切り離して観察します。

STEP
観察者としての自分を意識するステップ

自分がそのストレスや感情を「観察する存在」であると認識します。「私は今、ストレスを感じているが、それは私の感情であり、私はその感情を観察している存在だ」と自分に言い聞かせます。

STEP
行動の観察

そのストレスが引き金となってお酒やギャンブルに走りそうなとき、その行動の動機を観察します。「私は今、この感情から逃げるためにお酒やギャンブルに頼ろうとしている」と気づくことで、自分の行動とその背後にある感情を冷静に観察します。

STEP
行動の選択

自分がどう感じているかを観察した上で、今この瞬間に何をするかを選びます。「今、私はお酒やギャンブルに頼るのではなく、別の方法でこの感情に向き合うことができる」と、選択肢があることを認識します。

会社の事象が起こる前から、アルコールもギャンブルもハマりがちで、現在は働くことから逃げるようにアルコールとギャンブルに生きがいを感じている

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気づきのステップ

アルコールやギャンブルに依存することへの欲求が強くなる瞬間に、「今、自分がどのような気持ちでその行動をしているか」を意識します。「私は今、ストレスや不安を感じているからお酒やギャンブルに逃げ込もうとしている」と認識します。

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ラベリングのステップ

この依存の衝動を「依存行動」としてラベル付けします。「これは私が感じている不安や逃避の感情に対する依存の反応だ」と理解します。

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観察者としての自分を意識するステップ

自分がその依存的な衝動や欲求を「観察する存在」であると認識します。「私は今、アルコールやギャンブルに強く引かれているが、それは私の感情や欲求であり、私はそれを観察しているだけだ」と感じます。

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幸せと依存の観察

依存的な行動をする際に感じる「幸せ感」を観察します。「私は今、この行動で一時的な満足感や幸せを感じているが、それが本当の幸せなのか」と問いかけます。この時点で、依存による一時的な幸せと、それが長期的にどのような影響を及ぼしているかを冷静に観察します。

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未来の選択を考える

自分がどのような未来を望んでいるかを観察し、今の行動がその未来にどう影響するかを考えます。「このまま依存を続けた場合、私はどのような結果を招くのか」と自分に問い、未来の選択肢を検討します。

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価値観の明示(Values Clarification)

価値観の明示(Values Clarification)は、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)の重要なステップの一つで、クライエントが自分にとって本当に大切な価値や目標を明確にし、それに基づいて行動することを目指します。価値観の明示を通じて、クライエントはどのような人生を送りたいのか、どのような人間になりたいのかを深く考える機会を得ます。

価値観の明示をテーマにしたセラピストとクライエントの具体的な会話例を示します。

価値観の明示のプロセス

価値観の明示(Values Clarification)は、クライエントが自分にとって何が本当に大切なのかを明確にし、その価値観に基づいた行動を計画・実行する手助けをします。これにより、クライエントは人生の方向性や目標を再確認し、自分が望む方向に進むための道筋を具体的に描くことができます。セラピストは、クライエントが自身の価値観を見つけ、それに基づいて行動するためのサポートを提供しながら、クライエントがより豊かで充実した人生を送れるように導きます。

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セッションの開始

セラピスト: 「今日は、あなたがどのような人生を送りたいのか、どのような人間になりたいのかについて考えていきたいと思います。これまで、色々な困難に直面してきましたが、その中でも大切にしてきたことや、これから大切にしていきたいことは何でしょうか?」

クライエント: 「正直なところ、最近は自分が何を大切にしているのか、わからなくなってしまいました。ただ、家族との関係は大切にしたいとは思っていますが…。」

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価値観の探索

セラピスト: 「それはとても大切なことですね。家族との関係を大切にしたいという思いは、今のあなたにとっても重要な価値の一つだと思います。それ以外に、例えば仕事や趣味、友人関係などで大切にしたい価値はありますか?」

クライエント: 「仕事では、以前は達成感や成功を求めていましたが、最近はそれが本当に自分の価値観に合っているのか疑問を感じています。今は、もっと心の安らぎや健康を大切にしたいと思うようになりました。」

セラピスト: 「心の安らぎや健康、それも非常に大切な価値ですね。あなたの生活において、それらの価値をどのように実現していくかを一緒に考えてみましょう。まず、心の安らぎを感じられるときや、健康を保つために意識していることは何かありますか?」

クライエント: 「心の安らぎを感じるのは、自然の中で過ごすときや、家族とゆっくり過ごすときです。健康については、最近はお酒を控えようと努力しています。」

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価値観の具体化

セラピスト: 「それは素晴らしいことです。心の安らぎや健康を大切にしている自分をもっと意識して、それに沿った行動を増やしていくことができれば、より充実した生活が送れるかもしれませんね。例えば、自然の中で過ごす時間を増やしたり、家族との時間をもっと大切にしたりすることが考えられます。どのような行動が、あなたの価値観に沿っていると感じますか?」

クライエント: 「そうですね、家族ともっと旅行に行くとか、週末には自然の中で過ごす時間を作ることができるかもしれません。また、健康のために定期的に運動を取り入れたいと思っています。」

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価値観に基づいた行動計画

セラピスト: 「とても良いアイデアですね。それらの行動は、あなたが大切にしている価値観に直接結びついています。次のステップとして、これらの行動を具体的な計画にしていきましょう。例えばうな旅行が家族との関係を深めるのに役立ちそうですか?また、どのような運動を日常に取り入れると良いと感じますか?」

クライエント: 「家族と一緒に行ける短いハイキングや、自然公園でのピクニックを考えています。運動については、朝の散歩やヨガを始めてみたいです。」

セラピスト: 「素晴らしいですね。それらの計画を実行することで、あなたの価値観に基づいた充実した生活が少しずつ実現していくでしょう。次回のセッションでは、これらの行動がどのように進んだか、また新たに気づいたことがあれば一緒に振り返りましょう。」

クライエント: 「分かりました、ぜひやってみます。」

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コミットメント行動(Committed Action)

コミットメント行動(Committed Action)は、ACTの重要なステップであり、クライエントが自分の価値観に基づいた行動を具体的に実行していく段階です。このステップでは、クライエントが決意を持って行動し続けることが求められ、困難な状況や感情が生じても、その行動をやめずに継続することを目指します。

コミットメント行動をテーマにしたセラピストとクライエントの具体的な会話例を示します。

コミットメント行動のプロセス

コミットメント行動(Committed Action)では、クライエントが自分の価値観に基づいて具体的な行動を計画・実行し、その行動を継続するためのサポートを行います。セラピストは、クライエントが行動を実行する中で直面する困難や障害を乗り越える手助けをし、価値観に基づいた生活を送ることができるように導きます。また、行動の振り返りや評価を通じて、クライエントが自己の成長を実感できるようにすることも重要です。

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セッションの開始

セラピスト: 「前回のセッションで、あなたが大切にしている価値観に基づいて、いくつかの行動計画を立てましたよね。例えば、家族との時間を大切にするために自然の中で過ごす時間を増やしたり、健康のために運動を取り入れることについて話しました。今回は、その計画をどのように実行しているか、またどのような結果が出ているかを振り返りましょう。」

クライエント: 「はい、実際に週末に家族と一緒にハイキングに行きました。とても楽しかったです。また、毎朝散歩を始めて、少しずつ続けています。ただ、忙しいときは忘れてしまうこともありました。」

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振り返りと評価

セラピスト: 「素晴らしいですね!まず、ハイキングや散歩ができたというのは、とても大きな一歩です。忙しいときに忘れてしまったというのは自然なことですから、無理をせずに、自分ができたことに焦点を当ててみましょう。これまでの取り組みを続けるために、何か工夫できることはありますか?」

クライエント: 「そうですね、朝の散歩を忘れないように、目覚まし時計を少し早めにセットしてみようかなと思います。また、家族と次の週末の予定を早めに決めておくことで、自然の中で過ごす時間を確保できるかもしれません。」

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コミットメントの確認

ラピスト: 「良いアイデアですね。具体的な計画を立てて、それにコミットすることが大切です。散歩や家族との時間を大切にするというあなたの価値観に沿った行動を続けるために、これらの工夫が役立ちそうですね。もし忙しさや他の障害が出てきても、価値観に基づいた行動を続けるためにどうすれば良いか、一緒に考えてみましょう。」

クライエント: 「そうですね、忙しくても、自分にとって大切なことを優先するように心がけたいです。もしうまくいかないことがあっても、次にどう改善するかを考えていきたいと思います。」

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行動の具体化と継続

セラピスト: 「その姿勢はとても良いですね。行動を続ける中で、うまくいかなかったことや、予期せぬ困難に直面することもあるかもしれませんが、そういった時こそ、あなたの価値観を再確認し、その価値に基づいた行動を続けることが大切です。これからも、家族との時間を大切にし、健康を意識した生活を続けていくために、どのような行動をさらに取り入れることができそうですか?」

クライエント: 「そうですね、家族と一緒に料理を作ったり、一緒に運動をする時間を増やすこともできそうです。また、ストレスを感じたときには、お酒に頼るのではなく、リラックスできる他の方法を見つけていきたいです。」

セラピスト: 「それはとても素晴らしい考えですね。これらの行動を実行していくことで、あなたが大切にしている価値観を日々の生活に取り入れていくことができます。それがあなたの目指す豊かな人生への一歩となるでしょう。次回のセッションでは、これらの行動がどのように進んでいるか、また新たな気づきや改善点があれば一緒に話しましょう。」

クライエント: 「はい、頑張ってみます。」

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評価と調整(Assessment and Adaptation)

評価と調整(Assessment and Adaptation)は、ACTのプロセスで、クライエントが取り組んできた行動や変化の進捗を評価し、必要に応じてアプローチを調整する段階です。このステップでは、セラピストがクライエントと一緒にこれまでの取り組みを振り返り、何がうまくいっているのか、何が改善の余地があるのかを明確にしていきます。

評価と調整をテーマにしたセラピストとクライエントの具体的な会話例を示します。

評価と調整のプロセス

評価と調整(Assessment and Adaptation)のステップでは、クライエントがこれまでの行動や取り組みを一緒に振り返り、何がうまくいっているか、何が課題であるかを明確にします。そして、セラピストはその結果に基づいて、クライエントがより効果的に目標達成に向かえるよう、必要な調整を行います。クライエントにとって最適なサポートを提供しながら、価値観に基づいた行動を継続できるように導くことが重要です。

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セッションの開始

セラピスト: 「今日は、これまでのセッションや取り組みについて振り返り、どのように感じているかをお聞きしたいと思います。また、今後の進め方についても話し合いながら、必要な調整を一緒に考えていきましょう。」

クライエント: 「そうですね、いろいろと取り組んできましたが、うまくいっていることもあれば、少し難しいと感じることもあります。」

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進捗の評価

セラピスト: 「具体的に、どのような点がうまくいっていると感じますか?」

クライエント: 「家族との時間を増やすことに成功していると感じます。毎週末に一緒に過ごす時間を確保できるようになり、少しずつですが、以前よりも関係が良くなっている気がします。」

セラピスト: 「それは素晴らしいですね!家族との時間が増えて、関係が改善しているというのは大きな成果です。では、逆に難しいと感じることは何でしょうか?」

クライエント: 「お酒やギャンブルの誘惑に対処するのがまだ難しいです。特にストレスが溜まると、つい手が伸びてしまいます。」

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課題の明確化と調整

セラピスト: 「ストレスが溜まると、どうしても誘惑に負けてしまいがちということですね。それについては、どのようなサポートや工夫があれば、もう少し楽に対処できると思いますか?」

クライエント: 「もう少しストレス管理の方法を増やしたり、誘惑を感じたときに使える具体的な対策があると良いかもしれません。」

セラピスト: 「なるほど。それでは、ストレスを感じたときに使えるリラクゼーション技法や、代替行動を一緒に考えてみましょう。また、お酒やギャンブルに頼らない時間の過ごし方を増やすことも一つの方法かもしれません。どう思いますか?」

クライエント: 「それは良いアイデアだと思います。たとえば、運動や趣味を取り入れてみるのもいいかもしれません。」

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行動計画の再構築

セラピスト: 「良いですね。運動や趣味はストレス解消にもなりますし、お酒やギャンブルからの脱却にもつながります。次回までに、まずは新しい趣味を一つ試してみて、その感想を聞かせてください。また、リラクゼーション技法もいくつかご紹介しますので、それを日々の生活に取り入れてみてください。」

クライエント: 「わかりました、やってみます。」

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次のステップとフォローアップ

セラピスト: 「これまでの取り組みが成功している部分を維持しながら、新しい対策も試してみましょう。そして、次回のセッションで、その効果や感じたことを一緒に振り返りましょう。もし何かうまくいかないことがあれば、また一緒に調整していきますね。」

クライエント: 「ありがとうございます。次回も頑張ってみます。」

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