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チック症とトゥレット症の理解の拡大を求む

目次

チック症やトゥレット症は、無意識で特殊な発声や運動をするため、他者からは冷たい視線を浴びてしまい、心の苦しさ、生きづらさを強く抱える病気です。

チック症群(TD/TS)の概念

チック症候群とは、本人の意識ではなく無意識の筋肉収縮によって引き起こされる神経障害の一種であり、突発的、急速、反復性、非律動作の運動または発声を伴うことがあります。このいずれかの症状の継続する一過性(期間が1年未満)に消失する「暫定的チック症」(単純性)と持続期間が慢性(1年以上持続する)の「持続性チック症」に分類され、チック症の症状は動作の種類と動作の持続時間によって4つのグループに分けられます。
チックは自己意志ではコントロールできない不随意運動と呼ばれていましたが、一時的にコントロールが可能であることから半随意運動との見方が一般的となりました。

動作の種類内容
音性チック咳払いが最も多く、音声や発声、汚言や卑猥な言葉などもある
運動チック癖にも見えるような動作から物を叩く、飛び上がるなど幅広い動作
動作の時間内容
単純性チック瞬間的に発生し、突然意味のない音声や小さな動作が起こる
複雑性チック周囲の状況に反応して起こる意味のありげな言葉や大きな動作
チックの4分類動作時間
チックの4分類内容
単純な音声チック咳払い・鼻鳴らし・奇声など横隔膜や咽頭筋の収縮
複雑な音声チック反響言語相手の言葉のオウム返し
反復言語自己の音声や単語の繰り返し
汚言症卑猥語や罵倒語、不適切な言葉
単純な運動チック瞬き・肩すくめ・首振り・顔しかめ四肢の屈伸、伸展
複雑な運動チック暴動作物を叩く、蹴る、飛び上がる
汚行性的や卑猥な動作
同響動作他者の動作を真似る

チックの症状

症状は発作的な無意識の動作や音声が起こり、チックは単純性と複雑性に分けられます。
具体的な単純性運動チックは、まばたき、首の動き、肩をすくめる、顔をしかめる、手を打つ、口をゆがめる・尖らせる、舌を突き出す、鼻をぴくぴくさせるなどです。単純性音性チックは、「アッ」「ンッ」「ンンン」など声が漏れる、つぶやく、咳払い・咳き込む、鼻や舌を鳴らす、叫びや単語を連発するなどがあります。

複雑性の運動チックは、強迫行動を含むことで地団太を踏む、スキップ、匂いを嗅ぐ、物を触る・叩く・蹴る、飛び上がるなどの他、性的や卑猥な動作、他者の動作を真似るなどです。また、複雑性の音性チックは、普通ならば人前での発言ははばかれるような汚い・不適切・性的な言葉(汚言症)を発したり、相手の言葉のオウム返しする(反響言語)、自分の音声や単語の繰り返し(反復言語)をします。

多くは4〜6歳前後にまばたきなどの単純性運動チックが始まり、咳払いなどの単純性音声チックが加わります。ただし、1年以上持続する慢性の持続性チックも成長が進むにつれ10~12歳を境に(95%)は自然寛解することが多いとしています。中には心理状態に影響され特定の周期で憎悪、寛解を繰り返し、11歳頃から複雑性の運動チックや発声チックが出現し難治化する場合があります。

チック症の診断

ICD-11(国際疾病分類第11版)では、チック症群のチック症(Tic disorder)は、神経発達障害の一つとして分類されます。以下は、ICD-11におけるチック症の診断基準の詳細です。

ICD-11の診断基準

持続的または間欠的なモーター・チック、音声・音響チック、またはその両方が存在すること。

  1. チック症状は、少なくとも1年以上続いていること。
  2. チック症状は、初めに18歳未満で発症したこと。
  3. チック症状は、神経障害、薬剤、薬物の使用、またはその他の医学的状態によるものではないこと。
  4. チック症状は、重度に身体的または社会的機能に影響を与えていること。
  5. その他のチック症を含む神経発達障害が存在しないこと。

ICD-11では、チック症群のチック症は、モーター・チック、音声・音響チック、またはその両方が存在する場合があります。また、チック症状は、1年以上継続している必要があり、18歳未満で初めて発症していることが必要です。診断にあたっては、神経障害、薬剤、薬物の使用、またはその他の医学的状態が原因ではないことを確認する必要があります。さらに、チック症状が重度に身体的または社会的機能に影響を与えていることが必要です。最後に、他のチック症を含む神経発達障害が存在しないことも確認する必要があります。

トゥレット症(TS)

トゥレット症は暫定的チック症(有病率5〜24%)から始まり14歳までに発症します。診断基準では18歳以前の発症で多種類の運動チックと1種類以上の音声チックの両方が1年以上にわたり継続、持続(3カ月以上連続してチックが見られない期間がないこと)している状態を示します。トゥレット症はチック症の中で最も重度であり、1%未満(少なくても0.5%)で男女比率は男性3:女性1で神経系の難病に認定されています。
運動チックのまばたきから頭や顔、そして手や足に広がり憎悪、寛解を繰り返し、汚言の出現は13歳以後となります。寛解期間は数週間から数年の場合があり、成人以降に就職や結婚など生活変化の影響がきっかけとなり再発することもあります。
トゥレット症との併発率はADHDが40%~50%、強迫症は10%~50%の他、学習障害、自閉スペクトラム症、不安障害、うつ病、睡眠障害などの併発を考えなくてはなりません。

トゥレット症の診断基準

ICD-11(国際疾病分類第11版)では、チック症群のトゥレット症(トゥレット症候群)は、神経発達障害の一つとして分類されます。以下は、ICD-11におけるトゥレット症の診断基準の詳細です。

ICD-11の診断基準

持続的または間欠的なモーター・チック、音声・音響チック、またはその両方が存在すること。

  1. トゥレット症状が存在すること(モーター・チックと音声・音響チックの両方が存在すること)。
  2. トゥレット症状は、少なくとも1年以上続いていること。
  3. トゥレット症状は、初めに18歳未満で発症したこと。
  4. トゥレット症状は、神経障害、薬剤、薬物の使用、またはその他の医学的状態によるものではないこと。
  5. トゥレット症状は、重度に身体的または社会的機能に影響を与えていること。
  6. その他のチック症を含む神経発達障害が存在しないこと。

ICD-11では、トゥレット症は、モーター・チック、音声・音響チックの両方が存在することが必要です。また、トゥレット症状は、1年以上継続している必要があり、18歳未満で初めて発症していることが必要です。診断にあたっては、神経障害、薬剤、薬物の使用、またはその他の医学的状態が原因ではないことを確認する必要があります。さらに、トゥレット症状が重度に身体的または社会的機能に影響を与えていることが必要です。最後に、他のチック症を含む神経発達障害が存在しないことも確認する必要があります。

大人のチック症の特性例

大人のチック症・トゥレット症の特性例
  • 奇声やひとり言がうるさく職場でいじめを受けて辞めた。
  • 初対面の人や取引先の人の前で、品のない乱暴な言葉が出ることを心配し外出をためらう。
  • 会議中や面接、試験など静かにする場所で唸り声や咳払いが出ないか心配になる。
  • 手足が勝手に動いたり、声が出てしまい周りの人を驚かしてしまう。
  • 一日に首や肩を急に動かす運動で肩が凝る程度ではなく痛みが伴う。
  • 食事中に手が震えて箸が折れてしまったり、茶碗や食器など物を落としやすい。
  • 足をくねらせるようなチックの動作が頻繁に起きてしまいまともに歩けない。
  • 自分の意志ではチックを止めにくいし、周りの人に障害だとわかってもらえない。時には誤解されたり悪意を持たれたりする。
  • 苦しいのに援助の求め方がわからない。
  • 癖と見分けがつけにくいため障害と認知されにくい。
  • 発達障害が社会の誤解と偏見から、周囲の理解や受容が困難である。
  • 慢性的にチックの悩みを抱えており、ストレス回避がうまくできなく症状も悪化するようだ。
  • 顔をしかめたり、にらみつける動作で相手に誤解を与えてしまう。
  • 相手の話を静かに聴かなければならない場面で症状が出てしまい、相手に誤解を与えている。
  • 歯磨きや洗顔中に手が思うように動かず口を切ったりする。普段も舌をかまないように、口の中に綿棒を入れている。
  • 急に顔や手足が強く動き物を壊してしまうだけでなく、自分の舌をかんだり怪我をしてしまう。
  • チックの症状が気になり迷惑になることを強く感じ、電車や飛行機に乗れない。
  • チックの症状で動いてしまいじっとしていられなく、理美容室に行けない。
  • 手や足で物を壊したり、人を叩いたりするのでバックに手を結んでいる
  • 接客中に顔をしかめてしまう動作が起きてしまいお客さんに怒られた。
  • ペンを持っても手が動き字が書けなくペンを折ってしまう。
  • パソコンに向かって作業をしたいが、手が突然激しく動きキーボードを壊してしまう。
  • 手足が急に動きハンドルやペダルから外れてしまうので自転車にも乗れない。
  • 全く意思はないのに通りがかりの相手を睨める顔になり、汚言を出してしまい殴られた。

チック症・トゥレット症の原因と薬物療法

トゥレット症の家系内に出現頻度が高いことから遺伝的要因が大きいとされています。また、抗ドパミン、セロトニン再取り込み阻害、クロニジン薬の有効性から中脳ドパミン系、脳幹アミン系のセロトニン系、α²ノルアドレナリン系の神経系関与が想定されています。
承認薬はありませんが、次のような薬剤の有効性があると知られていています。

定型抗精神病薬ハロペリドール、ピモジト
非定型抗精神病薬リスぺリドン、アリピプラゾール
強迫症が伴うオランザピン
ADHDが伴う
α²ノルアドレナリン受容体作動薬
(高血圧症)
ADHDが伴うクロニジン、グアンファンシン
選択的セロトニン再取り込み阻害薬強迫症が伴う
社交不安が伴う
フルボキサミンマレイン
ADHDが伴うアトモキセチン
セロトニン作動性抗不安薬うつや不安が
伴う
タンドスピロン
抗てんかん薬トピラマート、レベチラセタム
クロナゼパム
漢方薬抑肝散、大柴胡湯


ただし、薬物療法は承認薬がないためチック症状が中程度から重症であり、生きづらさがチック症なのか併発している障害なのかを見極めなければなりません。薬剤には副作用がありますので、薬物療法によって副作用の支障が大きくなることは避けたいものです。

チック症・トゥレット症の脳深部刺激療法と認知行動療法

外科治療:脳深部刺激療法(DBS)は手術によりパルス発生器の埋め込みをします。脳に適切な電気信号を継続的に送り込み、不随意運動の原因となっている異常な電気信号を阻害する治療法です。重症なチック症状が改善された報告も増えてきているようです。ただし、侵襲性の高さから慎重な検討が必要です。また、チックの重症度や継続期間、薬物療法や行動療法など十分な期間試しても効果がないなどの条件があります。術後は大幅な改善、中程度の改善、改善されないの結果があり、完治は望みが薄いようです。日本人のYGTSS症状評価の平均合計が42.7点から24.3点へ改善されているようです。
最新精神医学2013年1月P168特集:児童青年期精神障害への対応よりDBSの結果抜粋

薬物療法以外にはハビットリバーサル(行動療法CBIT):拮抗反応の暴露反応妨害法(抵抗反応訓練)、アウェアネストレーニング(気づき訓練)、セルフモニタリング(チック階層表作成)、リラクゼーショントレーニング(呼吸法及び漸進筋弛緩法)、マウスピースの治療などがあります。

ハビットリバーサル(CBIT)の簡素化したSTEP表記

STEP
機能分析

チックごとにチックを悪化させるような先行状況(どのような時にチックが起きているのかチックトリガーの分析)、チック出現後に悪化因子(出現後にさらに加速させる悪影響)させているものを特定し環境などの修正をします。先行状況の例としては、ディスクワークをしている時なのか、初対面の対人関係によるものなのか、食事をしている時なのか、静かにしなくてはならない会議のような状況なのかなどです。悪化因子は周りの知らない大勢多数の視線なのか、取引先や上司の一言なのか、のようなことです。
この環境に対する修正行動がとれることで、チックの維持要因や不安、ストレスなどの悪化要因を少しでも取り除きくことです。

STEP
アウェアネストレーニング

チックが無意識に出現している場合も、意識的に起こしている場合もあります。この気づきの違いはチックが起こる直前の身体の違和感や不快感などの内的感覚である前駆衝動のことです。ウズウズやムズムズなどのような何とも言えなく黙っていると狂いそうな感覚(例えば、蚊に刺されているのを黙ってみていて、刺された後のかゆみを掻かないで我慢している状況を瞬時に凝縮した感じ方)のことです。人によって感覚はそれぞれですが、前駆衝動がいつ起きているか自己で気づけないとコントロールできません。無意識のチックがあるならば援助者と前駆衝動やチック内容を共有し、チックがでたら合図をするなどしながら前駆衝動の気づきトレーニングします。

STEP
チック階層表

チックを主観的に見た感覚でチックを種類別に重症度(強さ)の順番階層表を作成します。
一つひとつに名前を付けてチックの操作、動作内容などの定義を挙げ、苦痛度を主観的に0点から100点などのように評価し、重症度の階層(チックの重い、または軽いの順番表)をつくります。拮抗反応のトレーニングは重い方から取り組む場合が多いのですが、軽い方から行い自信をつけながら徐々に重い方に移行するケースもあります。

STEP
拮抗反応の選択と形成

チックの前駆衝動がすべて意識されることを前提としますが、目立たないチックは無意識の状態でも構いません。次にトレーニングする拮抗反応をチック階層表から選択し、前駆衝動をブロックする対象のチックと身体的に両立しない、相容れない(チックと同時に競合する行動をすることで、今までの対象チックを行えない)拮抗反応の動作をトレーニングします。例えば、首振りチックの場合の拮抗反応は前駆衝動を感じたら、あごを胸にくつけるように下げて固定し、首の筋肉を緊張させて深呼吸をします。舌を出すようなチックの場合は、舌を前歯の裏側にくつけて(しっかりと舌固定させて)口を閉じたうえで深呼吸をします。このようにもとのチックよりも自然で、楽な行動を拮抗反応とします。
重要なことは、拮抗反応を最低1分間行う、または前駆衝動が消えるか、減少するまで維持させます。拮抗反応は以前よりも目立たない、できれば違和感が少なくなるような動作を考えなくてはなりません。

感覚現象・前駆衝動
自己の意志で動かせる筋肉が突如として意志とは関係なく不随意的に反復して動くものです。これには身体のむずむずするなどの違和感や圧迫感のような内的感覚(前駆衝動)が先行します。そしてチックを操作しチックをすることで、すっきりするという繰り返しの循環が前駆衝動に対してさらに補償能力を発達させていきます。例えば、首を前後に振るチックの場合、首の後ろの付け根辺りに違和感が出るのに対し、首を振ることで違和感を意識的に解消していきます。違和感は身体のあちこちに発生する場合があり、非常に煩わしいものです。チックを我慢するとストレスやフラストレーションが溜まり、頭の中が混乱しイライラしてチックを抑えるのに必死になり、それ以外のことに意識を向けることが難しくなります。しかし、不随意とされてきた前駆衝動の工夫で短時間であれば抑制できることも分ってきていて、半随意とも言われるようになってきています。この半随意に注目して(日本の症例はまだ少ない)前駆衝動の先行刺激に相容れない行動の拮抗反応と深呼吸を重ねた拮抗運動をすることで抑える方法も実践されてきています。 

標準精神医学第8版:尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院
成重竜一郎:多動性障害(注意欠如/多動性障害ADHD)・精神科治療学
金生由紀子、浅井逸郎:チックのための包括的行動介入セラピストガイド/丸善出版
次良丸睦子、五十嵐一枝:発達障害の臨床心理学/北大路書房
柴崎光世、橋本優花里:神経心理学/朝倉書店
村上宣寛:IQってなんだ・知能をめぐる神話と真実/日経BP社
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎・大野裕監修/医学書院

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