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うつ治療薬は効果が高いが長期間の投与が必須で寛解後の再発に注意

目次

薬物治療は抗うつ薬が効果的で、8週間後の臨床結果は最初の症状から50%以上の改善が67%、寛解(症状がなくなること)は30%ですが、再発予防には継続投与を考慮することが重要。薬物治療と併用するその他の治療とは?

うつ病の治療薬と発症から回復まで

抗うつ薬
薬物療法の基本は「抗うつ薬」となります。うつ病の原因とされるセロトニンやノルアドレナリンの伝達物質の調整する「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」が副作用も少なく最も多く使用されます。SSRIやSNRIを第一選択薬としますが、十分な効果のない場合は三環系抗うつ薬へと切り替えも考慮しますが、治療の必要のない受容体にも作用し、副作用として抗コリン・抗アドレナリンα₁・抗ヒスタミン作用が生じることがあります。
SSRIやSNRIは投与効果が現れるまで、2〜4週間はかかります。副作用は少ないのですが、この間に不安や不眠、腹部不調など出ることがあります。

うつ病薬特徴
三環系
第一世代
ノルアドレナリン、セロトニン受容体に作用するが、副作用を強く伴う
三環系
第2世代
副作用が少なく改良され、特に抗ヒスタミン作用が軽減されている
四環系
ノルアドレナリンだけに作用するので、副作用も少ないが効果も弱くなるとみる
SSRI
セロトニンの再取り込み阻害に特化していて、抗コリン、抗ヒスタミンの副作用がない
SNRI
セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込み阻害だが、抗コリン、抗ヒスタミンの副作用がない
ただし、ノルアドレナリンの濃度によって排尿障害が引き起こされることもある
NaSSAセロトニン、ノルアドレナリンの分泌量を直接増強する

抗不安薬
SSRIやSNRIには鎮静作用はありませんので、不安感や緊張が強い場合はベンゾジアゼピン系の抗不安薬の併用となります。うつ病には効果はありませんが、情動と関係する脳の海馬や偏桃体などの大脳辺縁系と視床下部に作用し、不安を減らし落ち着かせる作用があります。ただし、長期で使用すると依存や耐性の問題が出る場合もありますので、主治医の指示に従ってください。また、アルコールとの併用は、興奮や焦燥感などが現れることがありますので注意が必要となります。

睡眠薬
睡眠導入剤は抗不安薬と成分が類似していますが、寝付けない、夜中や早朝に目が覚めるなどを改善し睡眠を助ける作用があります。大きく分けると脳の機能を低下させるタイプと自然に眠気を強くする睡眠薬があります。睡眠障害が生じる場合は、主治医の指示に従って服用していれば安全性は高い薬です。

非定型抗精神病薬
脳内のドパミンやセロトニンに作用し陰性症状の改善が期待できるため、おもに統合失調症などの治療薬として使われていますが、うつ症状の十分な改善が見られないときなどに抗うつ薬の効果を高めるために使用されます。

薬物治療は、第一選択の抗うつ薬で必ず回復するわけではありませんが、第一選択の抗うつ薬の使用で8週間後の臨床結果は、最初の症状から50%以上改善していた方は67%、寛解(症状がなくなること)は30%であることが算出されています。また、十分に改善されない場合も第二の抗うつ薬の選択や増強療法として非定型抗精神病薬の調合で改善する可能性が高くなります。このことからもうつ病には薬剤の治療が大きな効果を上げていると言えます。

STEP
薬剤投与初期(急性期治療)

抗うつ薬は最小投与で開始し、副作用の有無を確認しながら漸増し、効果(反応)が出始める2週間〜4週間様子を見ます。投与初期から1週間以内にはセロトニン濃度の過剰によりセロトニン症候群が発生し、発熱や頻脈、頭痛、嘔吐、血圧上昇、下痢などの副作用が起きる場合があります。その後2週間目に生じるのは中枢神経系の刺激で賦活症候群(アクチベーション症候群)により不安や焦燥、不眠、パニック発作、衝動性などが起きる場合があります。この時期に副作用が生じた場合は、抗不安薬や睡眠薬、気分安定薬などを併用します。
※初期(急性期)は何よりも休養に重点を置き、必要があれば休職、休学などで、ストレス環境の負荷を少なくしていきます。

STEP
薬剤投与初期から中期(急性期治療2)

2週間〜4週間の投与で効果があれば、その時点の投与量を維持し8週間まで継続します。効果が出なかった場合は、最大投与量で4週間〜8週間〜12週間の十分な期間を維持します。効果を求めようとして、抗うつ剤の無用な併用は避けたいところです。また精神的に落ち着いているのであれば、抗不安薬や睡眠薬の併用も中止し、原則的には抗うつ薬一単剤で寛解を迎えます。

STEP
薬剤投与中期(回復期・継続治療)

寛解後4カ月間は再燃の危険性が高い時期であり、副作用の問題がなければ薬剤投与初期(急性期)と同量で寛解後6カ月間は継続します。
回復期は調子の良い悪いの一進一退が続きますが、ある程度調子が良いからと言って職場復帰などはまだ早いと判断してください。負荷の少ない昼間の活動量を増やし、状態を観察しながら少しずつ無理のない社会復帰を過ごしてください。
※薬剤治療と認知行動療法などの精神療法を並行することが、長期的な再発予防効果として高いことが立証されています。

STEP
薬剤投与後期(再発予防期・維持治療)

回復期が過ぎて症状が安定していても、たとえ社会の復帰ができていても、社会で活動するという事はストレスに晒されますので油断は禁物です。特にうつ病を繰り返す再発性うつ病の場合は、寛解後1年間から3年間は急性期と同量の抗うつ薬の継続することが再発予防の効果があると報告されています。
※自分の判断で抗うつ薬の中止や減量、飲み忘れは、めまいや不安、倦怠感、吐気、不眠、頭痛、焦燥などの中断症候群(離脱症候群)が生じてしまいます。そのため、増減、中止は主治医と相談して指示に従うことが大切です。

反応治療によって症状が改善(治療前のうつ症状が50%以下に低下すること)
寛解うつ症状が概ね消退した状態
回復寛解の状態が6カ月以上継続
再燃反応は得られたが寛解に至る前、または寛解はしたが回復前に悪化した状態
再発回復に至ったが、その後に悪化した状態
①薬剤投与初期➁薬剤投与初期〜中期③薬剤投与中期④薬剤投与後期
急性期治療急性期治療2回復期・継続治療再発予防期・維持治療
2週間〜4週間4週間〜8週間〜12週間寛解後6カ月間寛解後1年〜3年
反応寛解回復回復
再燃再燃再発再発
うつと治療の経過

その他の治療(電気けいれん、高照度光、磁気刺激療法)

修正型電気けいれん療法

重篤な状態や昏迷を伴っている、自殺の危険性が高いなど迅速な改善が必要な場合や、薬剤に反応しない、薬剤の副作用が強く現れる場合などに用いられます。
静脈麻酔薬と筋弛緩剤で無けいれんの通電を額を通して行います。週に2〜3回を3週間ぐらい続けます。迅速な改善に対する有効性はとても高く安全性も高いため普及しています。ただし、副作用について幅広い知識と理解が重要です。また、再発率は高いので寛解維持を保つために月1回程度の療法を行い続けると再発予防効果があることを知っておくことです。

経頭蓋磁気刺激療法

うつ状態が中等以上で薬剤療法の効果が認められない状態や副作用が強い場合に行われます。けいれん療法ほどの効果はありません
麻酔は不要で特殊な医療機器を頭に当て頭磁場を発生させ、生じた誘導電流で神経細胞を刺激する療法です。副作用が少ないのが長所ですが、大学病院や無保険診療などでしか扱いがなく、一回の治療に40分程度かかり週に5日を3週間以上継続します。

高照度光療法

非常に明るい光2500〜3000ルックスを早朝または夕方に顔面(目)へ1〜2時間照射します。季節型うつ病の冬季うつ病に適応となる治療法です。

認知行動療法を合わせた治療が大きな効果と再発予防につながる

認知行動療法はうつ病の中等症や重症の方にも改善の効果があり、再発もしにくいとされていています。薬物療法とも併せて行うことで治療効果が高くなることが研究データでも知られています。特に認知行動療法は長期間にわたっても再発予防に効果を示すことから維持治療に有効であることがわかっています。

慶應義塾大学大野裕先生資料

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル:高橋三郎、大野裕(監訳)/医学書院

標準精神医学第8版:尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院

内科医のためのうつ病診療第2版:野村総一郎/医学書院

うつ病の治療ポイント:平井孝男/創元社

うつの正しい理解と治療法:野村総一郎/創元社

うつ病治療ガイドライン 第2版:日本うつ病学会、気分障害の治療ガイドライン作成委員会/
医学書院

精神疾患の有病率に関する大規模疫学調査研究:川上憲人、他

厚労省 患者調査 https://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/07/03.html

妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル 公益財団法人日本産婦人科医会

http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/11/jaogmental_L.pdf

警察庁 自殺者数 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R04/R3jisatsunojoukyou.pdf

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