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幼児期に愛着関係が築かれなかった、存在しなかった心の病気とは?

目次

反応性アタッチメント・愛着障害、脱抑制対人交流障害がまねく幼児期の症状と青年期や大人になってからの影響とは?

幼児期に養育者との愛着関係があったにもかかわらず、養育者が十分な愛着環境を提供できず、子どもが適切な愛着形成ができなかった場合に反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害(RAD)を発展させる場合があります。
一方、養育者が存在しなかった、または養育環境がないに等しい状況に置かれ、愛着関係が存在しなった場合に脱抑制対人交流障害(DSED)が発生することがあります。
また、養育者との愛着関係が大きく損なわれた場合には、RADとDSEDのどちらも発生する可能性があります。

これらの状況においては、幼児期に適切な愛着形成ができず、その後の心理的発達に深刻な影響を与える可能性があるため、早期の介入が必要とされますが、現状では支援や援助ができることはほとんどありません。

反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害(RAD)

反応性アタッチメント障害(RAD)または反応性愛着障害は、幼児期に不適切な養育体験に曝された子供たちが、愛着形成の過程で問題を抱える障害です。この障害は、幼児期の関係性が著しく不適切で、安定した愛着関係が形成されなかったために発生すると考えられています。

RADの概念は、初めて1940年代にボウルビー(Bowlby)によって提唱されました。ボウルビーは、子供たちが生存するために愛着関係を求める本能があることを強調し、母親などの主要なケアプロバイダーとの安定した愛着関係が形成されなかった場合に、幼児期に心理的な問題が発生する可能性があると指摘しました。

RADの症状には、社会的に引きこもりがちで、他人との関係を避ける、感情の希薄化、他人に対して冷たく、愛着を示さないなどが該当します。また、幼児期の虐待、ネグレクト、養子縁組などの不適切な養育体験が、この障害の発生に関連しています。児童養護施設にいたり、多数の養子縁組を経験した子供たちに、RADの症状がみられることが多いのです。特に養護施設で育った4歳半の幼児の15%がRADに該当する結果も示されています。

疫学的にも、養育施設で育った子どもたちや虐待を受けた子どもたちなど、不適切な養育体験を経験した子どもたちが、心理的な問題を抱えるリスクが高いとされています。これらの子どもたちが健全な成長を遂げるためには、専門的な支援や治療が必要であり、社会的な支援も必要です。

不適切な養育体験がある子どもたちの健康・発達状態を調査することが重要であり、社会的支援や心理的な治療の充実が求められます。また、不適切な養育体験を経験した子どもたちが健全な成長を遂げるためには、早期の支援が重要であることも疫学的な研究から示唆されています。

RADの主な臨床症状

反応性アタッチメント障害(RAD)は、主に幼児期に見られる、社会的な関係性に深刻な障害を引き起こす障害です。次に、RADの主な臨床症状をいくつか挙げます。

  • 愛着障害
    RADの子どもたちは、基本的に信頼できる大人にでも愛されることを拒否し、愛着を形成することが困難であるとされています。また、親しい大人や主要な介護者に対して、冷淡で無関心な反応を示すこともあります。
  • 社会的な相互作用の障害
    RADの子どもたちは、社交的な行動を示すことが困難であり、他の人との関係を確立することができません。また、感情的に自己中心的であるとされています。
  • 遊びの欠如
    RADの子どもたちは、遊びをすることが少なく、独り遊びも少なくなります。また、他の子どもたちと一緒に遊ぶことが困難であるとされています。
  • 言葉の遅れ
    RADの子どもたちは、言語発達の遅れを示すことがあります。
  • 食事の問題
    RADの子どもたちは、食事を拒否することがあります。
  • 過剰な警戒心
    RADの子どもたちは、常に環境を警戒しており、周囲の人々や物事に対して疑心暗鬼であることが分かります。

これらの臨床症状は、RADの子どもたちが健全な発達を遂げることを妨げ、重度の社会的・心理的障害を引き起こすことがあるため何回も繰り返し提唱しますが、適切な介入が必要であり早期の支援が重要であるとされています。

RADのICD-11の診断基準

ICD-11(国際疾病分類第11版)において、反応性アタッチメント障害(RAD)は「愛着障害」として分類されています。ICD-11の診断基準によると、RADの診断には、以下の2つの基準が必要です。

  1. 幼児期に、重大な養育の欠如または不適切な養育により、一般的に予想される対人関係の発達に悪影響を与える社交行動のパターンが形成されたことが明らかである。
  2. 養育者に対して反抗的な態度や無関心な態度を示すことがある。また、社交的行動の形成が妨げられることがある。
  • 社会的、感情的な関係における反応性の極端な欠如がある。
    • 反応性愛着障害の人は、社会的、感情的なつながりを築くことが困難であり、他人との関係に興味を持たず、極端に距離を置くことがあります。そのため、社会的なつながりが欠乏し、孤立しているように見えることがあります。
  • 警戒心、感情の制御の欠如、社会的接近の拒否、他人に対する不信感などの行動や感情の態度がある。
    • 反応性愛着障害の人は、警戒心が強く、他人との関係を築くことに対して強い拒否感を示すことがあり、感情の制御が不十分であり、感情を表現することが難しい場合があります。さらに、他人に対する不信感や攻撃的な態度を示すことがあります。

診断上重要な事実ですが、この障害は過去に不適切な養育環境に晒された個人に限定されるわけではありません。
反応性愛着障害の原因は、主に過去に不適切な養育環境に晒されたことによるとされていますが、必ずしもそのような環境で育った人に限定されるわけではありません。また、環境要因以外にも、遺伝的要因や神経生物学的な要因も関与しているとされています。

RADの経過と予後

反応性アタッチメント障害(RAD)の経過や予後は、早期の診断と治療の適切さに大きく影響されますので、一般的には、RADは幼児期に発症し、早期に適切な治療を行うことが望ましいとされています。

RADの典型的な経過は、養育の欠如や不適切な養育を受けた子どもが、社交的行動のパターンに問題を抱えることから始まり、年齢とともに悪化する傾向があります。幼児期には、親密な関係を形成することに困難を抱え、その後も同様の問題が持続する可能性があるということです。学齢期に入ると、RADの児童は自己認識や自己評価に問題まで抱えることがあり、思春期には問題行動を示し、同年代とも人間関係を持つことが困難になることがあります。

成人期においては、RADを持つ人は、社会的および職業的関係の形成に問題を抱えることがあり、長期にわたる不安やうつ病、人間関係性の問題、そして自己認識の問題が生じる可能性があります。

ただし、RADの予後については、治療によって、社交的行動のパターンを改善し、社交的スキルを習得することができるようになる場合がありますが、その一方で、治療の遅れや支援が不十分な場合は、問題が悪化する可能性があります。このように予後については個人差が大きくなります。

最近の研究によると、RADの児童は青年期に自己規制や感情調整の能力に問題を抱えることが示唆されていますが、青年期においても治療によって改善される可能性がありますので注意深く評価する必要があります。

RADの治療

認知行動療法(CBT)は、心理療法の一種であり、患者の思考(認知)や行動に焦点を当て、問題を解決する手法です。CBTは、感情や行動に影響を与える思考パターンを分析し、それらを変えることで問題解決を図ることを目的としていて、さまざまな心理疾患に有効なことが示されており、RADの治療にも適用されています。

心理動機的アプローチは、人の行動や思考を心理的な欲求や動機に基づいて分析する手法です。この手法では、個人の無意識的な欲求や動機に焦点を当て、問題の解決を図ります。心理動機的アプローチは、深層心理学的アプローチとも呼ばれ、主に精神分析学に基づいています。

これらの手法は、RADの治療において、感情や行動に関する問題に取り組む際に有効であるとされています。具体的には、患者の自己認識や自己受容感を高めること、過去のトラウマに対処すること、感情調整能力を改善することなどを目的としています。治療プロセスは、患者と治療者の共同作業によって進められます。治療者は、患者に対して肯定的な関係を築き、患者の自己効力感を高めることが重要です。

RADに対するCBTや心理動機的アプローチの具体的な手法として、次のようなものがあります。

認知行動療法(CBT)の手法
  • 認知再構成:患者の認知に焦点を当て、過剰反応や思考パターンを修正することで、感情や行動の問題を解決する。
  • 行動療法:患者の問題行動を変えることで、問題を解決する。例えば、社交不安症の患者に対しては、社交的な場面に少しずつ慣れるようにすることがあげられる。
心理動機的アプローチの手法
  • 自由連想:患者が無意識に持っている感情や思考を引き出すための手法。
  • 分析的心理療法:無意識的な心理的欲求や動機に焦点を当て、問題解決を図る。
  • 心理療法:過去のトラウマや問題に対処することで、患者の問題を解決する。

治療は、患者と治療者が密接に協力し、継続的な治療が必要であることが多くなります。治療の目的は、患者の自己認識や自己受容感を高め、適切な感情調整能力を習得することです。

脱抑制対人交流障害(DSED)

脱抑制対人交流障害(DSED)は、幼児期に過度な抑制や親からの情緒的な支援不足などの環境的ストレスが原因で、社交不安症や適応障害、抑うつ症状を引き起こす精神障害です。この概念は、日本の精神科医である大和田建樹が提唱し、2005年に発表されています。

RADと養育体験との類似性は、両者とも幼児期に不適切な養育環境が原因で、対人関係に問題が生じることにあります。RADでは、養育者との接触不足が原因で、愛着形成に障害が生じるため、社交性や共感性に問題が生じます。一方、脱抑制対人交流障害では、幼児期に親からの情緒的な支援不足が原因で、社交不安症や抑うつ症状が生じるとされています。

ICD-11では、DSEDは「関連障害」のカテゴリーに分類されており、「養育に起因する愛着に関する解離性障害(DSED)」という具体的な診断名が与えられています

DSEDとRADの違い


RADもDSEDも原因は、幼児期の不適切な養育環境にありますが、DSEDはBowlbyが提唱した反応性愛着障害とは異なる概念です。Bowlbyは、幼児期に適切な愛着関係が築かれなかった場合に、子どもが反応性愛着障害を発展させる可能性があると考えました。一方、DSEDは、愛着関係が存在しなかった場合に発生すると考えられており、養育者との愛着関係が損なわれた場合には、RADとDSEDの両方が発生する可能性があります。また、DSEDはICD-11で新たに追加された診断名であり、RADとは異なる診断とされています。

養育環境が相似していますが、愛着関係が築かれなかった場合と存在しなかった場合は異なる状況を指します。
例えば、愛着関係が築かれなかった場合とは、養育者が存在し愛着関係が取れたにもかかわらず、養育者が十分な愛着環境を提供できず、子どもが適切な愛着形成ができなかった場合を指します。このような場合、RADと診断されます。
一方、愛着関係が存在しなかった場合とは、養育者が養育環境に存在しなかった、もしくは養育環境がないに等しい状況に置かれた場合を指します。このような場合、DSEDと診断されます。

両者は症状に大きな違いがありますので、診断基準や治療アプローチも異なるため注意が必要となります。

脱抑制対人交流障害(DSED)の症状

脱抑制対人交流障害(脱抑制型ソーシャルエンゲージメント障害;DSED)は、幼児期早期に育者が養育環境に存在しなかった、もしくは養育環境がないに等しい状況に置かれた養育環境で育った子どもたちに見られる精神障害です。次は、DSEDの一般的な臨床症状です。

  • 陽気で社交的な行動
    DSEDの子どもたちは、見知らぬ人に対して陽気で社交的な態度をとります。身を寄せたり、なだめたりすることなく、見知らぬ人と遊びたがることがあります。
  • 偽りの欲求
    DSEDの子どもたちは、過剰な注意や愛情を求め、偽りの欲求を示すことがあります。見知らぬ人に対しても過剰な親しみを示すことがあります。
  • 無差別
    DSEDの子どもたちは、見知らぬ人や家族の友人、知人など、あらゆる人に対して陽気に接し、親密な関係を望みます。
  • 注意欠陥
    DSEDの子どもたちは、短い注意力、集中力の欠如、または学習障害の兆候を示すことがあります。

脱抑制対人交流障害(DSED)の診断

DSEDは、ICD-11の診断基準として、以下のように定義されています。

  1. 本人が不寛容、衝動的、抑制の欠如など、広範な対人関係上の問題を示す。
  2. 多くの場合、過剰な依存を示し、誰かにすがろうとする傾向がある。
  3. 新しい大人との関係をすばやく、簡単に形成するかもしれないが、その関係は不安定である。
  4. 社会的な制限や責任に対して反抗的で、しばしば問題を引き起こす。
  5. 行動は、思春期に向けてますます問題が増大する傾向がある。

ICD-11では、DSEDは「関連障害」のカテゴリーに分類されており、次のように分類されています。

養育に起因する愛着の関連障害であり、養育に起因する愛着に関する解離性障害(DSED)である。つまり、DSEDは「養育に起因する愛着に関する障害」の一種であり、「養育に起因する愛着に関する解離性障害(DSED)」という具体的な診断名が与えられています。

DSEDの経過や予後

DSEDの経過や予後に関する研究は限られており、確定的なことはまだ分かっていません。しかし、一般的には次のようなことが言われています。

DSEDは、早期に発生する可能性が高く、発症後も長期間にわたって持続する可能性があり、治療にも長期間を要する場合があります。養育環境が安定した場合や適切な治療を受けた場合、症状が改善することもありますが、重症なDSEDの場合は治療が難しく、持続的な問題を抱える可能性が高いとされています。

DSEDは、将来の対人関係に影響を与える可能性があります。DSEDの兆候を示した幼児は、成長するにつれて人間関係に苦手意識を持つ場合があり、大人になってからも対人関係において問題を抱えることがあります。

DSEDの治療

DSEDの治療は、主に早期介入と保護者の教育と支援に焦点を当てています。次に、DSEDの治療に用いられる一般的なアプローチをいくつか紹介します。

  • 応答性養育介入 (Responsive Parenting Intervention)
    保護者に子どもの信頼を獲得するための養育技術を教育することによって、DSEDの症状を軽減することを目的とした介入です。
  • 応答性養育トレーニング (Responsive Parenting Training)
    保護者の養育技術を向上させることによって、子どもの愛着形成に効果的な関係を築くことを目的としたトレーニングです。
  • 応答性養育セラピー (Responsive Parenting Therapy)
    保護者と子どもの双方に対して行われ、子どもの信頼を獲得し、愛着関係を築くためのコミュニケーション技術を教育するセラピーです。
  • 家族療法
    保護者全体を対象とし、家族のコミュニケーションパターンや養育スタイルを改善することによって、子どもの愛着形成に影響を与えることを目的とした治療法です。
  • 個別療法
    子ども自身に対して、自己認識や自己肯定感を高め、愛着形成に必要なスキルを身に付けるための療法です。

これらのアプローチは、DSEDの症状を軽減し、子どもの愛着形成に効果的な関係を築くことを目的としています。治療の効果は、個人差があるため、治療を始める前に専門家との相談が必要です。

最後に

RADとDSEDは、幼少期において症状や態度が反対性がありますが、青年期や大人になるにつれて類似性が見られることがあります。しかし、それぞれの障害の原因や診断基準は異なるため、注意が必要です。

例えば、RADは養育者との愛着関係の形成が困難であることが特徴であり、DSEDは愛着を形成できるが、他者との関係性において問題を抱えることが特徴です。幼少期においては、RADの子どもは愛着を形成できないため、DSEDのような社交的な行動を示さず、退行的な行動を示します。しかし、成長するにつれて、RADの子どもたちは社会性や対人関係において問題を抱えることが多くなるため、DSEDのような社交的な問題を抱えることがあります。

ただし、それぞれの障害には個人差があり、一概に幼少期と成長後の関連性を示すことは難しいとされています。

「愛着障害:トラウマを抱えた子供たちの治療戦略」ビバリー・ジェームズ

「愛着の障害:診断と治療のガイド」ジョナサン・ベイリンとダニエル・A・ヒューズ

「愛着介入のハンドブック」テリー・M・レヴィ、ジュード・キャシディ編集

J.E.B.マイヤーズとL.ベルリナーが編集した「児童虐待」

「精神障害の診断および統計マニュアル(DSM-5)」アメリカ精神医学会

世界保健機関による「死亡率と罹患率の統計のためのICD-11」

大和田建樹氏による書籍『虐待と愛着―発達障害と心的外傷後ストレス障害の理論と治療』(金剛出版、2009年)

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